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遺族年金とは?もらえる人、もらえない人がいる?

【この記事を読んでわかること】

  • 遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、それぞれ対象者や金額が異なる
  • 遺族基礎年金は子のいる配偶者または子、遺族厚生年金はもっとも優先順位の高い人しかもらえない
  • 保険料が未納の場合、年収が一定以上の場合、65歳以上の人なども遺族年金をもらえないことがある

「もしも家計を支えている人が亡くなったら?」縁起でもない話ですが、絶対にないとは言えません。こんなとき、残された家族の生活を支えるために支給されるのが、遺族年金です。ただ、遺族年金がもらえる条件は細かく決まっていて、なかにはもらえない人もいます。今回は、遺族年金がどんな年金なのか、遺族年金がもらえる人の条件、もらえない人の条件を紹介します。

遺族年金とは?

遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入していた人が亡くなったときに、残された家族がもらえる年金です。遺族年金には、国民年金から受け取れる「遺族基礎年金」と厚生年金から受け取れる「遺族厚生年金」の2種類があり、どちらがもらえるか(あるいは両方もらえるか)は亡くなった人の年金の加入状況などによって異なります。

遺族年金の金額は次のとおりです(なお、以下は2024年度の金額で作成しています)。

遺族基礎年金

下記で詳しく触れますが、遺族年金は、18歳未満の子どもがいる配偶者または子に給付されます。
年額81万6,000円(1956年4月以前生まれは81万3,700円)+子の加算
※子の加算
(1人目・2人目)各23万4,800円
(3人目以降)各7万8,300円

遺族基礎年金の金額は、一律でみな同じです。また、子どもの人数に応じて加算されます。

遺族厚生年金

こちらも下記で詳しく触れますが、遺族厚生年金は、厚生年金加入者の遺族に給付されます。給付対象の遺族が複数いる場合は、優先順位が最も高い人に支給されます。

亡くなられた人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3=(A+B)×3/4
A:2003年(平成15年)3月以前の加入期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数
B:2003年(平成15年)4月以降の加入期間
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の被保険者期間の月数

遺族基礎年金とは違い、遺族厚生年金の金額は少々複雑です。遺族厚生年金の金額は、亡くなられた人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3と決まっています。
報酬比例部分とは、年金の加入期間や過去の給与などに応じて決まる部分のこと。AとBの金額の合計です。「平均標準報酬月額」「平均標準報酬額」は毎年4月〜6月の給与(平均標準報酬額は給与と賞与)をもとに決まる計算用の金額です。

なお、被保険者期間の月数が300月(25年)に満たない場合は、300月とみなして計算します。また、65歳以上で自分の老齢厚生年金を受け取る権利がある場合は「亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3」と「亡くなった人と自身の老齢厚生年金を2分の1ずつ足した合計」を比較して、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。

遺族年金の対象者は?誰がもらうことができるの?

遺族基礎年金と遺族厚生年金では、もらえる人に違いがあります。

遺族基礎年金

遺族基礎年金は、次のいずれかの要件に当てはまる場合に、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」に支給される年金です。

【遺族基礎年金の受給要件】
①国民年金の被保険者である間に亡くなったとき
②国民年金の被保険者だった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所がある人が亡くなったとき
③老齢基礎年金の受給権者が亡くなったとき
④老齢基礎年金の受給資格を満たした人が亡くなったとき

なお、遺族基礎年金の「子」とは、

  • 18歳の誕生日になる年度の3月31日までの子
  • 障害年金の障害等級1級または2級である20歳未満の子
  • 婚姻していない子

です。

遺族厚生年金

遺族厚生年金は、会社員や公務員など、厚生年金に加入していた人が亡くなったとき、その人に生計を維持されていた人に支給される年金です。次のいずれかを満たした場合に支給されます。

【遺族厚生年金の受給要件】

①厚生年金保険の被保険者である間に亡くなったとき
②厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に亡くなったとき
③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている人が亡くなったとき
④老齢厚生年金の受給権者が亡くなったとき
⑤老齢厚生年金の受給資格を満たした人が亡くなったとき

なお、遺族厚生年金をもらう妻は

  • 夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で、生計を共にする子がいない
  • 遺族基礎年金を受給していたが、子どもが成長して年齢条件から外れたために遺族基礎年金を受給できなくなった

このどちらかの条件を満たすと「中高齢寡婦加算」が上乗せされます。中高齢寡婦加算の年金額は、年額61万2,000円です。

なお、遺族年金は老齢年金と違って非課税です。

遺族年金がもらえない場合がある?

しかし、上の条件を満たした人でも、場合によっては遺族年金がもらえないことがあります。その主な条件を紹介します。

遺族年金をもらえない人1:保険料が未納の人

国民年金保険料が未納になっている場合、遺族年金はもらえません。会社員や公務員の場合は、毎月の給与から厚生年金保険料が支払われていますので、未納になることはないでしょう。しかし、自営業やフリーランスなどの場合は、自分で国民年金保険料を納める必要があるので、未納にしていることもあるかもしれません。

遺族年金をもらうための「保険料の納付要件」には、

  • 亡くなった日の前々月までの保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること
  • 亡くなった日が2026(令和8)年3月末日までのとき、亡くなった方が65歳未満の場合、亡くなった日の前々月までの直近1年間に保険料未納がないこと

があります。これを満たさないと、遺族年金はもらえません。

保険料を支払うのが厳しい場合でも、未納にせず「免除」を受けていれば、その期間は年金の加入期間とみなされます。未納で放置せず、年金事務所などに相談しておくことが大切です。

遺族年金をもらえない人2:年収850万円以上の人

遺族年金を受給する要件として、「亡くなった人に生計を維持されていること」が挙げられています。遺族が生計を維持されていると認められるには、遺族の前年の年収が850万円未満という要件を満たす必要があります。ですから、年収が850万円以上の遺族は、遺族年金はもらえません。

遺族年金をもらえない人3:子どもがいない人

遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」に支給される年金でした。つまり、子どもがいない人は遺族基礎年金をもらうことができません。子に該当するのは、18歳の誕生日になる年度の3月31日までの子、もしくは、障害年金の障害等級1級または2級である20歳未満の子などです。

そもそも遺族基礎年金は、子どもを育てることが目的の年金ですので、子どもがいなければ支給されません。また、亡くなった方が会社員や公務員で、その遺族に受給対象の子どもがいない場合、遺族厚生年金のみ支給されます。

遺族年金をもらえない人4:遺族厚生年金の優先順位が低い人・年齢などの条件を満たさない人

遺族厚生年金がもらえる人は「配偶者」「子」「父母」「孫」「祖父母」などで、優先順位があります。以下のうち、もっとも優先順位の高い人がもらえます。

第1位:子のある配偶者
第2位:子
第3位:子のない配偶者
第4位:父母
第5位:孫
第6位:祖父母

優先順位のより高い人がいれば、それより下の順位の人はもらえません。

また、夫、父母、祖父母は死亡当時55歳以上であることが条件で、受給開始は60歳からになります。30歳未満の子のない妻は5年間のみの給付になります。そして子の条件は遺族基礎年金と同じです。
ただし、夫に子どもがあり遺族基礎年金を受給できる場合、「55歳以上」であれば60歳を待たずに遺族厚生年金を受給できます。

遺族年金をもらえない人5:65歳以上の人

65歳以上で自身の老齢厚生年金をもらっている方が遺族厚生年金の受給権も持つ場合、どちらも受給できます。ただし、もらえる遺族厚生年金の額は自身の老齢厚生年金に相当する額を差し引いた金額になるので、遺族厚生年金の一部はもらえないということが起こります。亡くなった人よりも収入が多い妻(夫)などの場合、遺族厚生年金は一切もらえないということもあります。

遺族年金は残された家族の生活を支える大切な年金ですが、所定の条件を満たさなければもらえません。また、条件を満たしていても、手続きをしなければもらえません。自分がもらえるのかの確認や金額、手続きなどはお住まいの自治体の年金事務所や役所などに問い合わせ、間違いのないようにしましょう。

  • 本ページは2024年4月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。

お申込みに際しては、以下の留意点を必ずご確認ください。

高山一恵

(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。月400万PV超の女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』やチャンネル登録者1万人超のYouTube「Money&YouTV」を運営。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)など著書累計150万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。

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