人気声優 石川界人さんの今と昔 ~デビュー前後での価値観の変化~
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- 特集
今回のテーマは、【声優 石川界人さんの今と昔 ~デビュー前後での価値観の変化~】についてです。
現在は人気声優としての地位を確立されているが、下積み時代もあったはず…
デビュー前と後の価値観の変化について、詳しくお聞きしたいと思います。
Profile
- 石川 界人
- 東京都出身。2012年に声優デビュー。第8回声優アワード新人男優賞を受賞し、第14回声優アワードでは助演男優賞を受賞。「ハイキュー!!」影山飛雄役、「僕のヒーローアカデミア」飯田天哉役、「マッシュル -MASHLE-」ランス・クラウン役など、話題の作品に数多く出演。また、ABEMA配信バラエティ番組MCなど、幅広いジャンルで活躍中。
デビュー前後の“仕事”に対する価値観
──早速ですが、ずばり、デビュー前後で仕事に対する価値観は変わりましたか?
石川さん:そうですね、まず「仕事」というものに対するイメージ自体が変わったと思います。
「夢を叶える、やりたいことをやる」という意識で声優業を目指した当初は、いただくお仕事を世間一般でいう仕事と捉えてなくて、仕事はあくまで「やらなければならないもの、義務感」のイメージが強かったんですよね。でも、どんな仕事でもやりたいことだけじゃなくてやらないといけないこと、やりたくないこと、できれば避けたいことや苦手なこともたくさんあるじゃないですか。
──確かに。この仕事は苦手だからやりません、なんて割り切れないことも多いですよね。
石川さん:そうなんですよね。僕は十数年活動していく中で、自分の携わる声優業も「仕事」、ビジネスなんだと理解しまして。とはいえ好きで選んだお仕事だから、「やりたくないけどやらなきゃいけないのが仕事」みたいな義務感だけにしたくない気持ちもあって。そこから「やりたくない、苦手だと思うものはどうやったら最大のクオリティを出せるか。そこに楽しみを見出すのが仕事なんだ」という方向に、仕事への価値観が変わっていきました。
──素敵ですね。「仕事」というものの捉え方や向き合い方は、いろいろな方に当てはまりそうです。
石川さん:仕事に対する価値観の変化というと、ほかにも事務所の移籍をきっかけに視野が広がった面もあると思っています。
──どんなことが変わったのでしょうか?
石川さん:デビュー当初からしばらくは「自分が稼ぐためにどう働こう?」と考えていたのですが、「事務所や組織のみんなに還元できるように働きたい」と考えるようになりました。
例えば農業や運送業があってレストランを開けるように、僕がお仕事をするうえでも事務所のサポートがあって、そのサポートを受けて僕が働いて、そのお金で事務所が回って、ということを移籍以降かなり意識するようになったんですよね。
──ご自身を含めた周囲の人たちにも目がいくように。
石川さん:ええ。今では、僕自身が長くこの仕事を続けるためにも「事務所や組織のみんなで稼ぐにはどうしたらいいか」の意識が必要なんだろうなと考えています。
デビュー前後の“普段の生活”に対する価値観
──続いて、普段の生活に対する価値観は変わりましたか?
石川さん:これは正直、めちゃくちゃ変わりました。大きなきっかけは29歳の、喉の手術をした時ですね。1カ月の休養期間をいただいたんですが、12〜3年間走り続けて、年末年始以外初めての長期休みだったんですよ。
自分を見つめる時間ができたというか、「自分のアイデンティティは多分、この業界にあるものだけじゃないんだな」と気づいたんですよね。声優 石川界人じゃないプライベートの自分も大事にしたいなと。それ以来ワークライフバランスを考えるようになりました。
今はありがたいことに忙しくさせていただいているので、すぐに実現するものではないですが、最終的にはプライベートの時間も大事にしながらお仕事の時間を楽しいものにしていく、というバランスをとっていきたいなと思っています。
──手術をきっかけに、今まで以上にON / OFFの切り替えを意識されるようになったと。
石川さん:本当にそうですね。きちんとON / OFFを切り替えないとダメなんだと痛感しました。ずっとONでいたからこそ、僕の場合は身体(ボディ)が壊れて手術をすることになってしまいましたし…
人によってはメンタルの方がやられて休養してしまうこともある。ON / OFFをつけられないと、一番先にくるのはメンタルだと思うんです。しかもメンタルは体に比べて、治るまでものすごく時間がかかるんですよね。
なのでいわゆるデジタルデトックスや、エゴサーチをしないのはOFFの時間として大切だと思います。ONの時にはマーケティングとしてやる、OFFの時は一切やらないとか。
──エゴサーチは意識的に切り替えないと、ON / OFF関係なくなってしまいますもんね…
石川さん:そうですね…今はエゴサーチがマーケティングとして当然になっていますが「見えてしまうもの」も多くなっていて、切り替えずに見てしまうと必要以上に自己顕示欲が満たされたり、必要以上に傷ついてしまう。なので意識的にON / OFFを切り替えて、体だけでなくメンタルもきちんと回復する期間、時間を設けて仕事をした方が長く利益を生んでいけるのかなと思います。
デビュー前後の“お金”に対する価値観
──最後に、お金に関しての価値観に変化はありましたか?
石川さん:これも変わりましたね。前にいた事務所の社長さんが、すごく丁寧にやってくれたおかげだと思うんですが。一般的な社会人に比べると、場合によってはかなりお金をいただける職業ではあるんですよね。だからこそ、新卒で社会人になる年齢まではほぼ固定のお給料にしてくれてたんです。「制限のあるお給料の中で、自分の生活をどれだけ成り立たせるか」ということですよね。
そしていざ新卒の年齢になったら、今まで働いて事務所が貯めてくれていた「固定のお給料」以上の分は段階を追って支払うようにしてくれました。そこから、「働いて得たお金は大事に使わないといけないんだ」という価値観が備わったと思います。
──すごい、そんなご経験が…!
石川さん:ただ、20代前半になって「えっこんなにもらえるの!?」と驚いたタイミングで金遣いが荒くなりましたね…(笑)高級なものを食べたり、興味のないハイブランドの鞄を買ったり。早く貯まることもありちょっと貯めてドーン!と使っていました。でもある時お給料が3分の1くらいにまで減った時があって、今までのお金の使い方が何も残らない「浪費」の開放だったと気づいたんです。なので今は基本的に必要のない出費は控えて、将来に備えるようにしています。
固定給ではなく働かなければお給料0の職業ですし、いつ0になるかもわからない。今たくさんお給料をもらえていたとしても、命の前借りかもしれない。生涯年収で考えると、もしかしたらそこまで高給取りではないかもしれない。そういう状況を考えると、備えておいた方がよいのかなと考えて、浪費と思われることは控えて正しい消費活動をするようにしています。
──培われた金銭感覚が活きているんですね。
石川さん:そう思います。当時もらえるだけもらっていたら、普通の生活を知らないまま分不相応な生活水準にまで上がって、戻れなくなってしまっていたんじゃないでしょうか。
──ちなみに将来への備えに関して伺いたいのですが、数年前から20代の間でも老後の資産問題、NISAやiDeCoといった資産形成についての関心がぐっと高まったと思います。石川さんはどう捉えていらっしゃいますか?
石川さん:正直に言うと、早い段階でやった方がよいとは思います。
──石川さんはNISAやiDeCoを利用した資産運用をされていますか?
石川さん:はい。基本的に上限まで使うようにしてますね。
一方で、「ややこしくて手を出しづらい」「敷居が高い」と感じる方はたくさんいらっしゃると思います。企業側も義務があるので説明をしないといけないですし、実際に口座を開設してみないと中の操作まではわからなかったり、自分の資産情報を他人に見せるわけにもいかないから、どうも取っつきにくく感じるんですよね。
もちろん、実際にはじめる時は小難しい注意事項の文面も頑張って読む必要があります。ただ、どんなことでもそうだと思うのですが、いざはじめてみたら想像していたほど難しくなかったり、もっと早くはじめておけばよかったと感じることは多いと思うんです。
お金に関することですし、リスクがあるのは事実なので、「やりたい」「やろう!」と思った時のために情報感度を高めておく、アンテナを伸ばしておくところからはじめてみるのがよいと思います。
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石川さんありがとうございました!
仕事、生活、お金それぞれへの価値観や変化のきっかけについて伺いましたが、いかがでしたか?
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