米国株はハイテク株を中心に調整色を強めるも、年末相場に向け上昇基調を取り戻す可能性が高いと予想

2025.11.18

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S&P500、ナスダック100ともに下落、長期化する政府閉鎖なども影響か

11月第1週(11月3日週)の米国株は、10月の急反発を経て投資家の買い意欲がやや後退した1週間となりました。S&P500は週間で1.63%下落し、ナスダック100は3.09%の下げとハイテク株中心に調整色を強めました。

株式市場全体に悲観が広がったわけではないものの、現在、アメリカでは歴史的に見ても異例なほど長期化した政府閉鎖が続いており、その影響は徐々に経済の実体部分に波及しつつあります。連邦政府職員の中には給与が支払われないまま勤務を強いられている者もおり、消費活動への影響が懸念されています。

また、航空管制官など重要な公共インフラ職員の不足により、全米の空港ではフライトの遅延やキャンセルが相次いでいます。こうした状況は経済のボトルネックを生み、サービス業や観光業など広範な分野に負の影響を及ぼす可能性があります。

また、11月4日(火)に行われたニューヨーク市長選、地方選挙(バージニア州、ニュージャージー州)での民主党の勝利を受け、一部ではこれを中間選挙に向けた共和党への警鐘と読む向きもあります。

投資家の買い意欲が鈍化している

S&P500は4月のトランプ関税ショック以降、一度も3%を超える調整を経験しておらず、息の長い上昇相場に初めてブレーキがかかった形です。

このAIをテーマとした市場の上値を抑えたのは、「ビッグ・ショート」で知られるマイケル・バーリー氏の行動です。2008年のサブプライム崩壊を見抜いた人物として伝説的な彼が、AIブームを牽引してきたパランティア・テクノロジーズ[PLTR]とエヌビディア[NVDA]の両銘柄に対して、プットポジションを構築していたことが判明しました。

報道が出た翌日、両社の株価はそろって売られ、AI関連株全体が調整に入り、先週(11月3日週)のナスダック下落の原因とも言えます。

もっとも、バーリー氏の戦略は直接的な空売りではなく、限定的なオプション取引によるリスクヘッジであり、市場全体の崩壊を見越したベア戦略とは異なります。

また、ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]の第3四半期決算では、手元資金が史上最高の3,800億ドル超に達したことが明らかにされました。株式や企業買収に踏み込まず現金を積み上げる姿勢は、相場の割高感を警戒するバフェット流の防御策と受け止められています。S&P500の2025年の予想PERは25倍にあり、バリュエーションに対する市場の無警戒をバフェット氏が暗黙に警告していると解釈する向きもあります。

11月のナスダック市場、無視できない「過去のパターン」とは?

11月のナスダック市場が売られていますが、興味深いデータがあります。

10月までにナスダック100指数は7ヶ月連続で上昇しました。1985年にこの指数が算出されて以来、7ヶ月以上連続で上昇したケースはこれまでにわずか5回しかなく、今回は6回目という極めて稀な事例となります。

過去5回のうち、翌月(8ヶ月目)も上昇したのは2回のみで、上昇確率は40%。平均リターンはマイナス0.31%、中央値ではマイナス2.45%の下落となっています。しかし、その後の3ヶ月間で見れば、5回のうち下落したのは1回だけで、下落確率は20%にとどまります。リターンは平均でプラス3.28%、中央値でプラス5.26%と、3ヶ月後には相場が回復・上昇している傾向が見て取れます。

つまり、仮に2025年11月にナスダックが下落しても、それは歴史的には特段珍しいことではなく、むしろその後の年末にかけて相場が高く終わる可能性の方が高いということです。

もちろん、統計は未来を保証するものではありませんが、過去のパターンを無視できるほど単純でもありません。短期的な調整を経て、年末相場に向けて再び上昇基調を取り戻す可能性が高いとみています。

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岡元 兵八郎

マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー

上智大学卒業後、ソロモン・ブラザーズ証券(現シティグループ証券)に入社。東京・ニューヨーク勤務を含め26年間、外国株式関連業務に従事。上級管理職として機関投資家向けにグローバル株式投資の拡大を推進し、世界54カ国の市場への投資を支援。SMBC日興証券では米国株の分析・資料作成を担当し、個人投資家向けにも情報を発信。北米滞在10年、訪問国80超、33カ国以上の証券取引所・企業訪問の経験を持つ。2019年より現職。著書に『日本人が知らない海外投資の儲け方』、『本当に資産を増やす米国株投資』など。

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