新NISAの成長投資枠とは?つみたて投資枠とのバランスや選び方のポイントは?
執筆者:マネーコンサルタント | 頼藤 太希
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【この記事を読んでわかること】
- 新NISAは投資で得られた利益を非課税にできる制度である。
- 「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの投資枠を使って投資ができる。
- 新NISAの商品を選ぶ際には「リスク許容度」と「コア・サテライト戦略」を考慮する。
- つみたて投資枠では、コア資産となる投資信託に投資するのが基本である。
- 成長投資枠では、つみたて投資枠と同じ投資信託・値上がり期待の投資信託・株式などに投資する方法がある。
新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の2つの投資枠を使って投資ができます。
また、つみたて投資枠と成長投資枠では、投資商品が異なります。そのため、「つみたて投資枠と成長投資枠、どちらを使った方が良い?」「つみたて投資枠は使っているけど、成長投資枠も使った方が良い?」などと、活用の仕方に迷ってしまう人もいるかもしれません。
今回は、新NISAの商品選びの際に考えておきたいこと・選び方のポイントを紹介します。
そもそも新NISAとはどんな制度?
新NISAは、投資で得られた利益にかかる税金が一生涯にわたって非課税になる制度です。
<新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠>
- ※ 資産引き出し=売却して現金化すること
(株)Money&You作成
新NISAのつみたて投資枠は、積立投資専用の投資枠です。年間120万円までの投資で得られた利益を非課税にできます。つみたて投資枠では、金融庁の一定の基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)に投資ができます。つみたて投資枠には、手数料が安く、コツコツと積立投資することで資産を堅実に増やすことが見込まれる商品が揃っています。
新NISAの成長投資枠は、積立投資だけでなく一括投資もできる投資枠です。年間240万円までの投資で得られた利益が非課税にできます。成長投資枠では、上場株式・ETF・REIT(不動産投資信託)・投資信託に投資が可能。つみたて投資枠では投資できない投資先や、つみたて投資枠の対象でない商品にも投資ができます。
つみたて投資枠と成長投資枠は、どちらか片方だけ使うこともできますし、両方を併用することもできます。ただ、新NISAで投資できる金額(生涯投資枠)は1人1,800万円までです。また、つみたて投資枠だけで1,800万円投資することはできますが、成長投資枠で投資できる金額は1,200万円までとなっています。したがって、新NISAの生涯投資枠を使い切りたいならば、つみたて投資枠でも最低600万円は投資する必要があります。
新NISAではどのように商品を選ぶ?
新NISAの商品を選ぶ際に押さえておきたいことに、「リスク許容度」と「コア・サテライト戦略」があります。
リスク許容度
リスク許容度とは、「自分がどのくらい損に耐えられるか」をはかる指標のようなものです。
リスク許容度は、収入が多いほど、資産が多いほど、年齢が若いほど、投資経験があるほど高いと言われます。しかし、いくら客観的に見てリスク許容度が高そうでも、当の本人が「リスクはとりたくない」と考えていれば、リスク許容度は低くなります。
リスク許容度は高いから良い、低いからだめというものでは全くありません。大事なことは、自分のリスク許容度に合った投資先、資産配分であることです。
コア・サテライト戦略
投資をする以上、誰しもなるべくお金を減らさずに増やしたいですよね。それを実現するための戦略に「コア・サテライト戦略」があります。コア・サテライト戦略は、自分の資産の7〜9割を長期安定成長の「コア資産」、残りの1〜3割を積極運用の「サテライト資産」に分けて運用する戦略です。
<新NISAのコア・サテライト戦略のイメージ>
(株)Money&You作成
新NISAでコア・サテライト戦略を実践する場合には、図のように
- コア資産:インデックスファンド・バランスファンド・ETF
- サテライト資産:日本株・米国株・アクティブファンド
といったように分けるとわかりやすいでしょう。
いずれもリスクがありますが、コア資産の商品はどれも複数の投資先に分散している分、リスクはサテライト資産の商品よりも控えめです。一方で、サテライト資産の商品は、コア資産の商品よりもリスクが高めですが、大きく増やせる可能性があります。コア資産で守りを固めつつ、サテライト資産で攻めることによって、資産を減少するリスクを抑えつつ増やす運用をめざす方法が「コア・サテライト戦略」のポイントです。
つみたて投資枠・成長投資枠でどんな商品に投資する?
以上を踏まえて、実際にどんな投資先を選ぶのが良いのか考えてみましょう。
なお、以下商品のデータは2024年10月17日時点のものです。
つみたて投資枠
これから資産運用を始めるのであれば、100%コア資産で投資しても問題ありません。
その際、優先的に活用したい枠は「つみたて投資枠」です。
新NISAのつみたて投資枠では、毎月10万円まで積立投資ができます。これを活用して、時間をかけて資産形成していきます。投資信託も、信託報酬の安い商品1〜2本に絞って
積立投資をすることが可能です。
リスク許容度が低い方は、1本で複数の資産に分散投資できるバランスファンドがおすすめです。「ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」や「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」は、いずれも資産の一部に、株よりもリスクの低い債券を含んでいます。同様の商品の中で手数料(信託報酬)が最安水準となっています。
- ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)
純資産総額:618.43億円
基準価額:17,542円
信託報酬(税込):年0.154%
年次リターン:11.61% ※2024年(年初来)
国内外の株式と債券に均等に投資する投資信託。株式と債券の比率が50%ずつで、国内と海外の比率も50%になっています。こちらの商品を保有するだけで、年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と同様の資産配分で投資ができます。
- eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
純資産総額:2,902.79億円
基準価額:16,166円
信託報酬(税込):年0.143%
年次リターン:11.35% ※2024年(年初来)
国内・先進国・新興国の株式と債券、国内外の不動産(リート)の8資産に均等に投資する投資信託です。新興国資産も投資対象となるため、価格変動リスクはやや高めです。
続いて、リスク許容度が高い方は、全世界株インデックスファンドが良いでしょう。
世界中の株式に分散投資しており、世界経済の成長に合わせてお金を増やす期待ができます。「オルカン」の愛称で知られている「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などがあります。
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新NISAの投資先「オルカン」だけで大丈夫?注意点・向いている人は?
- eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
純資産総額:3兆9,148.9億円
基準価額:23,833円
信託報酬(税込):年0.057%
年次リターン:25.17% ※2024年(年初来)
日本を含む世界の先進国23カ国・新興国24カ国の株式で構成された指標との連動をめざします。1本買うだけで、世界の株式市場の85%をカバー可能。年0.05775%というとても安い信託報酬で、世界中の株式に分散投資できます。
また、米国に投資する米国株インデックスファンドもあります。米国は世界経済の中心ですし、先進国でありながら高い成長力を保っています。米国株インデックスファンドを利用すれば、米国の成長の恩恵を生かして資産を増やす期待ができます。
- eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
純資産総額:4兆9,796.61億円
基準価額:28,625円
信託報酬(税込):年0.093%
年次リターン:30.04% ※2024年(年初来)
S&P500は米国市場に上場する銘柄の中から、主に時価総額の大きな主要500社の時価総額をもとに算出される株価指数です。米国株式市場の時価総額約80%をカバーしています。
こちらの商品を保有するだけで、広く米国に分散投資ができます。
成長投資枠
成長投資枠では、つみたて投資枠と同じ商品に投資することもできます。成長投資枠でも投資することで、最大年360万円まで非課税で投資ができます。「毎月30万円ずつ」一定額を投資することもできますし、「年初に240万円一括投資+毎月10万円ずつ積立投資」といった方法もできます。
また、成長投資枠では、つみたて投資枠では購入できない商品にも投資できます。たとえば、米国株価指数「NASDAQ100」「SOX(フィラデルフィア半導体株指数)」などに投資できる投資信託も選択が可能です。米国の株価指数「S&P500」とは違ったパフォーマンスを見せているため、こちらも資産を増やす期待ができます。
- ニッセイNASDAQ100インデックスファンド
純資産総額:1,869.53億円
基準価額:16,267円
信託報酬(税込):年0.203%
年次リターン:26.48% ※2024年(年初来)
- eMAXIS NASDAQ100インデックス
純資産総額:1,143.03億円
基準価額:20,452円
信託報酬(税込):年0.203%
年次リターン:26.28% ※2024年(年初来)
- ニッセイSOX指数インデックスファンド(米国半導体株)
純資産総額:368.56億円
基準価額:16,859円
信託報酬(税込):年0.181%
年次リターン:29.41% ※2024年(年初来)
また、成長投資枠では株式投資も可能なため、サテライト資産として株を選ぶのも一案です。資産全体の7割から9割をコア資産、残りの3割から1割をサテライト資産にする資産配分を守りながら、資産の一部に株を組み入れます。
株は、原則100株単位(単元株)での売買が基本ですが、今は株を1株(単元未満株)で購入できる仕組みもあります。これを利用すれば、投資資金が数万円・数十万円必要な銘柄でも数百円・数千円で1株購入できます。
1株の株主でも、配当金は1株分もらえますし、銘柄によっては1株の株主でも株主優待がもらえます。優待割引がある銘柄を購入して、品物が割引で購入できれば、生活費の節約ができますし、場合によっては投資した金額の元が取れることもあります。
新NISAは利益を出さなければメリットが得られない制度であるため、長期保有で堅実に値上がりが見込める銘柄を選びましょう。
過去3〜5期分・予想1〜2期分の売上高・営業利益をチェックして、ともに右肩上がりになっている銘柄ならば、安定して成長していると考えることができます。
また、株を保有していることでもらえる配当金の金額推移もチェックしましょう。1株あたりの配当金が前年より増えることを「増配」、減った状態を「減配」といいます。
配当金は、企業の最終的な儲けを表す「当期純利益」から分配されます。そして、業績が良ければ増額され、悪化すれば減額される傾向にあります。毎年増配を続ける連続増配株は、長い期間にわたって企業の業績が右肩上がりで成長している、稼ぐ力のある企業だと判断できます。
新NISAで購入できるキャッシュフロー資産
新NISAの資産はいつでも取り崩して使えるものの、資産の一部を売却するのには抵抗がある場合もあるかもしれません。売却タイミングによっては損をする可能性もありますし、「使わずにいればもっと増えるのに」と思うと使いづらいということもあるでしょう。そこで、資産の一部をキャッシュフローの得られる資産(以下キャッシュフロー資産)にして保有するのも一案です。
キャッシュフロー資産からは、定期的に配当金や分配金などの形でお金が受取れます。現役世代であれば、生活を豊かにするためにそれらのお金を使うこともできます。資産を取り崩すよりも心理的に使いやすいでしょう。もちろん、再投資に回すのも一案です。また、定年後もキャッシュフロー資産を持ち続けていれば、年金収入の上乗せとなる不労所得を得られます。
<新NISAで購入できるキャッシュフロー資産>
- ※ 金利・配当利回り・分配金利回り(税引き前)
(株)Money&You作成
新NISAで購入できるキャッシュフロー資産には、債券ファンド、債券ETF、個別REIT、REITファンド、REIT ETF、高配当株、高配当株ファンド、高配当株ETFがあります。
新NISAでお金を増やす投資先を選ぶにあたっては、自分のリスク許容度を踏まえて、
コア・サテライト戦略の考え方を生かし、手数料(信託報酬)の安い投資先を選ぶようにしましょう。
- ※ 本ページは2024年10月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
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