生命保険料控除はいくら戻る?年末調整・確定申告で控除を最大活用!

2025.12.10

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「生命保険料控除」は、年末調整や確定申告で所得税を軽減できる重要な制度です。ところが生命保険料控除の1つである個人年金保険料控除は、老後資金対策に有効でありながら利用率が低いのをご存じでしょうか。本コラムでは、生命保険料控除の特徴や制度を確認し、上手に活用する方法をお伝えします。税負担の軽減と将来への備えを両立させましょう。

「生命保険料控除」とは?年末調整にどう関係する?

生命保険料控除とは、所得控除の1つです。控除とは一定の金額を差引くことを意味し、生命保険料控除は1年間に払込んだ生命保険料に応じた一定額を所得額から差引くことで、所得税と住民税の負担を軽くすることができます。

会社員や公務員などの給与所得者が生命保険料控除を受けるには、年末調整で申告する必要があります。申告の際は、給与所得者の保険料控除申告書に生命保険料控除証明書を添付する必要があります。生命保険料控除証明書は、加入している生命保険会社から届く書類です。もし紛失したり、見当たらなかったりした場合は、保険会社に問い合わせして再発行の依頼をしましょう。最近はマイナポータルでの取得や、生命保険会社で電子データでの発行も可能です。加入している生命保険会社に確認してみましょう。

そもそも年末調整とはどのようなものかご存じでしょうか。
給与所得者が毎月給与から天引きされている所得税額は、勤務先が前年度の所得などを元に概算で出した金額となります。勤務先が正確な所得税額が算出できるようになると、概算で算出した所得税額との差額を調整する必要があります。それが「年末調整」です。
一方、自営業者は年末調整がないため、所得税の確定申告の際に生命保険料控除証明書を提出し、生命保険料控除を受けることができます。

生命保険料控除に話を戻しましょう。
生命保険料控除は制度改正により現在2つの制度が存在します。1つは2011年(平成23年)12月31日以前に締結した契約を対象とする制度(以下、旧制度)、もう1つは2012年(平成24年)1月1日以降に締結した契約を対象とする制度(以下、新制度)です。新契約には、2012年(平成24年)1月1日以降に更新、転換、特約の中途付加した契約も全体が新制度に含まれます。
なお、保険期間が5年未満の生命保険などの中には、控除の対象とならないものもありますので注意が必要です。

次に新制度と旧制度の違いを確認してみましょう。

生命保険料控除の新制度について

新制度では、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3種類の生命保険料控除が適用されます。

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一般生命保険料控除 生存や死亡に起因して一定額の保険金や給付金が支払われる保険(例:定期保険や終身保険など)
介護医療保険料控除 入院・通院等にともなう給付金が支払われる保険(例:医療保険やがん保険など)
個人年金保険料控除 以下の条件を満たし、個人年金保険料税制適格特約の付加された個人年金保険など
  • 年金受取人が契約者(保険料負担者)またはその配偶者のいずれかである
  • 年金受取人は被保険者と同一人である
  • 保険料払込み期間が10年以上であること(一時払いは不可)
  • 年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、かつ年金受取期間が10年以上ある

新制度と旧制度とは何が異なる?

旧制度では、一般生命保険料控除、個人年金保険料控除の2種類の生命保険料控除が適用されます。新制度になり、控除できる種類が増えたほか、以下のとおり、控除できる限度額の合計も引上げられました。
なお、介護医療保険料控除は新制度になって新設された控除で、旧制度では一般生命保険料控除の対象となっています。一方、個人年金保険料控除は新制度でも旧制度でも対象となる商品は同じです。

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制度 控除の種類 控除できる限度額
新制度
2012年(平成24年)
1月1日以降
  • 一般生命保険料控除
  • 介護医療保険料控除
  • 個人年金保険料控除
それぞれの控除額 3種類の合計
所得税:40,000円 120,000円
住民税:28,000円 70,000円
旧制度
2011年(平成23年)
12月31日以前
  • 一般生命保険料控除
  • 個人年金保険料控除
それぞれの控除額 2種類の合計
所得税:50,000円 100,000円
住民税:35,000円 70,000円

生命保険料控除でいくら戻ってくるの?

生命保険料控除額を確認した上で、生命保険料控除を活用するといくら戻ってくるのか、シミュレーションをしてみたいと思います。

生命保険料控除額の計算式

生命保険料控除は、所得税と住民税の両方に適用できる制度です。控除額は1年間の支払保険料を元に計算されます。税制適格特約の付加された個人年金保険以外、支払保険料はその年に支払った金額からその年に受けた割戻金を差引いた残りの金額になります。
新制度と旧制度の生命保険料控除の計算式は次のとおりです。

<新制度の生命保険料控除額計算式>

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所得税
年間の支払保険料など 控除額
20,000円以下 支払保険料などの全額
20,000円超~40,000円以下 支払保険料など×1/2+10,000円
40,000円超~80,000円以下 支払保険料など×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円
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住民税
年間の支払保険料など 控除額
12,000円以下 支払保険料などの全額
12,000円超~32,000円以下 支払保険料など×1/2+6,000円
32,000円超~56,000円以下 支払保険料など×1/4+14,000円
56,000円超 一律28,000円

<旧制度の生命保険料控除額計算式>

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所得税
年間の支払保険料など 控除額
25,000円以下 支払保険料などの全額
25,000円超~50,000円以下 支払保険料など×1/2+12,500円
50,000円超~100,000円以下 支払保険料など×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円
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住民税
年間の支払保険料など 控除額
15,000円以下 支払保険料などの全額
15,000円超~40,000円以下 支払保険料など×1/2+7,500円
40,000円超~70,000円以下 支払保険料など×1/4+17,500円
70,000円超 一律35,000円

生命保険料控除額をシミュレーション

生命保険料控除は新旧両制度を併用することが可能です。ただし、制度全体の適用限度額は所得税120,000円、住民税70,000円となっています。
なかには、自身が加入している保険が新旧どちらの制度なのか不明な方もいらっしゃるかもしれません。その際は保険会社に問い合わせをするか、もしくは毎年生命保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書で確認することが可能です。

実際の控除額を生命保険料控除額計算式に当てはめてシミュレーションしてみたいと思います。なおここでは、新旧の両方の契約に加入していることを前提に計算することにします。

一般生命保険料控除の対象となる保険に加入:年間払込み保険料は72,000円(新制度)
介護医療保険料控除の対象となる保険に加入:年間払込み保険料は60,000円(新制度)
個人年金保険料控除の対象となる保険に加入:年間払込み保険料は108,000円(旧制度)

<所得税の控除額>

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  新制度 旧制度
一般生命保険料 38,000円  
介護医療保険料 35,000円  
個人年金保険料   50,000円

控除額の合計は、38,000円+35,000円+50,000円=123,000円になりますが、3つの控除の合計適用限度額は120,000円となるため、控除額は120,000円です。

<住民税の控除額>

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  新制度 旧制度
一般生命保険料 28,000円  
介護医療保険料 28,000円  
個人年金保険料   35,000円

控除額の合計は28,000円+28,000円+35,000円=91,000円になりますが、3つの控除の合計適用限度額は70,000円となるため、控除額は70,000円です。

年末調整・確定申告で生命保険料控除を最大限活用するポイント

実は8割以上が活用していない「個人年金保険料控除」

3種類ある生命保険料控除は、フル活用することで、所得税120,000円、住民税70,000円の控除を受けられますが、実は個人年金保険料の控除を活用していないケースが8割以上に上るという実態もあるのです。
国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」で給与所得者数に占める生命保険料控除の適用割合を確認すると、個人年金保険料控除を適用している割合は約13.8%と、低いことがわかります。
なお、一般生命保険料控除は59.7%、介護医療保険料控除は49.9%と、いずれも給与所得者の約半数が適用させており、それらを鑑みると個人年金保険料控除の適用率の低さがおわかりになると思います。

給与所得者数に占める各生命保険料控除の割合(単位%)
給与所得者数に占める各生命保険料控除の割合(単位%)

個人年金保険はどんな保険?フルに控除をするといくら?

そもそも個人年金保険とはどのような保険なのかを確認してみましょう。
個人年金保険は、契約時に一定の年齢を決めて、その年齢に達すると年金を受取ることができる保険で、私的年金の1つです。保険会社が払込み保険料を運用し、一定の年齢に達すると払込み保険料より増えた状態で受取ることができます。
年金の受取り開始前に死亡した場合は死亡給付金を受取れますが、払込み保険料相当額になる場合のほか、商品によっては払った保険料の総額より少ない金額での受取りになる場合もあります。

個人年金保険イメージ図
個人年金保険イメージ図

ここで個人年金保険控除をフルに活用した場合、いくら税金の軽減があるのか確認してみたいと思います。

<例>

  • 給与所得者である世帯主
  • 年間80,000円超の保険料を支払い、新制度で生命保険料控除額を適用
  • この表は横にスクロールできます
家族構成 年収 軽減額合計
  • 所得税40,000円、住民税28,000万円の生命保険料控除を受けた場合(※1
①と②合計 所得税① 住民税②
単身世帯 400万円 4,800円 2,000円 2,800円
600万円 6,900円 4,100円
800万円 11,000円 8,200円
夫婦のみ世帯 600万円 6,900円 4,100円
800万円 11,000円 8,200円
1,000万円 11,000円 8,200円
夫婦と子ども2人 ※2 600万円 4,800円 2,000円
800万円 6,900円 4,100円
1,000万円 11,000円 8,200円
  • :所得税は復興特別所得税を含めて計算
  • :19歳以上23歳未満の大学生と16歳以上高校生

たとえば、夫婦のみの年収600万円の世帯の場合、所得税と住民税を合わせた税金の軽減額は6,900円になります。生命保険料控除をコツコツと毎年適用させることで、それなりの税負担の軽減が受けられることになります。税控除を受けながら将来年金も受取ることのできる個人年金保険は、安定的にお金を増やしたい方が資産形成する上での選択肢の1つとして考えてもよいでしょう。

なお、お金の運用面で考えると、個人年金保険のような保険商品以外に、iDeCoNISAといった税制優遇を活用して株式や投資信託などの投資商品で資産形成する方法もあります。ただし、iDeCoやNISAの活用は投資商品がメインとなるため、価格の変動を考慮する必要があります。ご自身に合った方法での資産形成していくのが望ましいので、迷ったらプロに相談しましょう。

まとめ

年末調整で生命保険料控除を適用させるには、控除証明書を確認し、漏れなく申告することが大切です。生命保険料控除は、契約時期によって「旧制度」と「新制度」が適用され、控除限度額や区分が異なります。新制度では控除上限が整理され、よりわかりやすくなりましたが、制度を正しく理解していないと控除を最大限に活用できません。特に個人年金保険料控除は老後資金づくりに有効であるにもかかわらず、利用者が少ないのが実情です。

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  • 本ページは2025年12月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性など内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。

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小沢 美奈子

ファイナンシャルプランナー

マネーライター。
家計および投資初心者の相談に実績あり。
大学卒業後、損害保険会社にて社員教育、研修講師などを経験。約12年間勤務後、外資系損害保険会社で営業に従事。会社員時代に取得したファイナンシャルプランナー資格を活かし2015年に事務所「KandBプランニング」を開業。
雑誌やWebのマネー記事執筆、セミナー講師、家計相談のほか、写真撮影も行う。趣味はカメラとバレエ。著著「本物の節約・残念な節約」(河出書房新社)

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