今回訪問した「陸前高田こども図書館 ちいさいおうち」は、震災により図書館、公民館をはじめ、公園などの遊び場さえも失ってしまった陸前高田の子どもたちに、安心できる場所の提供と本を通した健やかな人格形成を促進することを主な目的として、2011年11月に開館しました。
東日本大震災復興への継続的支援について
- 助成先
- 特定非営利活動法人うれし野こども図書室
- 助成事業
- 岩手県陸前高田市 こども図書館「ちいさいおうち」運営推進など
陸前高田市へ向かうため、JR一ノ関駅で下車しました。
一ノ関駅は「平泉」の世界遺産登録もあって活気に満ちており、観光客の姿も多く見られます。自然も豊かで、非常に美しく穏やかな地です。
ですが、そこから1時間少々車を走らせると、その景色は突如として目に飛び込んできます。
更地になってしまった地に積み上げられている瓦礫の山。
住宅地であったことさえ忘れてしまいそうに茂る緑の奥で、少しずつ進む宅地再建のためのかさ上げ作業。
道路脇によけられた鍋や食器の破片などの生活用品が唯一ここで人々の生活が営まれていたことを思い出させ、復興への願いと同時に、複雑なやるせなさも感じずにはいられませんでした。
おうちの中は木の良い香りが漂い、展示物などにも細かい部分までさまざまな工夫が凝らされ、およそ4,000冊もの本が子どもたちを迎えます。
この日は定例の「おはなしのじかん(読み聞かせの会)」が行われました。
「ちいさいおうち」で司書を務める吉田佳織さんが、情感たっぷりに絵本の世界を子どもたちに伝えます。こわいお話では静まり返って、楽しいお話では一緒に声を出しながら、絵本の世界に浸ります。
「ちいさいおうち」に慣れ親しんでくるにつれ、何気ない会話の中からポロッと、震災での辛い経験が子どもたちの口からこぼれることもあるそうです。無邪気に振る舞いながらも深く傷ついているその心に、自分にもっとしてあげられることがあれば、と感じることもあると吉田さんは言います。
ですが、吉田さんが子どもたちのためいつも気丈に、優しく、包み込むように、「ちいさいおうち」を照らす太陽のように暖かい方であることは、初対面でも伝わってきました。
「図書館という施設は、復興事業の中で見るとどうしても優先順位の高いものではないですから、再建にはこれから長い時間がかかると思います。私はそれまで、子どもたちを支えていきたいと思っています。この『ちいさいおうち』を支えてくださる方がいるから、私は子どもたちのために集中して毎日仕事ができるんです。」
吉田さんの一つひとつの言葉、子どもたちの笑顔、それらに触れるほどに、「ちいさいおうち」にはどれだけ大きな尊いもの、大切なものが詰まっているのかと、感銘を受けるばかりでした。できることならこのトレーラーハウスを丸ごと抱きしめたくなるような、そんなおうちです。