年収1,000万円片働き世帯と年収500万円×2 共働き夫婦世帯、将来の年金額は約45万円違うって本当?
執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|高山 一恵
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【この記事を読んでわかること】
- 日本の公的年金には、すべての人が加入する国民年金と会社員・公務員が加入する厚生年金の2つがある
- 年収1,000万円片働き世帯では国民年金は2人分だが厚生年金は1人分。年収500万円×2 共働き夫婦では国民年金も厚生年金も2人分もらえる
- 年収1,000万円片働き夫婦の世帯の年金額合計は334万2,000円。一方年収500万円×2共働き夫婦の世帯の年金額合計は379万円
「年収1,000万円」といえばかなりの高年収ですが、日本人の平均年収は458万円(国税庁「民間給与実態統計調査」ですから、そう簡単に達成できそうもありません。でも、夫婦共働きで合計年収1,000万円なら、まだ可能性があるかもしれません。しかも、夫婦共働きで合計年収1,000万円のほうが年金額を増やせるなら、1人で1,000万円を目指すよりもいいですよね。
今回は、「年収1,000万円片働き世帯」と「年収500万円×2共働き夫婦世帯」で年金額がどう違うかを紹介します。
もらえる年金額はどう計算される?
日本の公的年金には、国民年金と厚生年金の2種類があります。国民年金は、20歳から60歳までのすべての人が加入する年金です。対する厚生年金は、会社員や公務員が勤務先を通じて加入する年金です。
国民年金から受け取れる老齢年金を老齢基礎年金といいます。老齢基礎年金の金額は、国民年金保険料を40年にわたって納付すれば、誰でも満額受け取れます。65歳から老齢基礎年金を受け取る場合の受給額は年81万6,000円(2024年度・昭和31年4月2日以降生まれの場合)です。
それに対して、厚生年金から受け取れる年金を老齢厚生年金といいます。老齢厚生年金が受け取れるのは、厚生年金に加入していた会社員や公務員のみです。会社員や公務員は、厚生年金を通じて国民年金にも加入していますので、老後には老齢基礎年金も受け取れます。
老齢厚生年金の受給額は「平均標準報酬月額×0.005481×加入月数」で計算します。標準報酬月額は、厚生年金保険料などの社会保険料を算出するときの基準となる給与のこと。原則として、毎月4月〜6月の給与の平均額(報酬月額)を等級表に当てはめることで、標準報酬月額がわかります。
<厚生年金の等級表>
平均年収が高いほど標準報酬月額が高いため、もらえる年金額も増えます。しかし、標準報酬月額の上限は32段階で、65万円となっています。報酬月額が63.5万円以上の方は、すべて32等級に該当します。
年収1,000万円片働き世帯の年金額はいくら?
以上を踏まえて、年収1,000万円の世帯主と専業主婦(夫)の世帯が受け取る年金額を計算してみましょう。
【試算条件】
- 世帯主…厚生年金に40年間(480月)加入し、その間の平均年収が1,000万円、賞与なし
- 配偶者(専業主婦(夫))…国民年金に40年間(480月)加入(保険料の未納なし)
- 65歳から年金を受け取ったときの額面の年金額
- 老齢基礎年金の金額は夫婦とも81万6,000円とする(2024年度の満額)
【年金額】
- 世帯主
- 配偶者
老齢基礎年金…年81万6,000円
老齢厚生年金…65万円×0.005481×480月=年約171万円
老齢基礎年金…年81万6,000円
→世帯の年金額合計…(81万6,000円×2)+171万円=334万2,000円
老齢基礎年金は夫婦とももらえますが、老齢厚生年金は世帯主のみになります。この例では、世帯の年金額合計は年334万2,000円となりました。
年収500万円共働き夫婦世帯の年金額はいくら?
続けて、年収500万円の共働き夫婦世帯の年金額も計算してみましょう。
【試算条件】
- 夫婦とも厚生年金に40年間(480月)加入し、その間の平均年収が500万円(月給41.7万円、標準報酬月額41万円)、賞与なし
- 65歳から年金を受け取ったときの額面の年金額
- 老齢基礎年金の金額は夫婦とも81万6,000円とする(2024年度の満額)
【年金額】
- 夫婦とも
老齢基礎年金…年81万6,000円
老齢厚生年金…41万円×0.005481×480月=年約107.9万円
→世帯の年金額合計…(81万6,000円×2)+(107.9万円×2)=379万円
夫婦共働きで年収各500万円ですから、老齢基礎年金・老齢厚生年金とも夫婦ともにもらえます。そのため、世帯の年金額合計は年379万円となります。
以上より、各世帯の年金額の合計は、
- 年収1,000万円片働き世帯…年334万2,000円
- 年収500万円×2共働き夫婦世帯…年379万円
ですので、年収500万円×2共働き夫婦世帯のほうが44.8万円多く年金をもらうことができることがわかりました。
老後のお金を手厚くしよう
年収1,000万円片働き世帯と年収500万円×2共働き夫婦世帯、世帯年収の面では同じでも、もらえる年金額には約45万円の違いが出てくることを紹介しました。年金は生涯にわたってもらい続けることのできる老後の収入の柱ですから、できるだけ増やしておきたいですね。
もしも国民年金保険料に未納期間があるならば、60歳から65歳までの間、国民年金に任意加入することで年金額を増やせます。国民年金の加入期間が1年増えると、老齢基礎年金額は年間およそ2万円増加します。
また、国民年金と違い、厚生年金は原則70歳まで加入して、厚生年金保険料を納めることができます。ですから、60歳以降も会社などで働くことで受け取れる厚生年金が増えます。
たとえば、給与(厳密には、平均標準報酬額)が毎月20万円の人が1年間働くと、老後の厚生年金が年間およそ1.3万円増加します。
さらに、長く働いて収入を得ることで、65歳からもらえる年金を繰下げて受け取ることも選択しやすくなります。66歳から75歳までの間に繰り下げて受給することで、年金額が1カ月につき0.7%ずつ増加。最大で75歳まで繰り下げれば84%も増えます。
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また、投資をする際には、iDeCoや新NISAといった税制優遇の恩恵を受けながら安定的にお金を増やせる制度を活用しましょう。
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まずは、自分の老後の年金額を確認し、早いうちから対策を考えて、実行しましょう。
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