【日本株】年末相場を制する:1月効果と12月の買い場を読む

2025.12.8

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1月効果を意識した年末の投資準備

2026年のカウントダウンまではまだ1ヶ月ありますが、今回は新年の株式市場にまつわるアノマリーである「1月効果」を取り上げます。

「1月効果」とは、1月は他の月に比べて株価が上がりやすいという経験則を指します。では、なぜこの年末に向けた時期に1月効果をテーマとして取り上げるのかというと、その効果を十分に生かすためには、実際の投資行動を前倒しで準備しておくことが欠かせないからです。

というのも、12月自体にも株高になりやすい傾向があり、1月効果を取り込むための「仕込み場面」が12月に訪れるためです。そのため、12月のどのタイミングでポジションを構築するかが極めて重要なポイントになります。そこで今回は、1月効果を最大限に享受するために押さえておきたい、12月の投資タイミングについて詳しく解説していきます。

データで読み解く1月効果と12月の動き

まず、1月効果をデータで確認してみましょう。図表1は、月別の日経平均株価の勝率を示したものです。分析の対象期間は、第2次世界大戦後に東京証券取引所が再開した1949年以降から、直近でデータ取得が可能な2025年10月までの長期データを用いています。

12月(青色の棒グラフ)の勝率は63%となっています。分析期間中、12月相場は合計76回ありましたが、そのうち48回の12月で株価が上昇に転じています。勝率にすると48回÷76回=63%です。

月別の勝率を確認すると、9月以外はすべて50%を上回っており、長期にわたって株価が右肩上がりで推移してきた背景が読み取れます。そのなかでも最も勝率が高かった月が1月で、勝率は68%(赤色の棒グラフ)に達しています。7割近い確率で1月に株価が上昇してきたことは、まさに“1月効果”と呼ばれるゆえんです。

【図表1】月別の日経平均株価の騰落率

注1:データ期間は、1949年から2025年10月まで
注2:勝率はデータ期間の各月で上昇した年の割合

出所:日本経済新聞社のデータを基に、マネックス証券作成

1月に株価が上昇傾向となる2つの理由

外国人投資家の動向

では、1月に株価が上がりやすいとされる1月効果は、どのような要因によって生じるのでしょうか。諸説ありますが、その大きな理由の一つとして挙げられるのが、新春に向けて投資家の株式購入の姿勢が強まりやすい点です。

例えば、外国人投資家は前年12月のクリスマスシーズンになると長期休暇に入ります。多くの投資家は12月中旬から年末にかけて2週間ほど休暇を取り、旅行などプライベートの時間をゆっくり過ごします。しかし、休暇中に市場が急落すると対応が難しくリスクが高まるため、休暇に入る前に一度ポジションを軽くしてリスクを抑える動きを取ることが一般的です。そして新年になり市場に戻ってくると、再び株式の買いを入れ始めます。こうした投資行動が、年明けの相場を押し上げる原動力の一つになると考えられています。

12月の損益通算を目的とした売りに対して、1月は買い戻し傾向に

また、もうひとつ重要な要因として、2003年の税制改正により上場株式の売却益と損失を相殺できる「損益通算」が広く利用できるようになったことが挙げられます。

損益通算とは、株式の売却益に対して課される譲渡益税を、他の銘柄の売却損と差し引くことで税負担を軽減できる仕組みを指します。例えば、前年に株価が大きく上昇した銘柄を売却して利益が出た場合、その利益に税金がかかります。しかし2003年の改正以降は、同じ年のうちに含み損のある銘柄を売却して損失を確定させることで、その損失と利益を相殺することが可能になりました。

こうした損益通算を目的とした売りが年末にかけて増えることで、一部の銘柄は一時的に売られやすくなります。そして年が明けると、その反動として買い戻し(リバウンド)が入りやすくなり、これが1月の株価上昇につながるという見方が「1月効果」の主要因としてよく知られています。

サンタクロースラリーと12月投資の最適タイミングとは

12月25日のクリスマス以降の勝率は74%

そうなると、12月は外国人投資家のポジション手仕舞いや、損益通算のための売却売りから株式需給が悪く、下がる傾向があるのでは、と考えられますが、実際の12月相場の月別勝率は63%とどちらかと言えば、良い値です。

そこで12月を深堀してみてみましょう。実際には12月を「上旬」と「中旬以降」と更に「クリスマス以降」と期間を分けました。まず上旬となる月初から12月10日までについて、第2次世界大戦後に東証再開の1949年以降において勝率は53%とあまり高くありません。外国人投資家のクリスマス休暇前のポジション手仕舞い売りの影響も得に大きい可能性があります。

こうした相場の反動から12月11日以降で年末までの日経平均株価の勝率は66%と高い勝率となりました。そして特に注目したいのは、12月25日のクリスマス以降の勝率で、74%となっています。12月中旬も外国人のポジション解消の売りの影響もあると見られます。

また、損益通算に関しても、年内に受け渡し日ベースで損がでている銘柄を売却する必要があるのです。しかし、年末にかけて休暇に入る機関投資家も増えて商いが減る時期にはいると売りにくくなることから、クリスマスシーズン前に損益通算のための売却にはいります。このため、12月25日以降が特に高い効果が出るとみられます。

サンタクロースラリーから考える12月下旬の投資戦略、投資効率が高いのは何日か

実は、こうしたアノマリーはサンタクロースラリーと言われます。サンタクロースがクリスマスイブに投資家に株高というプレゼントを運んでくれるということにちなんでいます。実際にサンタクロースラリーを確認してみました。

図表2は毎年12月25日から年末までの日経平均株価の騰落率を示したものです。棒グラフのうち、プラスはサンタクロースラリーとなり株価が上昇した年ですが、全体で56回がプラスでした。つまり、成功率は74%と高水準です。

【図表2】日経平均株価で見たサンタクロースラリー

注1:データは1949年から2024年の12月25日から年末までの騰落率
注2:勝率は過去76年間の検証において、成功した年の割合

出所:日本経済新聞社のデータを基に、マネックス証券作成

サンタクロースラリーと1月効果を見据えた投資を考えましょう。投資タイミングは勝率が高かった中旬以降で、特に24日のイブの日に投資効率が高くなります。そのまま、年をまたいで1月効果をめいっぱい享受する戦略が妥当でしょう。

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吉野 貴晶

マネックス証券 チーフ・マーケット・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ 投資工学研究学長

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、国内系運用会社で投資工学開発センター長を経て、現職。社会人として歩みを始めて以来、一貫してクオンツ計量分析、データサイエンス、AI(人工知能)を活用した証券市場の分析に携わる。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)にて客員教授、学術フロンティア・センター特別研究員。経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。博士(システムズ・マネジメント)。日本ファイナンス学会理事、日本金融・証券計量・工学学会(JAFEE)理事。2025年9月より現職。

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