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新NISAの投資先「オルカン」だけで大丈夫?注意点・向いている人は?

【この記事を読んでわかること】

  • オルカンは全世界株式に低コストで投資できる投資信託として人気
  • 全世界株式に投資するとはいえ、米国の割合が6割と高い点には注意
  • 全ての人にとってオルカンが最適ではない。リスク許容度に合わせて選ぶのが正解

新NISAで悩みがちな商品選び。新NISAの運用益非課税のメリットは利益が得られなければ意味がなく、利益が多いほど恩恵が大きくなります。そして、利益がどうなるかは商品次第なのですから、よい商品を選びたいですよね。

新NISAの投資先として圧倒的な人気を集めているのが、三菱UFJアセットマネジメントが運用する投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(以下オルカン)です。
ネット上では「オルカン1本に投資しておけば大丈夫」という意見をよく目にしますが、全ての人にとってオルカンが最適なのでしょうか。
今回は、オルカンの投資先、リスクや注意点、オルカンが向いている人を解説します。

「オルカン」って言葉よく聞くけど何?

オルカンは、日本を含む全世界の株式市場の動きに連動する投資成果を目指して運用される、インデックス型の投資信託です。具体的には、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」(MSCI ACWI)という株価指数との連動を目指します。

MSCI ACWIは、日本を含む世界の先進国23カ国・新興国24カ国、約3,000もの株式で構成された指数で、世界の株式市場の約85%をカバーしています。つまり、オルカンを買うだけで、世界の株式市場に幅広く分散投資が手軽にできるのです。

もともとオルカンは投資家に人気で、投資家が選ぶ投資信託のランキング「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year」でも2019年、2020年、2021年、2022年、2023年と5連覇を達成。新NISAのスタートでオルカンの人気に拍車がかかっています。2024年1月9日には1日の資金流入額が1,000億円を突破したと話題に。また、日本経済新聞の記事によると、オルカンへの資金流入額は2024年1月で3,428億円、2月で2,285億円と、他ファンドを圧倒しています。

オルカンが人気の理由は、保有中にかかる信託報酬が安いからです。
オルカンの信託報酬は年0.5775%となっています。本稿執筆時点(2024年4月2日)で新NISAのつみたて投資枠で投資できる20本の全世界株式インデックスファンドのなかでも低水準となっています。

オルカンをはじめとするeMAXIS Slimシリーズは業界最低水準の運用コストを目指してたびたび信託報酬を引下げているファンドです。
また、オルカンには純資産総額が増えると投資家が実質的に負担する信託報酬率が少しずつ下がる「受益者還元型信託報酬」の仕組みも用意されています。

実際、オルカンの純資産総額は約3.1兆円(2024年5月1日時点)と他を圧倒しています。2023年12月末のオルカンの純資産総額は約1.8兆円でしたので、わずか3カ月ほどで純資産総額が1兆円以上増えていることに。好調な市場を背景に、オルカンが人気を集めている様子がわかります。

オルカンだけで大丈夫?

では、「オルカン1本に投資しておけば大丈夫」なのでしょうか。
結論から言うと、全世界株式に投資したいのであれば、オルカンに投資する判断は合理的かつ経済的です。その理由は、次のとおりです。

信託報酬が低水準

同様の投資先に投資する商品は、どれも同様の値動きをするので、運用成果は大差ありません。であれば、投資家の手元に残るお金の違いは手数料が安いかどうかです。より低コストである投資信託の方が最終的な利益が大きくなる可能性が高いです。

純資産総額が多い

純資産総額とは、投資信託が組み入れている株式や債券などの資産の時価総額のこと。投資信託の規模を表します。純資産総額が少ないと分散投資がしにくくなる、繰上償還(途中で運用が終了すること)が起こる可能性があるなどの問題があります。
純資産総額は最低でも50億円以上あるのが望ましいのですが、オルカンは2.9兆円なので、この点でも問題はないでしょう。
純資産総額が増えると投資家が実質的に負担する信託報酬率が少しずつ下がる「受益者還元型信託報酬」も投資家にとって嬉しい仕組みです。

世界経済は今後も成長する

IMF「世界経済見通し」(2024年4月)によると、世界経済は今後も毎年3〜4%ずつ成長していくと見られています。

世界の人口は増えています。2024年時点で世界の人口は80億人を突破。「世界人口推計2022年版」によれば、2058年には100億人に達すると推計されています。人口が増えれば消費も増え、それに合わせてモノやサービスの生産も増えます。経済が拡大していれば、当然企業収益も増えていることになります。そのため、10年・20年・30年…といった長期のスパンでは株価が上昇する可能性は非常に高いといえます。
オルカンに投資すれば、今後もこのような世界全体の経済成長の力を生かしてお金を増やす期待ができます。

投資のリターンは経済成長率より大きい

世界全体が経済成長していくならば、世界全体に投資をしていたほうがよりお金が増やせると考えられます。フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏は著書「21世紀の資本」の中で「r>g」という不等式を掲げています。これは、投資のリターン(r)が経済成長率(g)より大きくなることを示したものです。つまり、世界に分散投資するだけで3〜4%を超えるリターンが得られる可能性は高いというわけです。

ただし、長期的に増えるといっても、投資に絶対はありません。お金が減ってしまう、元本割れは防ぎたいものです。
しかし、これも対策がある程度可能であり、元本割れを防ぎつつ堅実にお金を増やすなら、「15年以上」の長期投資が一つの目安。「ウォール街のランダム・ウォーカー」(バートン・マルキール著|日本経済新聞出版)によれば、1950年から2020年のデータで、分散投資された商品例として米国株価指数「S&P500」に投資を行った場合、15年以上投資すれば、どの期間の15年でも元本割れしないという分析結果を紹介しています。

オルカンの注意点は?

しかし、オルカンにも注意点はあります。それは一見全世界に分散投資しているように見えて、米国経済の下落のリスクが高いことです。

<オルカンが投資する国・地域(2023年9月末時点)>

先進国:89.3%、新興国:10.7% /先進国 アメリカ:62.3%、日本:5.5%、イギリス:3.7%、フランス:2.9%、カナダ:2.9%、その他:12.0% / 新興国 中国:3.2%、インド:1.7%、台湾:1.6%

オルカンの目論見書をもとに(株)Money&You作成

オルカンは確かに23の先進国・地域と24の新興国・地域に分散投資をしているのですが、そのうち先進国が約9割、米国だけで約6割を占めています。日本の国別割合は「2位」ではあるもののわずかに5.5%、その他の国の割合はもっと少なくなっています。

米国が世界の覇権を握っているわけですから、米国が転べば、全世界も転ぶ状況ではあるのですが、米国株に偏っている実態は知っておくべきでしょう。

また、オルカンの組入通貨比率(投資対象をどの通貨で購入しているか)の割合も米ドルが63.0%でトップ。ユーロが7.8%、日本円が5.8%と続きますが、こちらも米ドルに偏っていることがわかります。つまり、為替リスクがあることを示していますが、今後円高の局面を迎えた場合には、投資信託が下落するリスクがあることは押さえておきましょう。

ところで、オルカンだけでなく米国株式のみに投資する「全米株」「S&P500」のインデックスファンドとオルカンを組み合わせている人もいます。その場合、米国への投資比率がさらに高まってしまうため、米国株価下落リスクが生じると、資産を大きく減らす可能性が高い点には注意です。

どんな人がオルカンに投資するのが向いているのか

オルカンは、全世界株式に投資するのにはおすすめできる商品ですが、すべての人に適した商品ではありません。なぜなら、人によりリスク許容度が異なるからです。

リスク許容度とは「自分が損にどのくらい耐えられるか」の度合いです。リスク許容度は、収入・資産・年齢・投資経験などによって変わります。また、いくら客観的に見て「リスク許容度が高い」と思われる人でも、リスクに対して慎重な考え方をしている人は、リスク許容度が低くなります。

リスク許容度が高い人は、リスクの高い(値動きの大きい)商品を買っても耐えられますが、リスク許容度が低い人は、値動きの大きさに耐えられなかったり、慌てて売って損失を被ったりする可能性があります。

リスク許容度は高ければいい、低ければ悪いということはありません。大切なのは、自分のリスク許容度にあった商品を選ぶということです。

投資信託のリスクとリターンは、投資先の国・資産により異なります。一般的には

  • 国内→先進国→新興国
  • 債券→不動産→株式

の順に、リスク・リターンが高くなります。

オルカンの投資対象は世界中のさまざまな国の株式ですから、リスクは比較的高めです。
リスク許容度が低いのであれば、株式だけでなく債券にも投資するバランス型の投資信託のほうが値動きは小さいので、適しているでしょう。国内・外国の株と債券にそれぞれ25%ずつ投資する「4資産均等型」、国内・先進国・新興国の株と債券、国内・海外の不動産にそれぞれ12.5%ずつ投資する「8資産型」などが候補になります。

反対に、オルカンよりも積極的にリスクを取りたいのであれば、米国の「S&P500」「NASDAQ100」「SOX(フィラデルフィア半導体株指数)」などの株価指数に連動を目指す米国株インデックスファンドが投資候補です。

また、新NISAの成長投資枠では個別株に投資もできます。日本株も1株から投資可能な時代です。オルカンを活用せず、日本株や米国株など個別株に自身で投資をして、積極的にリターンを狙う戦略もありでしょう。

オルカンは万人に適した商品ではありません。自分のリスク許容度や好みに合わせて、投資先を選ぶようにしましょう。

  • 本ページは2024年5月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。

お申込みに際しては、以下の留意点を必ずご確認ください。

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頼藤 太希(よりふじ・たいき)

マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)、『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など書籍90冊、著書累計150万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X→@yorifujitaiki

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