ホーム>ためる・ふやす>新NISAで人気だから投資は危険…全世界株、米国株、高配当株ファンドの違いを徹底解説

新NISAで人気だから投資は危険…全世界株、米国株、高配当株ファンドの違いを徹底解説

【この記事を読んでわかること】

  • 運用期間10年で比較すると、トータルリターンは米国株式>高配当株>全世界株式の順に多い
  • 運用期間10年で比較すると、リスクは米国株式>全世界株式>高配当株の順に大きい
  • 市場の下落に比較的強いのは高配当株

2024年にスタートした新NISAを利用して投資をはじめた人も多いでしょう。ただ、上半期は順調に相場が上昇してきましたが、2024年8月にはじめての大暴落を経験しました。日銀の追加利上げに伴う円高加速に加えて、米国景気が後退する可能性が懸念されたのがその要因です。

このような暴落が起きたときに「人気だから」という理由で全世界株式・米国株式・高配当株といった投資信託に投資していると、資産が減っているのを見て慌ててしまうかもしれません。自分の大切なお金の投資先ですから、人気の商品でも、どのようなリスクがあるのかを押さえておきたいところです。

今回は、新NISAで投資できる投資信託で人気の「全世界株式インデックスファンド」「米国株式インデックスファンド」「高配当株ファンド」がそれぞれどんな商品なのか、どんなリスクがあるのかを紹介します。

全世界株式インデックスファンドとは?

全世界株式インデックスファンドは、全世界の株式市場に低コストで分散投資ができる便利な商品で、世界全体の経済成長の恩恵を受けながら、資産を増やす期待ができる投資信託です。

全世界株式インデックスファンドがベンチマーク(連動の目標)にする代表的な全世界株価指数には「MSCI All Country World Index」(以下MSCI ACWI)があります。MSCI ACWIに連動するインデックスファンドには「オルカン」の愛称で知られる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)[信託報酬:年0.05775%](2024年8月13日時点)があります。

MSCI ACWIは先進国23か国と新興国24か国の大型株で構成されており、世界株式市場の時価総額約85%をカバーしています。投資先の地域の約6割は米国、投資先の約9割が先進国です。各国の資産は各国の通貨で購入するため、通貨も全部で37に分散されています。

<MSCI ACWIの投資先の地域の割合>

MSCI ACWIの投資先の地域の割合

MSCI All Country World Indexのファクトシート(2024年7月末時点)より
(株)Money&You作成

また、MSCI ACWIの投資先の業種や組み入れ上位銘柄は次のようになっています。

<MSCI ACWIの投資先の業種・組み入れ上位10銘柄>

業種 割合
情報技術 24.91%
金融 16.12%
ヘルスケア 11.08%
資本財 10.58%
一般消費財 10.34%
通信サービス 7.56%
生活必需品 6.27%
エネルギー 4.36%
素材 4.04%
公益事業 2.61%
不動産 2.14%
組み入れ上位10銘柄 割合
アップル 4.35%
マイクロソフト 3.94%
エヌビディア 3.91%
アマゾン 2.34%
メタ(クラスA) 1.39%
アルファベット(クラスA) 1.35%
アルファベット(クラスC) 1.18%
ブロードコム 0.94%
台湾積体電路製造(TSMC) 0.94%
テスラ 0.89%

MSCI All Country World Indexのファクトシート(2024年7月末時点)より
(株)Money&You作成

一番多い業種は「情報技術」であり、組み入れ上位10銘柄にはアップル、マイクロソフト、エヌビディアといった有名な大企業が並びます。2024年7月末時点で、MSCI ACWIは2,757銘柄で構成されていますが、上位10銘柄だけで約20%を占めています。

<MSCI ACWIのトータルリターンとリスク>※ドルベース

トータルリターン
(年率)
リスク(年率)
3年 6.26% 16.78%
5年 11.57% 17.43%
10年 9.29% 14.82%

MSCI All Country World Indexのファクトシート(2024年7月末時点)より
(株)Money&You作成

トータルリターンは投資によって得られた収益率、リスクはリターンの変動幅の大きさを示します。MSCI ACWIの直近10年のトータルリターンは年率9.29%、リスクは年率14.82%です。

米国株式インデックスファンドとは?

米国株式インデックスファンドは、米国の株式市場に低コストで分散投資ができる商品です。
米国株式インデックスファンドがベンチマークにする米国株価指数にはいくつかあります。なかでも人気が高いのが「S&P500」。米国のニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック(NASDAQ)に上場する銘柄の中から、時価総額の大きな主要500社の時価総額をもとに算出される株価指数、米国株式市場の時価総額約80%をカバーしています。S&P500に組み込まれる銘柄の条件には「4四半期連続黒字維持」などがあります。
S&P500に連動するインデックスファンドには「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」[信託報酬:年0.09372%](2024年8月13日時点)などがあります。

S&P500の投資先の業種と組み入れ上位10銘柄は次のようになっています。

<S&P500の投資先の業種・組み入れ上位10銘柄>

業種 割合
情報技術 31.4%
金融 13.1%
ヘルスケア 11.9%
一般消費財 10.0%
通信サービス 8.9%
資本財 8.4%
生活必需品 5.8%
エネルギー 3.7%
素材 2.4%
公益事業 2.3%
不動産 2.2%
組み入れ上位10銘柄
アップル
マイクロソフト
エヌビディア
アマゾン
メタ(クラスA)
アルファベット(クラスA)
アルファベット(クラスC)
バークシャー・ハサウェイ(クラスB)
ブロードコム
テスラ

S&P500のファクトシート(2024年7月末時点)より
(株)Money&You作成

S&P500で一番多い業種は情報技術であり、MSCI ACWIよりも割合は6.5%ほど多くなっています。割合の違いこそ多少ありますが、全世界株とは業種の差はあまりないのも特徴です。組み入れ上位10銘柄もほぼ同じです。

<S&P500のトータルリターンとリスク>※ドルベース

トータルリターン
(年率)
リスク(年率)
3年 9.60% 17.84%
5年 15.00% 18.08%
10年 13.15% 15.29%

S&P500のファクトシート(2024年7月末時点)より
(株)Money&You作成

違いがあるのがS&P500のトータルリターンとリスクです。3年・5年・10年の期間で見ると、MSCI ACWIよりもS&P500のほうが年3〜4%ほどトータルリターンが高くなっています。それでいて、リスクは1%ほどしか変わっていません。

MSCI ACWIの場合、成長力の面で米国株式を下回る国の株式にも投資しているのに対し、S&P500は米国株式に100%投資しています。その結果がトータルリターンの差になっています。
この運用結果を見ると、過去10年では全世界株よりも米国株の方が良かったということになりますが、あくまでも過去の実績であり、今後も同様の動きをする保証はない点に注意が必要です。

高配当株ファンドとは?

配当利回りの高い高配当株にまとめて投資できるのが「高配当株ファンド」や「高配当ETFです。
高配当株ファンド・ETFで人気が高いのは、米国高配当株ETF「バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)」です。VYMは、大型株のうち配当利回りが市場平均を上回る銘柄で構成されています。

VYMの投資先の業種・組み入れ上位10銘柄は次の通りとなっています。

<VYMの投資先の業種・組み入れ上位10銘柄>

業種 割合
金融 20.5%
資本財 12.6%
ヘルスケア 11.8%
情報技術 11.1%
生活必需品 11.0%
エネルギー 10.4%
一般消費財 9.7%
公益事業 6.8%
電気通信 4.1%
素材 2.0%
組み入れ上位10銘柄 割合
ブロードコム 4.42%
JPモルガン・チェース 3.51%
エクソンモービル 3.13%
プロクター・アンド・ギャンブル 2.36%
ジョンソン・エンド・ジョンソン 2.14%
ホーム・デポ 2.07%
メルク・アンド・カンパニー 1.90%
アッヴィ 1.84%
ウォルマート 1.78%
バンク・オブ・アメリカ 1.64%

VYMのファクトシート(2024年7月末時点)より
(株)Money&You作成

全世界株式や米国株式と違い、一番多い業種は金融です。情報技術はそれほど多くありません。理由としては、情報技術の銘柄は、事業の成長に資金を投じるので、配当金はあまり出さない傾向にあるからです。
組み入れ銘柄上位を見ると、トップのブロードコムは半導体メーカー、JPモルガンは金融業、エクソンモービルはエネルギー、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やジョンソン・エンド・ジョンソンは生活用品という具合に、業種もさまざまですが、比較的景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄が多い印象です。

多くの高配当株ファンド・ETFは銘柄数を数十銘柄に絞っていますが、VYMは投資対象が非常に多いのが特徴です。VYMの銘柄数は2024年7月末時点で503銘柄と、S&P500と同じくらいになっています。

<VYMのトータルリターンとリスク>※ドルベース

トータルリターン
(年率)
リスク(年率)
3年 6.97% 15.83%
5年 10.30% 16.95%
10年 9.63% 14.25%

Morningstarのウェブサイトより作成

リスクは全世界株より低くなっています。その理由としては、優良な高配当株は下落相場でも安定的に配当を出す傾向があるので、値下がり局面になると投資家からの需要が大きくなります。そのため、相場全体の下落に強く、また下落から一足早く抜け出す傾向にあります。

VYMの分配金利回りは2024年8月6日時点で2.96%です。2019年8月以降の分配金利回りの推移は以下の通りです。

<VYMの分配金利回り(2019年8月〜)>

VYMの分配金利回り(2019年8月〜)

Seeking Alphaのデータより

2020年に急上昇しているのはコロナショックによる株価下落の影響です(分配金利回りは「株価下落=投資信託の基準価額の下落」によって上昇するため)。基本的には、3%前後で推移していることがわかります。

なお、高配当ファンドはETFだけでなく、投資信託でも低コストのものが数多くあります。投資信託を通じてVYMに投資する商品もあります。投資信託はETFと違って一定額ずつ少額から購入できるうえ、金額指定で積立投資がしやすいのがメリットです。

全世界株、米国株、高配当株のメリットやリスクは?

全世界株、米国株、高配当株のトータルリターン・リスクを比較してみましょう。

以下のETFを元に値動き、リターン、リスクを見ていきます。
【全世界株】バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)
【米国株】バンガードS&P 500 ETF(VOO)
【高配当株】バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)
のデータを比較しています。

なおVTの連動指数は「FTSE All Global Cap Index」ですが、「MSCI ACWI」とリスク・リターンで大きな差はないので、こちらで代替することにします。

<トータルリターン・リスクの比較表>※ドルベース(2024年8月6日時点)

VT(全世界株式) VOO(米国株式) VYM(米国高配当株)
トータルリターン
(年率)
3年 5.54% 9.54% 9.03%
5年 11.15% 14.95% 10.63%
10年 8.89% 13.11% 10.08%
リスク
(年率)
3年 17.03% 17.86% 15.66%
5年 17.79% 18.08% 16.86%
10年 15.02% 15.31% 14.22%

Morningstarのウェブサイトをもとに
(株)Money&You作成

10年で比較すると、トータルリターンは米国株式>高配当株>全世界株式の順に多くなっています。それに対し、リスクは米国株式>全世界株式>高配当株となっています。

<リターンの推移(直近10年・2014年8月1日=100)>

リターンの推移(直近10年・2014年8月1日=100)

Investing.comの情報をもとに(株)Money&You作成

過去10年のVT・VOO・VYMの値動きを表したグラフも見てみましょう。2014年8月1日を100として、そこからの値動きを表しています。

値動きの方向性はどれも似ているのですが、S&P500と連動するVOOが一番大きく上下していることがわかります。これは、リターンも高いものの、リスクも高いことを示しています。全世界株式や高配当株の値動きは控えめではありますが、総じて右肩上がりで堅調だったことがわかります。

値下がりするタイミングに注目すると、高配当株の値下がり幅が少ないことも読み取れます。2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻以後の値下がりは抑えられています。直近、2024年8月1日から6日の下落幅も、VYM・VTが3.8%なのに対しVYMは3.2%と、やや少なくなっています。

以上より、全世界株式・米国株式・高配当株の特徴・メリットとリスク・注意点をまとめました。

<特徴・メリットとリスクの比較表>

特徴・メリット リスク
全世界株式
  • 世界経済の成長の恩恵を得られる
  • 新興国の成長も取り込める
  • 世界分散することでリスク低減が図れる
  • 米国株の割合が6割を占める
  • 相応にリスクの高い商品
米国株式
  • 全世界株より運用成績が高い
  • 低成長の国には投資していない
  • 新興国の成長は米国市場で取り込める
  • 米国が今後もずっと好調とは限らない
  • 相応にリスクの高い商品
米国高配当株
  • 新NISAと相性がよい
  • 市場の下落に比較的強い
  • 分散投資でも値下がりするリスクはある
  • 元本払戻金(特別分配金)を出す可能性

(株)Money&You作成

「オルカン」のような全世界株式にするか、「S&P500」のような米国株式にするかは意見が分かれるところですが、相応にリスクの高い商品です。世界中に分散投資をしてリスクを下げ、負けない運用をするなら全世界株式、米国の成長が全世界株式を上回ると考えるならば米国株式が向いています。

高配当株は市場の下落に比較的強いのがメリットです。特に2024年8月に起きた暴落のように、相場全体の下落に合わせて値下がりした場合は、高配当の優良銘柄が買われるのが、値下がりしづらく、下がったとしてもいち早く値上がりする傾向にあります。
下落相場の間も定期的に分配金がもらえるのであれば、心の安定を得ながら市場の回復を待ちやすいですよね。
ただ「人気だから」という理由で投資するのではなく、それぞれの値動きや特徴を踏まえた上で、投資先を選びましょう。

  • 本ページは2024年9月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。

お申込みに際しては、以下の留意点を必ずご確認ください。

オススメ

新NISAの投資先「オルカン」だけで大丈夫?注意点・向いている人は?

頼藤 太希(よりふじ・たいき)

マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)など書籍90冊、著書累計160万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧twitter)→@yorifujitaiki

mmag_000414

ページトップ戻る