「つみたてNISA(積立NISA)」が始めたくなってしまうワケ NISAとの違いは?
執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|寺野 裕子
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本記事では2018年1月から、現行のNISA(以下、NISA)に加えて新設される「つみたてNISA」を解説します。NISAよりも、若い世代や投資初心者の利用促進を意識した仕組みとなっていますので確認していきましょう。
- 若い人にもNISAを始めてほしい!
- 「つみたてNISA」が利用したくなっちゃう制度に!?
- NISAと「つみたてNISA」の違い
- 「つみたてNISA」でいくらおトクになるか計算しました
- 「つみたてNISA」を活用するポイント
- 今回のまとめ
若い人にもNISAを始めてほしい!
NISAの利用状況は、金融庁によると2016年12月末時点、口座開設数は1,000万口座と順調に増えてはいるものの、半数以上の口座が一度も運用商品の購入が行われていないというのが実態でした。さらに積み立てによる利用は総口座数の10%以下の状況です。
この利用状況からNISAは、既にある程度の運用経験があり、まとまったお金を持っている60代以上といった一部の世代がメインとなり税制優遇を活用し、さらにお金を有利に増やしているという偏ったNISAの利用実態が見えてきます。
そのような利用状況の中、国は投資初心者や若い世代を含めた幅広い年代にも、将来に向けた、ゆとり生活資金作りのために、運用益に税金がかからない有利な「つみたてNISA」という制度で支援するから、気軽に活用してほしいという気持ちがあったと推察します。
「つみたてNISA」が利用したくなっちゃう制度に!?
2018年1月に新設される「つみたてNISA」も、NISA同様、運用で得た利益に対して税金がかからない制度です。そうなると、「つみたてNISA」という名前から、NISAは積み立てでは利用できなかったの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。そうではなくNISAも積み立ては可能です。
NISAも積み立ては可能だったのですが、どうも若い人に活用されていない現状を見てみると、あまり投資経験がない20代、30代といった世代にはハードルが高いイメージがあったのかもしれません。
今回の「つみたてNISA」の新設は、そんな若い世代の資産形成のための手段として、気軽に、積極的に使って欲しいんだな~というメッセージがよくよく伝わってくる仕組みになっています。
新設の「つみたてNISA」は、投資初心者を意識して対象商品は分かりやすい商品でなければいけないという制限が設けられています。またリスクとの付き合い方の大原則ともいえる「積立投資」「長期投資」がしやすい仕組みになっていて、さらに「低コスト」の商品から選ぶことになりますので、今から将来のために貯めていきたいと思っている若い世代には使い勝手の良い制度になっています。
では、どのように使い勝手が良くなっているのか。
NISAと比較しながら、「つみたてNISA」の内容を確認をしてみましょう。
NISAと「つみたてNISA」の違い
「つみたてNISA」の大きな特徴は、名前から想像できるかと思いますが「つみたて」に限定していること、また積み立て期間が20年間と長期運用が可能となった点です。
あと、対象商品も投資初心者を意識して、値動きが大きく複雑な商品や長期投資に向かない商品も除外となっていますので、分かりやすくシンプル、低コストなものに限定されているのが特徴です。
NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|
選択制・併用不可 | ||
対象者 | 日本に住む20歳以上の人 | |
投資可能期間 | 10年間(2014年~2023年) | 20年間(2018年~2037年) |
非課税期間 | 投資した年から最長5年間 | 投資した年から最長20年間 |
年間投資上限額 | 120万円(2015年分までは年100万円) 最大非課税投資額600万円(120万円×5年間) |
40万円 最大非課税投資額800万円(40万円×20年間) |
投資対象商品 | 上場株式(ETF、REIT含む)、ETF、公募株式投資信託等 | 長期の積み立て・分散投資に適した一定の投資信託 (要件・投資期間が無期限または20年以上、毎月分配型でないこと) |
投資方法 | 投資上限額内の一括買付、積み立ても可 | 定期かつ継続的方法による積み立て |
「つみたてNISA」でいくらおトクになるか計算しました
「つみたてNISA」の年間積み立て額の上限は40万円と、NISAの120万円と比べるとインパクトは弱くなる印象を受けるかもしれませんね。
しかし、今後10年、20年とコツコツと将来のために貯めていきたい若い層の方にとっては特に無視できないおトク度が期待できます。
例えば、早速、2018年1月から20年間、「つみたてNISA」を使って毎月2万円のコツコツ積立投資を始めるとしましょう。20年間の積立元本は480万円です。もし、この20年間で積立元本480万円が590万円に増えたとします。20年間で110万円の利益がでたことになります。今回は「つみたてNISA」を利用しての110万円の利益ですので、20年後に売ったとしますと、まるまる590万円を手にすることができます。
一方、「つみたてNISA」を利用せずに同じ110万円の利益がでる運用ができた場合には、110万円に対して20.315%の税金がかかりますので、590万円から税金分として約22万円差し引かれた残りを手にすることになります。
この22万円の差、どのように感じますか?海外旅行なんて使い道もあるかもしれませんね。
運用経験がない方には、480万円から590万円に増えるなんて、今のご時世、想像できないと感じられるかもしれませんね。しかし、480万円から590万円に増える運用成果を別の表現でしますと、20年間で2%の運用ができたとも言い換えられます。この2%という運用成果もイメージは難しいかもしれませんが、毎月の積み立て投資で20年間という期間があれば決して無茶な例えでもありません。NISAの5年ではここまで言い切れませんので20年間の長期運用が可能になった点は大きいです。
「つみたてNISA」を活用するポイント
NISAと「つみたてNISA」は選択制となっているため、どちらかを選ばなくてはいけません。
「つみたてNISA」はNISAに比べて年間の投資上限額は3分の1と減っていますが、非課税期間が4倍の20年に伸びていますし、投資初心者でもわかりやすい商品に絞り込まれているという点で、簡単に、投資の基本中の基本である「積立投資」「長期投資」ができる仕組みとなっています。「忙しくって、投資なんか難しくってできない」というめんどくさがりな方にはオススメです。
ただし、すでに投資経験がある方や、個別株式で運用したい方は、NISAの方が良いでしょう。また、まとまったお金を運用したい方もNISAの方が良いと言えます。
いずれを選ぶにせよ、20.315%の税金ゼロ効果は大きいです。同じ運用をするなら、「NISA」「つみたてNISA」を活用することで賢く節税しながら増やすことは無視できないと思いますよ。
今回のまとめ
- 「つみたてNISA」は、投資初心者への利用促進を主目的に新設される制度
- 「つみたてNISA」の主なポイントは強制的に積立投資、20年の長期投資可能、分かりやすい商品への絞り込みがされている、の3つ
- 「つみたてNISA」とNISAは併用できないため、違いを理解して選ぶ
- ※ 本ページは2017年10月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
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