住宅ローン減税vs繰上返済、どちらを優先すべきか
執筆者:マネーコンサルタント|頼藤 太希
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住宅ローン減税適用期間は繰上返済した方がよいのか、しない方がよいのか、気になる人は多いのではないでしょうか。はっきりと答えがわからないのは、支払っている税金の金額、借入金額、借入期間、金利水準などで、人によって結果が異なるからです。
今回は、金利1.5%と0.6%の2パターンで、住宅ローン減税と繰上返済、どちらを優先すべきかをシミュレーションしてみました。
消費増税に伴い「住宅ローン減税」が拡充
住宅ローン減税は、最大10年間、年末時点の住宅ローン残高×1%を、所得税・住民税から直接減らすことができるという制度です。
ただし、2019 年10月1日の消費税10%への引き上げ後は、その対策として、2019年10月1日以降に住宅の取得等を行った場合※、住宅ローン減税が拡充され控除期間が10年から13年間へと3年間延長となります。
※2019年10月1日から2020年12月31日までの間に居住の用に供した場合
ただし、11年〜13年の控除限度額の計算が少し複雑で、「年末時点の住宅ローン残高×1%」と「建物購入価格×2%÷3」のいずれか小さい金額となっています。
今回の住宅ローン減税拡充によって、2%消費増税の負担が概ね緩和されます。
住宅ローン減税vs繰上返済、どちらを優先すべきか
今回は、金利1.5%と0.6%の2パターンで、住宅ローン減税と繰上返済、どちらを優先すべきかをシミュレーションしてみます。
どちらも条件は、以下の通りとします。
- 2019年10月1日以降に居住用の住宅を取得
- 借入金額3,000万円、35年返済、変動金利
- 当初10年間の金利は変わらない
- 住宅ローン減税は全額利用できる
- 繰上返済は期間短縮型を選択
- 11年〜13年の控除限度額は「年末時点の住宅ローン残高×1%」とする
- 諸経費等は考慮せず、1万円以下は四捨五入
ケース1:金利1.5%の場合
住宅ローン減税の合計額 | 繰上返済による利息軽減額 | 住宅ローン減税と繰上返済の効果の合計 | |
---|---|---|---|
現状のまま | 326万円 | 0円 | 326万円 |
1年目から毎年100万円の繰上返済を10年間続けた場合 | 235万円 | 420万円 | 655万円 |
11年目に1,000万円を繰上返済した場合 | 295万円 | 317万円 | 612万円 |
1年目から毎年100万円の繰上返済を10年間続けると、住宅ローン減税の金額は減るものの、11年目にまとめて繰上返済するよりも、43万円お得になることがわかりました。
ケース2:金利0.6%の場合
住宅ローン減税の合計額 | 繰上返済による利息軽減額 | 住宅ローン減税と繰上返済の効果の合計 | |
---|---|---|---|
現状のまま | 317万円 | 0円 | 317万円 |
1年目から毎年100万円の繰上返済を10年間続けた場合 | 230万円 | 153万円 | 383万円 |
11年目に1,000万円を繰上返済した場合 | 287万円 | 117万円 | 404万円 |
金利0.6%で借りている場合、1年目から毎年100万円の繰上返済を10年間続けるよりも、11年目にまとめて繰上返済する方が21万円お得になることがわかりました。
住宅ローン減税はローン残高の「1%」分を税金から減らす制度なので、金利が「1%」よりも「大きい」のか「小さい」のかが、住宅ローン減税と繰上返済どちらを優先するのかのチェックポイントになりそうです。
今回は、住宅ローン減税は全額活用できるという条件のもとシミュレーションをしていますが、納めている所得税・住民税以上に減税されないことに注意が必要です。つまり、元々、納めている所得税・住民税が少ない場合は、住宅ローン減税の効果を十分に得られません。
また、繰上返済のタイミング、住宅ローン残高などによっても結果は変わってきますので、読者のみなさんの条件でシミュレーションすることをオススメします。
10年待って繰上返済するなら、その10年間はコツコツ運用しよう
借入しているローンの金利水準などによって、10年間待ってから繰上返済した方がよいという人がいることはわかりました。
でも、その10年間に普通預金や定期預金で貯めていくのはもったいない!
とはいえ、返済するために貯めておく金額の「全額」を、リスクがある投資商品で積み立てるのはハードルが高いでしょう。なので、積立定期と投信積立を組み合わせるのはいかがでしょうか?
投信(投資信託)というのは、金融機関が投資家のみなさんからお金を少しずつ集めてひとまとまりにし、そのまとまったお金をファンドマネージャーが株や債券に運用する、金融商品のこと。簡単に言えば、投信は、株や債券などが入った詰め合わせです。
10年後の繰上返済のために、10年で1,000万円を貯めると考えた場合、月々の必要積立額は約8万3,000円となります。(ボーナスなしと考えた場合)
積立定期と投信積立を組み合わせるとしたら、5万円を積立定期、3万3,000円を投信積立にするというイメージです。
さらに投信積立は、つみたてNISA(積立NISA)を活用すれば、お得にお金を増やすことができます。
つみたてNISA(積立NISA)は、年間投資金額40万円まで、投資の利益にかかる約20%の税金を20年間ゼロにできる制度です。つみたてNISA(積立NISA)は、投資の経験がなくても、投資の王道といわれる「長期・分散・積立投資」を有利にスタートできる魅力がたくさんあります。
つみたてNISA(積立NISA)を詳しく知りたい方はこちらの記事をぜひチェックしてみてください。
今回のまとめ
- 住宅ローン金利が高い人は、11年目にまとめて繰上返済するよりも、毎年コツコツと繰上返済した方が、住宅ローン減税と繰上返済の効果が大きい可能性
- 住宅ローン金利が低い人は、11年目にまとめて繰上返済する方が、毎年コツコツと繰上返済するよりも、住宅ローン減税と繰上返済の効果が大きい可能性
- 住宅ローン減税と繰上返済どちらが良いかは、支払っている税金の金額、借入条件、繰上返済するタイミングなどによって異なるので、シミュレーションしてみよう
- 10年待って繰上返済するなら、その10年間はコツコツ運用しよう。積立定期と投信積立(つみたてNISA)を組み合わせるのがオススメ
- ※ 本ページは2019年5月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。