2022年法令改正でiDeCoはどう変わる?
執筆者:マネーコンサルタント|頼藤 太希
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自分で老後の年金を作るのに役立つiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)。老後にかかるお金がきちんと用意できるか不安だからと、iDeCoをスタートする方が増えています。そんなiDeCoの制度が2022年に改正され、利用できる人や期間が拡大する予定。
今回は、iDeCoの主な改正のポイントと、改正にあたっての注意点を合わせてご紹介します。
iDeCoは年金の「上乗せ」を自分で行う制度
国が管理・運営している公的年金には、20歳から60歳までのすべての人が加入する国民年金と、会社員や公務員が国民年金に加えて加入する厚生年金があります。どちらも年金保険料を納めることで、老後に年金を受け取れます。
しかし、老後にもらえる年金額の月額平均は国民年金で約5.6万円、厚生年金(国民年金含む)でも約14.4万円(厚生労働省「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)です。これだけだと、国民年金だけ(個人事業主・フリーランスなど)の方はまず足りないですし、厚生年金ももらえる方でも心許ないですよね。
こうした状況の中で、注目されているのがiDeCoです。
iDeCoは、公的年金で不足する年金の上乗せ部分を自分で作れる制度の1つ。自分で毎月一定の掛金を支払って定期預金・投資信託で運用して増やし、60歳以降に受け取ります。
大きなメリットは、掛金を出すとき・運用しているとき・年金を受け取るときの3つのタイミングで節税ができることです。
- 掛金を出すとき
掛金が全額所得控除できるため、毎年の所得税や住民税の負担が減る - 運用しているとき
運用益にかかる税金(通常20.315%)が非課税になる - 年金を受け取る
一時金で受け取る場合「退職所得控除」、年金で受け取る場合「公的年金等控除」を使うことで、税金の負担が軽くなる
iDeCoは節税しながら自分の年金が用意できるとあって、注目されています。特に、2017年に現役世代のほとんどがiDeCoを利用できるようになってからは利用者が急増。2016年3月末時点には約25.8万人だった利用者が、2021年9月時点では217.4万人にもなっているのです。多くの方が利用していることがわかりますね。
2022年からiDeCoの制度が変わる
2022年に施行される主な変更点について確認していきましょう。
2022年4月:iDeCoの老齢給付金の受給開始時期が75歳までに5年延長
iDeCoで運用して貯めたり増やしたりした資産(老齢給付金)は、これまで60歳〜70歳の10年の間に受け取りをはじめるしくみになっていました。しかし、2022年4月からは「60歳〜75歳の間」と、5年延長されます。国民年金・厚生年金の受給開始も75歳まで延長できるようになるため、それに合わせて改正されます。
iDeCoの資産は、受け取るまでの間ずっと非課税で運用ができます。この改正によって、受け取るまでの非課税で運用できる期間も最長70歳から75歳までと5年増えるため、より長く運用することでお金を増やせる可能性も高まります。
ただし、この改正が行われる2022年4月1日時点で70歳に達している方(1952年4月1日以前に生まれた方)はこの改正の対象外。75歳までに延長することはできません。また、国民年金・厚生年金は75歳まで受給開始を遅らせる(繰下げ受給)をすることで1カ月ごとに0.7%、最大84%金額が増えますが、iDeCoの資産が増えるかは市場の動向によりますので、資産が減るリスクもあることは押さえておきましょう。
2022年5月:iDeCoに加入できる年齢が5年延長
iDeCoに加入して掛金を出し、積立ができるのは現状60歳未満の方です。しかし、2022年5月からはこの上限が5年延長され、65歳未満の方までiDeCoに加入することができるようになります。
たとえば、毎月2万円ずつ掛金を積み立てている方ならば、5年間で120万円多く積み立てられるようになります。長期・積立・分散投資を5年間長く続けることでお金も増やせますし、拠出した掛金の所得控除によって所得税や住民税を軽くすることもできます。
ただし、iDeCoに60歳以降も加入できるのは「国民年金の被保険者(加入者)」のみ。60歳以降も会社員や公務員として働いている第2号被保険者は、厚生年金に加えて国民年金にも加入しているので、iDeCoにも問題なく加入できます。しかし、自営業・フリーランスの方(第1号被保険者)や専業主婦(夫)(第3号被保険者)は、60歳になると原則として国民年金の被保険者ではなくなるので、iDeCoには加入できません。
例外として、60歳以降に国民年金に任意加入(国民年金の受給資格を満たしたり、受給額を満額に近づけたりするために、自分で保険料を支払って国民年金に加入すること)をする方は、国民年金の加入者ですので、iDeCoにも加入できます。
また、この改正の前に60歳になる方(1962年5月1日以前に生まれた方)は、60歳に到達した時点でいったんiDeCoへの加入資格がなくなります。しかし、2022年5月1日以降になったら、金融機関に改めて加入の申し出をすれば、再びiDeCoに加入し、65歳になるまで掛金を出し、積立を続けられます。
ただし、iDeCoに再加入するときにはiDeCoの資産や公的年金を「受け取っていない」ことが条件になります。再加入までの間にiDeCoの受け取り手続きをしたり、公的年金を繰上げ受給したりすると、iDeCoへの再加入はできなくなるので注意してください。
2022年10月:企業型DCとiDeCoを併用しやすくなる
現状iDeCoには、60歳未満で国民年金の被保険者であれば加入できることになっていますが、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人は、事実上iDeCoに加入することはできませんでした。なぜなら、企業型DCとiDeCoを併用するには、労使合意によって「企業型DCとiDeCoの併用を認める」といった規約を定める必要があったからです。
2022年10月からは、そうした規約による定めがなくてもiDeCoに加入できるようになります。これまで、iDeCoに加入したくても加入できなかった人は750万人いるともいわれています。しかし、2022年10月以降は問題なく加入できるようになりますので、加入者も増えるとみられています。
企業型DCの金融機関は勤め先が決めるため自分では選べません。また、投資先の商品は金融機関ごとに違うので、自分が欲しいと思う商品を買えない、ということもありました。しかし、iDeCoの金融機関は自分で選べますので、投資したい商品を扱う金融機関に口座開設して、iDeCoをスタートすればいい、というわけです。
企業型DCとiDeCoの併用には注意点も
上記で紹介した企業型DCは、iDeCoと違って会社が従業員に対して掛金を出してくれる制度。運用は従業員が自分で行い、60歳以降にその成果を受け取ります。ありがたい制度ではあるのですが、企業型DCとiDeCoを併用する際には、掛金の上限に注意が必要です。
企業型DCのみ加入している方の場合、企業型DCの掛金の上限は月額5万5,000円です。
これに加えてiDeCoも利用する場合、iDeCoの掛金の上限は月額2万円です。しかし、企業型DCとiDeCoの掛金の合計は5万5,000円までとなります。
また、企業型DCに加えて確定給付企業年金(DB)などの確定給付型年金にも加入している方の場合、企業型DCの掛金の上限は2万7,500円です。これに加えてiDeCoも利用する場合、iDeCoの掛金の上限は月額1万2,000円までとなります。しかし、企業型DCとiDeCoの掛金の合計は2万7,500円までとなります。
つまり現状、企業型DCの掛金が5万5,000円、あるいは2万7,500円の上限に達している方は、iDeCoを併用することができないのです。また、企業型DCの掛金が上限に達していなくても、上限に近い場合には、iDeCoの掛金の上限額も少なくなってしまいます。たとえば、企業型DCのみに加入している場合で、掛金が毎月5万円だとしたら、iDeCoの掛金の上限額は5,000円となります。
iDeCoを上限まで利用したい場合は、企業型DCの掛金を引き下げる必要があります。
企業型DCとiDeCoを併用する場合の掛金上限額(月額)
企業型DC | |||
---|---|---|---|
確定給付型年金なし | 確定給付型年金あり | ||
iDeCoと 併用しない |
iDeCoと 併用する |
iDeCoと 併用しない |
iDeCoと 併用する |
企業型DC 55,000円 | 企業型DC 35,000円 iDeCo 20,000円 合計 55,000円 |
企業型DC 27,500円 | 企業型DC 15,500円 iDeCo 12,000円 合計 27,500円 |
なお、企業型DCで従業員も掛金を拠出するマッチング拠出をしている場合は、iDeCoを利用することができません。マッチング拠出とiDeCoは併用できないので、どちらかを選ぶ必要があります。
商品選びの自由度は、iDeCoに軍配が上がります。また、マッチング拠出では企業型DCで会社が出してくれる掛金の額までしか自分で掛金を出せないので、マッチング拠出の掛金額が少ない場合もiDeCoが有利になる場合があります。
また、企業型DCでは加入時・運用中にかかる手数料が会社負担になりますが、iDeCoでは自己負担になる点にも要注意。iDeCoの場合、加入時に口座開設手数料2,829円(税込)がかかるほか、運用中は国民年金基金連合会に月105円(拠出1回ごと・税込)、信託銀行などに月66円(税込)の手数料がかかります。さらに金融機関によっては、月数百円程度の運営管理手数料がかかる場合もあります。
制度改正後はぜひiDeCoを活用しましょう!
大きな税制優遇のメリットを生かしながら老後資金を用意できるiDeCo。老後資金を貯めるのに役立つ制度です。そのiDeCoが2022年、ますます使いやすくなります。これまでiDeCoに加入できなかった方も、加入していなかった方もぜひ活用して、老後資金を築いていきましょう。
イオン銀行では、iDeCoの運営管理手数料が0円ですので、手数料を抑えた効率のよい運用が可能です。そのうえ、店舗でもオンラインでも年中無休でiDeCoの相談ができます。もし少しでもわからないことがあったら、気軽に相談してみてくださいね。
- ※ 本ページは2021年12月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
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