遺族年金など親族が亡くなった後に届け出・手続きをすると受取れるお金5選
執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|高山 一恵
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- ためる・ふやす
【この記事を読んでわかること】
- 親族が亡くなった後に届け出・手続きすることで受取れるお金はたくさんある
- 代表的な「遺族年金」には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、受取れる人の条件や金額が異なる
- その他のお金も、届け出・手続きしないと受取れないので、該当する場合は漏れなく届け出・手続きしよう
親族が亡くなると悲しむ暇もなく生じるのがお金の問題です。葬儀関連の費用や今後の生活費をどうすればいいのか、心配する人はたくさんいます。ただ、親族が亡くなった後に届け出・手続きをすることで受取れるお金もあります。条件に当てはまるなら、今後の不安を和らげることができるでしょう。
今回は、親族が亡くなった後に手続きをすることで受取れるお金を紹介します。
- 親族が亡くなった後の届け出で受取れるお金1:遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)
- 親族が亡くなった後に受取れるお金2:寡婦年金・死亡一時金
- 親族が亡くなった後に受取れるお金3:未支給年金
- 親族が亡くなった後に受取れるお金4:葬祭費・埋葬料(埋葬費)
- 親族が亡くなった後に受取れるお金5:高額療養費制度・高額介護サービス費・介護保険料
親族が亡くなった後の届け出で受取れるお金1:遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)
遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入していた人が亡くなったときに、遺された家族が受取れる年金です。遺族年金には、国民年金から受取れる「遺族基礎年金」と厚生年金から受取れる「遺族厚生年金」の2種類があります。
<遺族基礎年金と遺族厚生年金>
遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | |
---|---|---|
対象となる遺族 |
※ 子のいない配偶者は受け取れない |
(優先順位)より高位の人が受け取れる ①子のある妻・子のある55歳以上の夫・子 ②子のない妻・子のない55歳以上の夫 ③55歳以上の父母 ④孫 ⑤55歳以上の祖父母 |
支給期間 |
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金額 (2024年度) |
816,000円+子の加算額 ※ 1956年4月1日以前生まれは813,700円 +子の加算額 ※ 子の加算額
|
①亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4 ②亡くなった人と自身の老齢厚生年金を1/2ずつ足した合計 のどちらが高い方 |
※ 障害等級1級・2級の子や孫は「20歳未満」
(株)Money&You作成
遺族基礎年金は、国民年金に加入している(していた)人が亡くなった場合に遺族が受取れる年金です。ただ、遺族基礎年金が受取れるのは「子のいる配偶者」または「子」です。「子のいない配偶者」は受取れません。また、支給されるのも原則として子が18歳の年度末を迎えるまでになっています。
それに対して遺族厚生年金は、会社員や公務員など、厚生年金に加入している(していた)人が亡くなった場合に遺族が受取れる年金です。遺族厚生年金が受取れる遺族の範囲は遺族基礎年金よりも広くなっています。表のように優先順位が定められており、より高位の人が受取れる仕組みになっています。
会社員や公務員は、厚生年金に加入することで国民年金にも加入していますので、子のある配偶者や子の場合は、条件を満たせば遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が受取れます。
遺族基礎年金の金額は一律で、年度により多少前後があります。2024年度で、1956年(昭和31年)4月2日以後生まれであれば年81万6,000円です。また、子の人数によっても金額が変わります。一方、遺族厚生年金の金額は、亡くなられた人の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4。65歳以上の場合は、亡くなった人と自身の老齢厚生年金を1/2ずつ足した合計と比較して、高い方の金額となります。
なお、遺族厚生年金が受取れる条件は、夫と妻で差があります。
- 夫を亡くした妻の場合…何歳でも受取れる
(30歳未満なら5年間・30歳以上なら終身で受取れる)
- 妻を亡くした夫の場合…妻が亡くなったときに55歳以上でなければ受取れない
(受取れるのは60歳から)
また、子のない妻には40歳〜64歳の間に受取れる「中高齢寡婦加算」がありますが、子のない夫にはありません。
これを不公平とみて政府は、20代から50代の配偶者の遺族厚生年金を男女とも5年の有期給付にすることを検討しています。また、5年間の年金額を現行制度よりも増やすことや、40歳〜64歳の子のない妻が夫を亡くした場合に受取れる「中高齢寡婦加算」を廃止にすることも検討されています。これによって、夫は遺族厚生年金が受取れる人が増えますが、妻は終身で受取れなくなってしまう可能性があります。
もっとも、急に制度が変わってしまったら、不利益を被る人も出てくるでしょう。そこで、妻の受給期間の短縮は段階的に行うことや、すでに遺族厚生年金を受け取っている人は制度改正の対象外とすることといった配慮も同時に検討されています。今後どのような改正が行われるか、注目されています。
遺族年金の手続き先は?
お近くの年金事務所または街角の年金相談センター
遺族年金の請求時に提出する書類は?
- 年金請求書
- 基礎年金番号通知書
- 戸籍謄本(記載事項証明書)
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票
- 請求者の収入が確認できる書類
- 子の収入が確認できる書類
- 市区町村長に提出した死亡診断書のコピー
- 受取先金融機関の通帳等(本人名義) など
※ 人によっては他にも必要な書類があるので、詳しくは年金事務所または街角の年金相談センターにご確認ください。
遺族年金の請求期限は?
亡くなった翌日から5年以内
親族が亡くなった後に受取れるお金2:寡婦年金・死亡一時金
亡くなった方が自営業やフリーランスといった国民年金の第1号被保険者だった場合には、「寡婦年金」や「死亡一時金」が受取れる可能性があります。
寡婦年金
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)として、保険料納付済み期間が10年以上ある夫が65歳前に老齢基礎年金・障害基礎年金を受取らずに亡くなった場合に受取れる年金。亡くなった夫に生計を維持され、10年以上婚姻関係のあった妻が60歳から65歳になるまでの間受取ることができます。
寡婦年金の額は、亡くなった夫が受取れるはずだった老齢基礎年金額の4分の3です。
死亡一時金
国民年金の第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)としての期間が36月(3年)以上ある人が亡くなった場合に遺族が受取れる一時金です。死亡一時金の金額は12万円〜32万円で、保険料納付月数により変わります。
<死亡一時金の金額>
- 保険料納付月数36月以上180月未満 :120,000円
- 保険料納付月数180月以上240月未満:145,000円
- 保険料納付月数240月以上300月未満:170,000円
- 保険料納付月数300月以上360月未満:220,000円
- 保険料納付月数360月以上420月未満:270,000円
- 保険料納付月数420月以上 :320,000円
※ 死亡した月の前月までに付加保険料を36月以上納付していた場合は8,500円加算
なお、寡婦年金と死亡一時金は、どちらか片方しか受取れません。どちらが多いかを確認した上で手続きしましょう。
寡婦年金・死亡一時金の手続き先は?
- お住まいの市区町村の窓口
- お近くの年金事務所または街角の年金相談センター
寡婦年金・死亡一時金の請求時に提出する書類は?
【寡婦年金】
- 年金請求書
- 基礎年金番号通知書
- 戸籍謄本(記載事項証明書)
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票
- 請求者の収入が確認できる書類
- 受取先金融機関の通帳等(本人名義) など
【死亡一時金】
- 国民年金死亡一時金請求書
- 基礎年金番号通知書
- 戸籍謄本(記載事項証明書)
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票
- 受取先金融機関の通帳等(本人名義) など
※ 人によっては他にも必要な書類があるので、詳しくは窓口でご確認ください。
寡婦年金・死亡一時金の請求期限は?
寡婦年金…亡くなった翌日から5年以内
死亡一時金…亡くなった翌日から2年以内
親族が亡くなった後に受取れるお金3:未支給年金
未支給年金とは、亡くなった方が受取れるはずだった、まだ受取っていない年金のことです。年金は「後払い」で、たとえば10月15日に支給される年金は「8月分」「9月分」です。したがって、年金を受取っている人が亡くなったときは、タイミングによって1カ月分〜3カ月分の未支給年金が発生します。
また、未支給年金は年金を繰り下げ待機して受取っていない人が亡くなった場合も発生します。この場合、65歳以降に受取るはずだった未支給年金を遺族が受取れます。
ただし、未支給年金は繰り下げ受給の対象外。そのうえ、年金には5年の時効があります。たとえば、75歳まで繰り下げ待機した人が亡くなった場合、遺族が受取れる未支給年金は「亡くなった人が65歳から受取る予定の年金額×5年分」となります。
未支給年金の手続きは、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターに「未支給年金・未支払給付金請求書・死亡届(報告書)」を提出して行います。
未支給年金の手続き先は?
お近くの年金事務所または街角の年金相談センター
未支給年金の請求時に提出する書類は?
- 亡くなった方の年金証書
- 戸籍謄本(記載事項証明書)
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票
- 受取先金融機関の通帳等(本人名義) など
※ 人によっては他にも必要な書類があるので、詳しくは窓口でご確認ください。
未支給年金の請求期限は?
受給権者の年金の支払日の翌月の初日から5年
親族が亡くなった後に受取れるお金4:葬祭費・埋葬料(埋葬費)
葬祭や埋葬を行った人に対しては、亡くなった人が加入していた公的医療保険から給付金が支給されます。
葬祭費
国民健康保険や後期高齢者医療制度の被保険者が亡くなった場合には、葬祭を行った人(喪主)に「葬祭費」が支給されます。ただし、会社退職後3カ月以内に亡くなるなどして、他の健康保険からの給付が受けられる場合、重複して受取ることはできません。
葬祭費の金額は自治体によって異なりますが、東京23区は一律で7万円、その他の自治体でも3~7万円となっています。
埋葬料(埋葬費)
健康保険に加入している会社員などが亡くなったとき、亡くなった人に生計を維持されて、埋葬をする人には埋葬料(5万円)が支給されます。亡くなった人に生計を維持されていた人がいない場合は、実際に埋葬を行なった人(費用を支払った人)に埋葬費として実際にかかった費用が上限5万円の範囲内で支給されます。また、被扶養者を亡くした被保険者には家族埋葬料(5万円)が支給されます。
葬祭費・埋葬料(埋葬費)の手続き先は?
- 加入していた医療保険の社会保険事務所または健康保険組合
- 国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入していた場合は、市区町村の窓口
葬祭費・埋葬料(埋葬費)の請求時に提出する書類は?
- 支給申請書
- 亡くなった方の死亡届
- 保険証
- 印鑑
- 葬儀費用の領収書
- 受取先金融機関の通帳等(本人名義) など
※ 人によっては他にも必要な書類があるので、詳しくは窓口でご確認ください。
葬祭費・埋葬料(埋葬費)の請求期限は?
葬祭費…葬儀の翌日から2年
埋葬料…亡くなった翌日から2年
親族が亡くなった後に受取れるお金5:高額療養費制度・高額介護サービス費・介護保険料
高額療養費制度を利用すれば、毎月の医療費のうち限度額を超えた分は払い戻しが受けられます。また、高額介護サービス費も同様に、毎月の介護費用の合計額が負担限度額を超えた場合に払い戻しが受けられます。これらの払い戻し金額をもらわないまま亡くなった場合、相続人が受取ることができます。
高額療養費制度・高額介護サービス費の手続き先は?
- 加入していた医療保険の社会保険事務所または健康保険組合
- 国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入していた場合は、市区町村の窓口
高額療養費制度・高額介護サービス費の請求時に提出する書類は?
- 高額療養費支給申請書(または高額介護サービス費支給申請書)
- 医療費・介護サービスの領収書
- 戸籍謄本 など
※ 人によっては他にも必要な書類があるので、詳しくは窓口でご確認ください。
高額療養費制度・高額介護サービス費の請求期限は?
診療を受けた月・サービスを利用した月の翌月の初日から2年
また、介護保険の被保険者の資格は、死亡日の翌日になくなります(資格喪失日)。その後、
介護保険料は,資格喪失日の前月までを月割りで再計算します。この結果、介護保険料額が変更となった場合は,介護保険料変更通知書が届きます。
介護保険料が納めすぎとなった場合は、遺族または相続人が還付を受けることができます。この場合、還付に必要な書類が届くので、それに沿って手続きをしましょう。なお、反対に介護保険料が不足する場合は、遺族または相続人が不足分を納付する必要があります。
親族が亡くなった後届け出・手続きで受取れるお金を紹介してきました。大変なときではありますが、お金がかかるときでもあります。必要な手続きは漏れなく行い、受取れるお金は受取って活用し、生活を立て直していきましょう。
- ※ 本ページは2024年9月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
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