【新NISA】株安・円高の時に積立投資をはじめて大丈夫?
執筆者:マネーコンサルタント | 頼藤 太希
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【この記事を読んでわかること】
- 株安・円高であっても、積立投資を今すぐスタートして問題ない
- 為替レートの動向よりも「長期的に成長する資産」に投資することが重要
- 積立投資は「早くはじめて長く続ける」ことが大切
新NISAのスタートなどで投資に注目が集まるなか、「積立投資でお金を増やしたい」と考える人も多いことでしょう。しかし、いざ積立投資をはじめようというときに、株安や円高が進むのであれば、投資しない方がよさそうに感じてしまいます。
こんな状況でも、積立投資をはじめて大丈夫なのでしょうか。
2024年7月→9月で一気に株安・円高に
2024年の株価は、7月まで堅調でした。日本株の株価指数「日経平均株価」、米国株の株価指数「ダウ平均株価」「S&P500」などが軒並み史上最高値を更新しました。為替レートも34年ぶりに一時1ドル=160円を突破。その影響で、外国株式に投資する投資信託の多くも値上がりしました。
しかし、8月に入るとその状況が一変します。
<2024年の日経平均株価とドル円為替レート(1月〜9月)>
(株)Money&You作成
2024年8月2日と8月5日に、日経平均株価が大暴落しました。わずか2日間での約6,668円の下落は、1987年に起こった「ブラックマンデー」を超える過去最大の下げ幅だったと話題になりました。日銀がサプライズ的な追加利上げを実施したことで円高が加速。そこに米国景気が後退する可能性が懸念されたことで、株安・円高を招きました。
その後日経平均株価は割とすぐに「半値戻し」(株価が暴落前の半分程度まで回復すること)を見せているのですが、9月初旬には米国の株価下落を受けて日本株も下落。さらに9月27日の自民党総裁選で市場の予想に反して石破茂氏が勝利したことを受けて、9月30日の株価は「石破ショック」とも呼ばれる下落を見せました。
株安でも積立投資をはじめて大丈夫?
市場が不安定で、株安となれば、これから積立投資をはじめることに不安を覚える人もいるでしょう。しかし、結論から言うと、株安でも積立投資をはじめることには特に支障はないと思われます。なぜなら、これまで市場は、暴落や下落相場を乗り越えて成長してきたからです。
<日経平均株価の推移(1980年〜2024年9月)>
(株)Money&You作成
日経平均株価は、1989年末のバブル崩壊前につけた3万8,915円が長らく最高値でした。その後、バブル崩壊、震災、海外のショックなどを経験するたびに一時的に値下がりしましたが、やがて回復し、それまでの水準を超えて成長しています。
2024年にバブル崩壊前の最高値を更新し、2024年7月には一時4万2,000円を突破する展開もありました。直近は値下がりしていますが、これまでの歴史に照らせば、今後も暴落を乗り越えて成長していくでしょう。
米国株の株価指数「S&P500」でも同様です。
<S&P500の推移(1980年〜2024年9月)>
(株)Money&You作成
日経平均株価のような「バブル崩壊」こそありませんが、リーマンショックなどの値下がりからも回復し、右肩上がりで値上がりを続けています。
こうした長期のグラフを見ると、今の株安がそれほど大きなものでないこともわかるでしょう。「再び株価が上がり始めたら積立投資をはじめよう」と考える必要は必ずしもありません。今後の株式市場がどうなるかの予測はプロでも困難なものです。そのなかで、株高か株安かを短期的な目線で気にして投資をためらっていたら、株価上昇の恩恵はいつまでも受けられなくなってしまいますので、コツコツと投資ができる「積立投資」を早くスタートすることをおすすめします。
もちろん、投資先は「なんでもよい」わけではありません。投資する資産が長期的に成長する資産であるかどうかが重要です。
長期で成長する資産といえば、世界株式や米国株式などが投資候補になります。世界人口増大→経済拡大→企業業績拡大→株価上昇、という流れで、成長していくでしょう。
2024年の世界人口は80億人を超えています。国連「世界人口推計(2022年)」によると、2058年には100億人を突破すると推計されています。人口が増えれば、消費が増え、その消費を支えるために生産も増え、経済は拡大していきます。
また、国際通貨基金(IMF)が発表している「世界経済見通し」(2024年4月)では、2024年・2025年の経済成長率が2023年と同じく3.2%と予測されています。経済成長率は1980年以降、おおむね年3〜4%で推移してきています。
今後も、人口が増え経済活動がある限り、経済成長は続くと考えられるでしょう。
経済が成長すると、企業も成長します。これまでにない画期的な製品やサービス、長期的な問題を解決する製品やサービス、独自性のある製品やサービスなどが生み出されることで、企業の価値が高まります。そして株価は、企業の価値を反映して上昇していきます。
ですから、株価の短期的な増減は気にせず、早めに積立投資をはじめることをおすすめします。
円高でも積立投資をはじめて大丈夫?
株安と同様の理由で、円高であっても積立投資をはじめることには特に支障はないと思われます。投資先が長期的に成長する資産であれば、為替レートが円高でも円安でも大きな影響は受けにくいためです。事実、前述のS&P500は為替レートの変動があっても右肩上がりになっています。
積立投資では長期的に成長する資産に投資するかぎり、円高か円安かをあまり気にする必要はないかもしれませんが、新NISAで人気の全世界株や米国株のインデックスファンドに積立投資をするという観点でいえば、円高はある意味好都合かもしれません。
全世界株・米国株のインデックスファンドのように、外国の資産に投資する投資信託は、円を売ってドルなどの外貨を買い、その国の資産を購入します。そのため、為替レートが円安になる要因になります。今後も新NISAのつみたて投資枠で全世界株・米国株のインデックスファンドが買われ続けると、長期的には円安の要因の1つになります。
円高のときに外国の資産を購入して、円安になったときに売却すれば、為替レートの変動による利益(為替差益)が発生します。
たとえば、1ドル=140円のときに1万ドル分の米国株を買い、1ドル=160円のときに1万ドル分売却したら、その米国株が仮にまったく値動きしなかったとしても20万円の利益が生まれる計算です(手数料や税金は考慮していません)。
日本経済新聞の記事によると、2024年1月〜6月までの海外の株式・ファンドの買い越し額は6.1兆円。これはすでに2023年の1年間の規模(4.5兆円)を上回っています。月1兆円ペースで海外への投資が行われることで、為替レートは円安傾向になると考えられます。
また、貿易赤字、とりわけ「デジタル赤字」の影響も問題になっています。デジタル赤字とは、日本人や日本企業が海外企業のデジタルサービスを多く利用することで、国際収支におけるデジタル関連収支が赤字になることをいいます。海外企業のサービスを利用するために日本円で決済すると、海外企業はその日本円をドルなどの外貨に両替するため、円安になるのです。デジタル庁の資料によると2023年のデジタル赤字は約5.3兆円。今後も拡大するほどに円安圧力は続くと予想されます。
さらには、金利の低い円を借りて金利の高いドルを買って運用する「円キャリートレード」の影響もあります。円キャリートレードが増えると、円安ドル高が進みやすくなります。
為替レートが今後どうなるかの予想は、誰にもできません。ですから、為替レートの上下をあまり気にせず、長期的に積立投資をすることをおすすめします。
大切なのは、早くはじめて長く保有すること
積立投資には「タイミング」をあまり気にする必要はないと考えられます。株価水準や為替レートをあまり気にせず、将来成長する可能性が高い資産へコツコツ投資をすることで、堅実にお金を増やす期待ができます。
積立投資は、長く続けることが重要です。そして、長く続けるにはなるべく早くはじめることが必要です。
金融庁の「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」では、1989年以降の期間で資産や地域を分散した積立投資を20年間続けた場合、平均収益率が年2〜8%に収まり、元本割れを起こしていないことが紹介されています。
また、投資の名著とされる『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著/日本経済新聞)では、1950年〜2020年の期間において、広く分散された株価指数の一例として、「S&P500」に長期間の積立投資をすることで市場平均を上回る良好な投資成果が得られたという分析結果が紹介されています。あくまで一例としてS&P500が紹介されているだけですので、世界株価指数などでも同様の結果になるでしょう。
大切なのは、株価や為替レートの動向ではなく「早くはじめて長く保有すること」です。
積立投資では、株安や円高など投資のタイミングではなく、少々の値下がりに焦って売却するようなことのないように気を配り、じっくりとお金を増やしましょう。
- ※ 本ページは2024年11月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
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