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利上げとは?株価や物価など私たちの家計への影響と生活防衛策

日本はこれまで低金利政策のもと、デフレは長引き、株価も物価も低迷を続けていました。デフレではけっして景気がいいとは言えないものの、暮らしには悪いことばかりではありません。低金利で住宅ローンは組みやすく、低価格の商品も充実していました。

しかし、2022年12月に日銀(日本銀行)が実質的な利上げを行いました。物価上昇を普段の買物で実感している人も多いのではないでしょうか。
今回は、利上げとは何か、そして利上げの影響と、暮らしを守る方法について考えてみます。

利上げとは?わかりやすく解説

金融機関でローンを組んでお金を借りると、利息を払わなくてはなりません。逆に、お金を預けると利息を受け取ることができます。この利息の割合のことを金利といいます。
たとえば金利が1%だとすると、100万円の元金に対して、利息が1万円になります。

日本では、金利は自由に決まる市場金利です。お金を借りる人が多くなれば金利は高くなり、少なくなれば低くなります。
とはいえ、金利が急激に上がったり下がったりすると経済全体が不安定になってしまいます。そこで、景気や物価の安定などを目的として、日本銀行が政策金利を設定しています。
一般的に、景気が良くなると利上げがなされ、景気が悪くなると利下げされます。

景気良くなる→収入増える→消費/投資増える→物価あがる→日銀利上げ→借入しにくい→市場のお金減る→経済落ち着く 景気わるくなる→収入減る→消費/投資減る→物価さがる→日銀利上げ→借入しやすい→市場のお金増える→経済回復する

筆者作成

景気がよくなることはいいことだと一般的に思われていますが、あまりにも急激によくなりすぎると、収入が増えていないのに物価が上がってしまうなどの悪い影響も出やすくなります。
そこで、景気がよくなるペースを抑えるために利上げすることもあります。

利上げとインフレの関係

景気が良くなると、収入が増えていろいろなモノ・サービスを買うようになります。買う人が多くなればモノ・サービスの値段があがって物価の上昇になりますが、物価がどんどんあがり続けるとインフレが進みすぎてしまいます。

そこで日銀が政策金利を上げると、金利全体が上がります。金利が上がると、お金は消費に使うより、金融機関に預けたり、資産運用したりするほうが得なのでお金はストックされるようになり、お金の流れが止まります。
ここまでくると、買物をする人が減って物価の高騰は止まり、経済が落ち着いてきます。

逆に景気が悪くなると、収入は減りモノ・サービスはあまり買わなくなります。買う人が少なくなればモノ・サービスの値段は下がり、デフレになります。
そこで日銀が政策金利を下げ金利全体が下がると、お金を借りやすくなります。住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなどの利用のハードルが下がります。

ローンを組んで消費に回すことで、市場に出回るお金が増えます。そうすることで、経済活動が活発になり、景気が上向いてきます。
とはいえ、日銀はマイナス金利政策を継続してきたものの、デフレを脱却するまでには至っていないのが現状です。

利上げをするとなぜインフレ抑制になるの?

アメリカでは、急激なインフレに対応するために大幅な利上げがなされました。
利上げがされて金利が上がると、個人だけではなく企業も借入れがしにくくなります。すると、企業は事業拡大や継続のための資金調達が減り、事業の縮小、雇用の減少につながります。

雇用が減り、モノ・サービスも売れなくなると、賃金は増えません。モノ・サービスの値段が低く抑えられ、インフレは抑制されるというわけです。

今の日本経済は、収入は増えないのに物価が上がっている状態です。物価高の原因は買う人が多いためというより、コロナ禍やロシア情勢などの影響が大きいと言えるでしょう。
利上げによって物価の抑制につながるかもしれませんが、賃金も上がらないままでは厳しさは変わらないのではないでしょうか。

利上げすると私たちの生活にどういう影響がある?

実際に利上げになると、暮らしへの具体的な影響にはどのようなものがあるでしょうか。

利上げと株価

利上げがなされると企業の借入れ利息が増えるので、利益が少なくなります。さらに新規の借り入れを控えるので事業の縮小につながり、株価は全体的に下落傾向になります。
ただし、借金が少ない企業や、今後の事業拡大が期待される企業はその限りではないでしょう。

利上げと物価

利上げされると企業の業績が落ち、賃金は上がらなくなります。するとモノ・サービスは買い控えるようになりますので物価は下がっていきます。とはいえ、利上げから物価の下落まではある程度のタイムラグがあります。

利上げと住宅ローン

利上げは住宅ローンの金利にも影響があります。新規でローンを組む場合だけではなく、すでに変動金利で契約している人は、今後の利息の支払いが増え、負担が大きくなることも考えられます。

利上げと円安・円高(為替)

為替は、国内金利と外国金利との金利差が影響します。アメリカは日本よりも金利水準が高いので、日銀が利上げをして日米の金利差が縮小すれば円高になります。円高になると、輸出産業には不利になります。

節約だけでは家計が苦しい!どうすればいい?

経済は、インフレとデフレを繰り返しつつ成長します。生活を守るには、経済がどのフェーズにあるかを見定めることも大切です。
デフレ経済下では、節約して支出を減らすことでなんとか頑張れたかもしれませんが、これからは利上げの影響を受けざるを得ない状況です。新しい生活防衛策を考えるタイミングではないでしょうか。

節約して支出を減らすのは限界があります。住宅ローンの借換えや節税、収入を増やす方向にも目を向けましょう。
住宅ローンの借り換えでメリットがあるのは、以前はローン残高が1000万円以上などの目安が言われていましたが決して一概には言えません。借り換えシミュレーションなどを利用して、まずは試算をお勧めします。

節税効果のある資産運用は、難しい専門知識は必ずしも必要ではありません。一般NISA、つみたてNISA、2024年から始める新しいNISA、iDeCoなど、節税しつつお金を増やせる制度からチャレンジしてみましょう。
収入を増やすには副業を始めるだけではなく、資産運用も効果的です。
また外貨預金など、日本円以外の資産を保有しておくことも、インフレによるリスク分散になります。

リスクと上手に付き合いながら、利上げに強い家計を目指してください。

タケイ啓子

ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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