金投資はどうやってはじめる?おすすめの投資方法は?
執筆者:マネーコンサルタント | 頼藤 太希
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【この記事を読んでわかること】
- 金投資とは、貴金属の金(ゴールド)に投資する投資の方法
- 金は有事やインフレに強く、世界的な需要が大きい。金そのものに一定の価値があるため、資産価値がゼロになるとは考えにくい
- 金投資には「金地金」「金貨」「純金積立」「金投資信託」「金ETF」を利用する方法がある
三菱マテリアルのデータによると金価格は2000年あたりからずっと右肩上がりで上昇しており、2023年8月に1グラム=1万円を突破。以後も値上がりが続いていて、史上最高値を更新しています。ニュースでもしばしば報じられることから、金に投資してみたい人、金に注目している人も多いでしょう。今回は、金投資はどんなもので、どうはじめるのか、金投資の種類とおすすめの方法を解説します。
金投資とは何か?
金投資とは、文字どおり貴金属の金(ゴールド)に投資する方法です。詳しくは後述しますが、具体的には「金地金」「金貨」「純金積立」「金投資信託」「金ETF」といった方法で金に投資できます。
金というと、アクセサリーを連想する方が多いでしょう。スマホなどの身近な機器に使われていることをご存じの方もいるかもしれませんね。どちらにしても、「金には価値がある」というイメージを持っているのではないでしょうか。
実際、金の価値は昔も今も世界各国で認められています。そして、世界中で換金できることから、金は投資の対象として取引されてきたのです。わたしたちも、その金に投資することでお金を増やせる可能性があります。
なお、金投資には株の保有中にもらえる「配当」や、投資信託の保有中にもらえる「分配金」といったインカムゲインがありません。金投資では、金そのものの値上がり益(キャピタルゲイン)でしが利益が出せません。また、金を売却したあとの税金にもいくつかのパターンがあるため、注意が必要です。
金投資のメリットは?
金投資のメリットには、次のものがあります。
有事に強い
金は希少価値があるため、有事の際に買われる傾向にあります。近年は世界を揺るがす有事が多く発生しています。こんなとき、投資家は安全資産として金を買います。
たとえば株など、他の金融商品の価格が下がったとしても、金の価格は上昇する傾向のため資産が守れるのです。
三菱マテリアルのデータによると、2020年1月の金価格は1グラム=6,000円程度でした。しかし、その後かねてから続いている米中貿易摩擦や新型コロナの感染拡大により金の価格はじわじわと上昇していきます。2022年2月に発生したロシアのウクライナ侵攻では、それまで7,000円台だった金価格を8,000円台に急激に押し上げました。
さらに2023年は世界的なインフレや円安の影響(後述します)によって国内の金価格が上昇。2023年8月には1グラム=1万円の大台を突破しました。その後もイスラエル・パレスチナ問題などもあって金価格は一層上昇。2024年4月には一時1グラム=1万3,000円と、2020年1月の実に2倍以上に値上がりしたのです。このように、世界情勢が不安定になると、金価格は上昇する傾向にあります。
なお、日本円で購入する金価格には、為替レートも大きく関係してきます。世界の金価格の基準は、英ロンドン市場が1日2回「1トロイオンス=○ドル」という具合に公表しています(1トロイオンス=約31グラム)。日本国内の金価格は、この価格をそのときの為替レートで円換算して「1グラム=○円」と公表しています。
近年、為替レートは円安が続き、1ドル=160円を超える展開もありました。そのため、ロンドン市場の金価格が変わらなくても、円安によって金価格が上昇するのです。
インフレに強い
金はそのものに価値がある実物資産ですから、インフレによって値上がりする傾向があります。インフレとは、物の値段が上がり、お金の価値が下がることです。
日本でも近年、インフレが進んでいます。総務省によると、2023年の消費者物価指数は天候等による価格変動の大きい生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合」の指数で前年比+3.1%となっています。事実、買物の時に値上がりを肌で感じる機会も増えました。
インフレになると現金や預貯金の価値は目減りしてしまいますが、金価格はインフレに応じて上がる傾向があるため、インフレによる資産減を防げる可能性の高い資産の一つです。
世界で一定の需要がある
金は世界中で需要のある金属です。金は美しい輝きを放ち続けるため、指輪やネックレスなどの宝飾品に活用されています。そのうえ、加工しやすく錆びにくく熱や電気をよく通すため、スマホなどの電子部品としても利用されています。また、金に投資して富を蓄える役割も果たしています。加えて、金は自然の鉱物ですので、埋蔵量に限りがあります。したがって、金の価値がすぐになくなることは考えにくいでしょう。
金投資5つの方法
金への投資方法は、大きく分けて5つあります。簡単に紹介します。
<金投資5つの方法>
(株)Money&You作成
①金地金(きんじがね)
現物の金を購入する方法です。金地金は、貴金属商・宝石商・商社・デパートなどで購入できます。金地金のサイズには、5グラム、10グラム、20グラム、100グラム、500グラム、1キログラムなどの種類があります。購入時、500グラム未満の場合は「バーチャージ」と呼ばれる手数料がかかります。
自宅で現物を保有している分にはコストはかかりませんが、銀行の貸金庫などに預ける場合はその費用がコストになります。
②金貨
外国の政府が発行する金貨を購入する方法です。貴金属商・宝石商・商社・デパートなどで購入できます。一番小さな「10分の1オンス金貨」は3グラムほどなので、5グラムの金地金より安く購入可能。また、一番大きな「1オンス金貨」でも30グラム程度です。金地金同様、貸金庫を使う場合には保有コストが生じます。
③純金積立
毎月一定額ずつ金の現物に積立投資していく方法です。証券会社や貴金属商、銀行などで1,000円、3,000円といった少額からスタートできます。ひとたび設定すれば、あとは自動引落としにできるので手間もかかりません。
④金投資信託
金投資信託は、金価格への連動を目指して運用される投資信託です。金に連動する投資信託を購入すれば、金価格の値上がりに合わせて資産を増やせます。純金積立と同じように積立投資することもできます。ただし、金投資信託では保有中に「信託報酬」というコストがかかり、信託財産(投資信託が保有している資産)の中から日々差し引かれます。
⑤金ETF
ETFは「上場投資信託」といって、株式市場に上場している投資信託です。ETFは投資信託と違い、市場でリアルタイムに取引することができます。金ETFの価格も、投資信託と同じく金価格に連動するため、金の値上がりに合わせて資産を増やせます。金ETFの保有中には経費率と呼ばれる手数料が差し引かれます。多くは、投資信託の信託報酬より安く押さえられています。
金投資の注意点
金投資で注意したい点をいくつか挙げておきます。
利息や配当はつかない
金投資では、銀行預金の利息、株式の配当、投資信託の分配金といったインカムゲイン(資産を持っていることで得られる利益)はありません。金投資で得られる利益は、あくまで金価格の上昇による値上がり益(キャピタルゲイン)のみです。
紛失・盗難の可能性がある
金地金や金貨を購入すると、金の延べ棒やインゴット、金貨が手元にやってきます。見て楽しめるメリットはあるのですが、紛失・盗難の可能性もある点には注意が必要です。リスクをなくすために、銀行の貸金庫サービスなどに金地金・金貨を預ける方法もありますが、別途手数料がかかります。
手数料がかかる
金投資には何かと手数料がかかります。かかる手数料は、金投資の方法により異なります。
<金投資の購入価格と手数料>
(株)Money&You作成
金地金や金貨の購入時には、価格にスプレッドと呼ばれる手数料を上乗せした金額で購入するうえ、売買手数料もかかります。貸金庫を借りると、年2万円前後の手数料もかかります。
純金積立でもスプレッドがかかり、購入手数料もかかりますが、金地金や金貨よりは安くなっています。加えて金融機関によっては、年会費がかかる場合があります。
これらに比べると、金投資信託や金ETFの購入手数料は安いのですが、金投資信託や金ETFの場合は保有中にも手数料がかかります。
売却後の税金にも注意
金投資にかかる税金の課税方法には、分離課税と総合課税の2種類があります。
- 分離課税…他の所得と合計せず、個別に税額を計算する課税方法
→金投資信託・金ETF - 総合課税…給料など他の所得を合算して税額を計算する課税方法
→金地金・金貨・純金積立
分離課税の場合は、一律で20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%※2037年まで)の税金を支払います。株などの利益や損失と相殺して税金の負担を減らす「損益通算」もできます。
なお、新NISAで金投資信託や金ETFに投資すれば利益にかかる税金はゼロにできます。ただし、損失があったとしても損益通算はできません。
一方、総合課税の税率は、所得税が合計の所得によって5%〜45%の7段階に分かれます(住民税は一律10%)。したがって、仮に大きく利益が出た場合には、税金も高くなってしまう可能性があります。
また、会社員や公務員といった個人が金を売って得た利益は「譲渡所得」になります。譲渡所得は、所有期間が5年超か5年以内かで税金の取り扱いが変わります。
- 短期譲渡(所有期間5年以内)の課税所得
売却価格-(取得費+売却費用)-特別控除50万円 - 長期譲渡(所有期間5年超)の課税所得
{売却価格-(取得費+売却費用)-特別控除50万円}×1/2
保有期間5年を過ぎると長期譲渡の課税所得は短期譲渡の課税所得の半分となりますので、税金面では長期譲渡所得のほうが有利です。ただし、他の利益や損失と相殺して税金の負担を減らす「損益通算」はできないことに注意が必要です。
おすすめの投資方法は?
以上を踏まえると、おすすめの金投資は「純金積立」「金投資信託」「金ETF」です。
純金積立は1,000円と少額からスタートできますし、積み立てで購入することで価格変動のリスクを抑えることができます。
金投資信託と金ETFは利益がたくさん出た場合にも税率は一律ですし、株などの損益と損益通算できるのもメリットです。また、新NISAを活用すれば利益にかかる税金がゼロにできます。保管場所を気にする必要もありませんし、投資もしやすく、手数料の面でも割安です。
ただ、金にだけ投資すればいいわけではありません。このところの金価格の上昇は不安定な世界情勢を受けてのものですから、問題が解消されれば金価格が下がることも想定されます。
金投資は、あくまで資産全体の値下がりリスクを抑えるために行うのが基本戦略。株や投資信託などと組み合わせて投資しておくことが大切です。
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