
【この記事を読んでわかること】
現金給付などの支援が行われるとき、たびたびその基準として「住民税非課税世帯」が出てきます。今回はそもそも住民税非課税世帯とはどんな世帯なのか、年収がいくらの世帯が対象になるのかをご紹介します。また、住民税非課税世帯の受けられる優遇措置についても確認してみましょう。
住民税非課税世帯とは、「住民税が一切課税されない世帯」のことです。
住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に納める税金です。私たちは生活をするときに、教育・福祉・ゴミの処理など、さまざまな公共サービスを利用しています。住民税は、それらの公共サービスの運営費用として徴収されている税金です。毎年1月1日時点で日本に住所があり、給与などの所得がある方ならば、原則として納める義務があります。
住民税には「所得割」と「均等割」の2種類があります。
所得割は、個人の所得に基づいて課税される税金で、税率は一律10%です。支払額は所得額に応じて変動し、所得が多いほど負担が大きくなります。
一方、均等割は所得の多少に関係なく、一定以上の所得のある方がみんな均等に負担する税金です。均等割の金額は一律で5,000円(道府県民税(都民税)1,000円・市町村民税(特別区民税)3,000円・森林環境税1,000円)となっています。
これらの住民税は支払う義務がありますが、所得が一定金額以下の方は非課税になります。そして、世帯の全員が住民税非課税である世帯のことを住民税非課税世帯といいます。
住民税が非課税になる条件には「所得割・均等割とも非課税」と「所得割が非課税」の2つがあります。このうち、住民税非課税世帯は、世帯全員が「所得割・均等割とも非課税」になっている世帯を指します。
ここでは、東京23区にお住まいの方の住民税が所得割・均等割とも非課税になる条件を紹介します。
①生活保護法による生活扶助を受けている方
②障害者・未成年者・寡婦又はひとり親で、前年中の合計所得が135万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4,000円未満)の方
③前年中の合計所得が以下の金額以下の人
【同一生計配偶者又は扶養親族がいない場合】
45万円以下
【同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合】
35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
生活保護を受けている方は、住民税の支払いが免除されます。
また、障害者・未成年者・寡婦・ひとり親であれば、前年中の合計所得が135万円以下ならば住民税が非課税になります。働いて給与をもらっている方であれば、年収204万4,000円未満であることが条件です。
年収が「204万4,000円未満」となる理由は、前年中の合計所得を算出する際に、収入から「給与所得控除」という金額を差引くからです。
2024年12月に閣議決定された「税制改正大綱」には、年収の壁の引上げについて、住民税の給与所得控除の最低保障額を10万円引上げることが盛り込まれています(所得税は基礎控除と給与所得控除がそれぞれ10万円引上げられますが、住民税の基礎控除は据え置きです)。税制改正大綱には、2025年から適用である旨が記載されていますので、住民税非課税世帯の基準額が変わります。
年収が190万円までの場合、給与所得控除の控除額は最低保障額の65万円となりますが、年収が190万円を超えてからの控除額は現状と変わりません。したがって、2025年以降も障害者・未成年者・寡婦・ひとり親の方が住民税非課税となる年収の条件は「204万4,000円未満」で変わりません。
しかし、上記③に当てはまる方の場合は、住民税非課税世帯となる基準が変わります。
単身者の場合、前年中の合計所得が45万円以下であれば、住民税非課税となります。具体的には、以下のような収入状況の方が該当します。
<単身者の場合>
アルバイトやパートの場合:給与収入が100万円以下(改正後は110万円以下)
65歳以上で年金収入のみの場合:年金収入が155万円以下
65歳未満で年金収入のみの場合:年金収入が105万円以下
不動産収入などがある場合:収入から必要経費を引いた後の合計所得が45万円以下
また、配偶者や子どもなどの扶養親族がいる場合には、上の計算式で求めた金額よりも前年中の合計所得が少なければ住民税非課税になります。簡単に計算すると以下のようになります。
<扶養親族がいる場合>
前年中の合計所得がこの金額になる年収を計算すると以下のようになります。
なお、住民税が非課税になる金額はお住まいの地域によって少々変わりますので、気になる場合は自治体ホームページで確認してみてください。
住民税非課税世帯の収入は少ないため、生活が苦しくなってしまうこともあります。それを救済する観点から、住民税非課税世帯にはさまざまな優遇措置が用意されています。たとえば、次のようなものがあります。
コロナ禍以降、たびたび行われてきた給付金のなかには、住民税非課税世帯を対象としているものが多くあります。たとえば、2024年11月には住民税非課税世帯を対象に1世帯あたり3万円、子ども1人あたり2万円の給付金を支給することが決定しています。今後も同様の給付金が支給される際に、住民税非課税世帯が対象となることは十分あるでしょう。
幼稚園・保育所・認定こども園などを利用する3〜5歳児の保育料は無償化されています。住民税非課税世帯になると、これに加えて0〜2歳児の保育料も無償化されますので、各施設を無料で利用することができます。
子どもが高校生であれば、返済不要の「高校生等奨学給付金」が利用できます。教科書費・教材費など、授業料以外の教育費を支援してくれます。対象は生活保護世帯・住民税所得割が非課税の世帯、家計が急変して非課税相当になった世帯です。
2024年度(令和6年度)の場合、住民税非課税世帯の第1子が全日制の公立高校に進学する場合は12万2,100円、私立高校に進学する場合は14万2,600円が給付されます。また、第2子以降は14万3,700円・15万2,000円が給付されます(いずれも年額)。
大学等に進学する場合は、「大学無償化制度(高等教育の修学支援新制度)」で、授業料や入学金の費用の給付や減免を受けられます。
支給額は通う学校や一人暮らしかどうかなどにより異なります。たとえば私立大学に通う場合、入学金が約26万円、授業料が約70万円免除・減額されます。
毎月の医療費の自己負担を一定額に抑えることができる高額療養費制度の自己負担額は所得水準で異なります。住民税非課税世帯は、この自己負担額も少なくて済み、一律で3万5,400円(70歳未満)となっています。
2019年10月より、住民税非課税世帯の65歳以上の介護保険料が軽減されています。また、高額な介護サービスを利用した場合の自己負担上限額も最大で2万4,600円となっています。
国民年金保険料は申請すれば免除が受けられます。免除を受けた場合でも、将来、国民年金保険料を支払った場合の2分の1の年金を受取れます。また、国民健康保険料の負担も2割〜7割軽減されます。
公的扶助受給者・身体障害者・知的障害者・精神障害者がいる世帯でかつ、世帯構成員全員が市町村民税(特別区民税を含む)非課税の場合、NHK受信料が全額免除になります。
住民税の支払いが免除される住民税非課税世帯になると、住民税を支払う必要がなくなるうえ、さまざまな優遇措置が受けられます。もしも何らかの原因で収入が減ってしまった場合には、自分が当てはまるかどうか自治体ホームページにて確認してみてください。
※本ページは2025年1月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
頼藤 太希
マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。
『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)など書籍100冊、著書累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki