子どもの教育費は進路によって4倍違う!? 親が知っておくべき教育費の内訳
執筆者:マネーコンサルタント|頼藤 太希
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子どもの成長を楽しみにしている親は多いでしょう。でも、それと同時に気になるのは教育費のこと。子どもがどのような進路をたどるかによって、子どもの教育費は大きく変わります。1人育てるのに20年もの時間が必要で、その間さまざまなお金がかかるのですから、教育費のことを知っておくのは大切です。
今回は、さまざまなデータをもとに、子どもの教育費の内訳に迫ります。
教育費は進路によって4倍違う
教育費と聞いてまず思いつくのは、子どもが通う学校のことでしょう。私立のほうが高いイメージはあると思いますが、実際どのくらい違うでしょうか。次の表は、幼稚園から大学までにかかる教育費の平均額をまとめたものです。
幼稚園から大学までにかかる教育費の平均額
文部科学省「子供の学習費調査」「私立大学等入学者に係る学生納付金等調査結果について」(2021年)、全国大学生協連「学生生活実態調査」(2023年)より
(株)Money&You作成
表は、幼稚園から高校までが公立か私立か、大学が国立か私立の文系・理系かでかかる教育費の平均額をまとめています。また、大学が私立理系で、子どもが下宿した場合の費用合計も記しています。
教育費がもっとも安いのは、幼稚園から大学まですべて公立に通った場合で約820万円。それに対して、教育費がもっとも高くなるのは、幼稚園から高校まですべて私立、大学も私立理系で下宿した場合で約3,290万円です。教育費は、子どもの進路によって、単純計算で4倍もの差があります。
公立と私立の金額差がもっとも大きいのは小学校で、実に800万円近く違います。ただ、私立の小学校に通う子どもの割合はおよそ1.3%(文部科学省「令和4年度学校基本調査」より計算)ですので、この800万円についてはかからない方がほとんどでしょう。しかしそれでも、その他の進路を見てみると、トータルで1,000万円かからないケースは少数派。教育費は何かとかかることがわかります。
文部科学省のデータにない「中学受験費用」
文部科学省「子供の学習費調査」(2021年)には、子どもが幼稚園から高校まですべて公立だと577万円、すべて私立だと1,840万円などと、かかる費用が記載されています。しかしこのデータには、中学受験の費用が含まれていません。
首都圏を中心に、私立中学に通わせる家庭が増えています。東京都教育委員会「令和4年度公立学校統計調査報告書」によると、2022年の東京都の公立小学校の卒業生のうち、都内の私立中学に進学した生徒の割合は19.4%。前年から0.7ポイント増えました。
また、先に紹介した「令和4年度学校基本調査」でも、公立中学に通う生徒は前年より約2.5万人減っているのに対して、私立中学に通う生徒は前年より約1000人増えています。それだけ、私立中学を選ぶ家庭が増えているというわけです。
中学受験をする場合、子どもは塾に通うのが一般的です。大手塾の資料をもとに試算すると、中学受験をするための塾代は、入会金・教材費・テスト代なども含めるとトータルでおよそ250万円にもなります。
中学受験をするための塾代の目安
(株)Money&You作成
表にはありませんが、最近は、小学3年生から塾に通うのが増えてきています。また、大手塾に通いながら、個別指導塾や家庭教師も利用するケースもあるので、250万円で済まないことが多いかもしれません。
また、中学受験にかかる費用も忘れてはいけません。私立中学校の受験料は1校あたりおよそ3万円。また、いわゆるすべり止めに合格しても、本命校の合格発表まで入学手続きを待ってもらう必要があります。
このとき、「延納金制度」がある学校の場合は、平均5万円程度を支払うことで、入学手続きを待ってもらうことができます。しかし、延納金制度のない学校の場合は、本命校が不合格だったときに備えて入学手続きをする必要があります。
つまり、通常の入学金20万〜30万円を支払わなければならないのです。もしも本命校に合格したら、結果としては「払い損」ですが、本命校に合格するかはわかりませんので、必要なお金です。これらを合わせると、中学受験には300万円程度かかりそうです。
教育費のピークは大学進学
教育費のピークは「大学進学」です。中学・高校と公立に通っても、大学は私立というケースは結構あるでしょう。大学の費用の目安は、次のとおりです。
大学の費用の目安
文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について」(2021年度)より
(株)Money&You作成
大学の学費は、国立でも4年間で約243万円、私立では文系で約408万円、理系で約551万円となっています。つい金額の大きな私立理系に目が行きがちですが、国立であってもそれなりに高額です。
大学の費用は、半年ごとにまとまった金額を納付する必要があります。したがって、やはり入学前までに300万〜500万円を貯めなくてはなりません。
さらに、大学には下宿して通う人もいるでしょう。全国大学生協連「学生生活実態調査」(2023年)によると、毎月の下宿生の支出は12万3,630円となっています。単純にこれだけの金額が4年間かかったとすると、総額は600万円ほどになる、というわけです。
教育費は住宅の購入費・老後の生活費とならんで「人生の三大費用」といわれるだけあって、たくさんかかることがお分かりいただけたでしょう。もちろん、1,000万円以上の費用が一気にかかるわけではありません。どう準備するか、早いうちから計画を立てておきましょう。
【今回のまとめ】
- 教育費は公立か私立かによって、約820万円〜約3,290万円と、4倍近い違いがある
- 中学受験費用・下宿費用など、学校以外でかかる費用もある
- 教育費の山場は大学進学。大学入学前までに300万〜500万円貯めておきたい