先週(9月8日週)はS&P500が1.59%上昇、ナスダック100も1.86%上昇

先週(9月8日週)の米国株式市場は堅調な推移を続け、S&P500は連日のように史上最高値を更新しました。週間ではS&P500が1.59%上昇、ナスダック100も1.86%の上昇と好調でした。さらに週明け9月15日(月)も上昇基調が続き、S&P500は0.47%高の6,615.28ポイントと再び史上最高値を塗り替えています。

市場を主導しているのは、生成AIをはじめとするAI需要の拡大を背景にしたテクノロジー関連株です。加えて、今週開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ決定への期待感も強まり、投資家心理を押し上げています。

このところの市場では、FOMCの決定に対する期待感が高まり、「利下げが確実」との予測が強く、年内にはさらなる利下げが織り込まれています。CMEのFedWatchによれば、9月のFOMCに続き、10月、12月、1月にも連続的な利下げが予想され、最終的には2026年末までに計6回の利下げが行われるとの予想がされています。

このような楽観的なシナリオは市場のセンチメントを強化していますが、利下げの実際の発表が市場の予想と一致した場合、「噂で買い、事実で売る」展開となる可能性もあるため、慎重な姿勢が求められます。

実体経済に関するデータは複雑なシグナルを送り続けています。8月の雇用統計は予想を下回り、米労働統計局のベンチマーク改定により、過去1年間の雇用増加が大幅に下方修正されました。一方で、消費者物価指数(CPI)は前年同月比+2.9%とインフレ圧力の根強さを示し、サービス価格の上昇が顕著でした。これにより、雇用の減速と物価の高止まりというFRB(米連邦準備制度理事会)にとって難しい局面が続いており、利下げ政策を続けるかどうかが焦点となります。

モメンタムの加速にテクノロジー株は強い、ヘルスケア株は厳しい展開に

AI関連需要の拡大が顕著

先週(9月8日週)の米国株市場を一言で表すならば、「モメンタムがモメンタムを呼ぶ」という表現がぴったりです。強気なテクニカル要因とセンチメント要因が重なり、強い上昇トレンドが続きました。特にテクノロジー株が市場をけん引し、AI関連需要の拡大が顕著でした。

オラクル[ORCL]は、クラウド受注残高の急増を発表し、その影響で株価は1日で36%も急騰しました。オラクルの時価総額は5,000億ドル超となり、AI関連投資熱の強さを象徴する動きとなりました。これを受け、先週9月10日(水)には、イーロン・マスク氏がオラクル元CEOのラリー・エリソン氏に一時的に資産規模で抜かれるというニュースが流れ、AI時代における富豪ランキングの変動も市場の関心を集めました。

CEOマスク氏による自社株購入や利下げ期待などによりテスラの株価は上昇

個人資産規模で1位の座を抜かれたイーロン・マスク氏がCEOのテスラ[TSLA]も注目されました。テスラは9月5日にイーロン・マスクCEOに対する新たな報酬パッケージを発表しました。この報酬パッケージは、株価・業績目標の達成を条件とするストックオプションを中心に構成され、経営者と株主の利害を強固に結びつけるものです。実際、マスク氏は2018年の類似プランを通じて株価を劇的に引き上げた実績があり、今回も「第二の株価上昇サイクル」をもたらすとの期待も高まっています。

このパッケージは、11月6日の株主総会で承認を求めることになります。また週明けの今週9月15日(月)には、マスクCEOが約10億ドル(約1,470億円)相当の自社株を購入したことが、同社の米証券取引委員会(SEC)への届け出文書で明らかになり、株価はこの日3.6%上昇しています。そして、利下げ期待による自動車販売の環境改善も加わり、先週1週間でテスラ株は12.9%上昇しました。

ヘルスケアセクターは、今後も政策の影響を受ける可能性

一方で、医療・ヘルスケア株は厳しい展開となりました。トランプ政権がコロナワクチンと子供の死亡事例を結びつける調査方針を示したことで、ワクチン関連銘柄であるモデルナ[MRNA]やファイザー[PFE]は急落し、ヘルスケアセクターの下落率がトップとなりました。このような政策リスクは、今後も断続的にマーケットに影響を与える可能性があり、中間選挙シーズンを迎える中で注目されています。

アップル[AAPL]がiPhone 17を発表するも株価は下落

先週9月9日(火)、アップル[AAPL]は新型iPhoneシリーズを発表しました。薄型デザインと新型プロセッサ「A19 Pro」を搭載したモデルで、従来機からの買い替え需要を狙ったものです。しかし、発表後の株価は1.5%下落し、1週間で2.35%の下落となりました。

AI分野での出遅れ感が意識されるアップルですが、iPhoneの刷新が奏功すれば、時価総額レースでの地位回復につながる可能性は高いと考えています。

今週(9月15日週)はFOMCと米国経済指標に注目

今週注目すべきイベントは、何と言ってもFOMC(米連邦公開市場委員会)です。市場は0.25%の利下げを織り込んでいますが、パウエルFRB議長が追加利下げの可能性をどのように示唆するかが注目されます。また、米国小売売上高や住宅着工件数などのマクロ経済指標も、景気の持続力を測る上で重要な役割を果たします。

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岡元 兵八郎

マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー

上智大学卒業後、ソロモン・ブラザーズ証券(現シティグループ証券)に入社。東京・ニューヨーク勤務を含め26年間、外国株式関連業務に従事。上級管理職として機関投資家向けにグローバル株式投資の拡大を推進し、世界54カ国の市場への投資を支援。SMBC日興証券では米国株の分析・資料作成を担当し、個人投資家向けにも情報を発信。北米滞在10年、訪問国80超、33カ国以上の証券取引所・企業訪問の経験を持つ。2019年より現職。著書に『日本人が知らない海外投資の儲け方』、『本当に資産を増やす米国株投資』など。

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