
災害発生時を例にみてみましょう。日本各地で大規模な地震や台風などの災害が発生すると、近年その被害は甚大になることが多く、被災地を救済するための寄付が全国で呼びかけられます。この時によく耳にするのが「支援金」と「義援金」です。
支援金とは、被災地で支援活動をする非営利団体(各自治体、NPO法人やNGO法人)に送られる寄付金のことです。私たちが選んだ団体に直接寄付をし、支援活動に役立ててもらいます。支援金の使いみちは各団体が決定できるので、医療、炊き出し、物資支援やインフラ整備などの復旧に速やかに活用されます。
また、熊本市の「熊本城災害復旧支援金」のように、被災自治体が自ら支援金を集めるケースもあります。
義援金とは、政府の窓口・自治体・日本赤十字社・中央共同募金会などが寄付を受け付けます。被災地となった自治体がホームページで募集したり、自分が住んでいる自治体が募集したりすることもあります。通常はいったん被災自治体に送られ、配分委員会によって公平・平等に被災者に配分されます。被災状況を把握してからの配分になるため、被災者の元に届くまでに時間がかかってしまいますが、被災者にとっては貴重な現金支援となります。
寄附金とは、国税庁ホームページによると「金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいいます」とあります。寄付金は支援金や義援金のようにはっきりとした定義はされていません。寄付先は国・地方自治体・政党・政治団体・非営利活動法人・学校法人・宗教法人などさまざまです。
災害時に募集される寄付金の中に「支援金」と「義援金」があり、先に述べたとおり、このふたつの目的は明確に異なっています。
コロナ禍で実際に寄付を行った、または検討したという方もいることでしょう。「新型コロナウィルス感染症対策等支援活動」を行う認定NPO法人等に対して寄付金を支出した場合には、支払った年分の所得控除として寄付金控除の適用、あるいは税額控除の適用を受けることができます。
所得控除 | (次のいずれかの低い金額)-2,000円=寄付金控除額 ア:その年に支出した寄付金の額の合計額 イ:その年の総所得金額の40%相当額 |
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税額控除 | (寄付金合計-2,000円)×40%=税額控除額 ※ 税額控除の対象となる寄付額の上限:所得税額の25% |
(国税庁ホームページを参考に作成)
所得額にもよりますが、「所得控除」か「税額控除」のいずれか有利な方を選択できますので、不明な点は確定申告時に税務署に問い合わせをしてみましょう。なお、控除を受けるには確定申告と領収書が必要になります。
相続や遺贈により取得した財産を、国や地方公共団体または特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄付した場合には、その財産や支出した金銭は相続税の対象とならない場合があります。
特定公益法人とは以下のような法人になります。ただし、寄付の時点で既に設立されているものに限られます。また、相続税の申告期限までに寄付することが必要です。
遺贈とは、遺言によって他人や特定の団体に財産の全部または一部を無償で提供することをいいます。この遺贈による寄付も相続税が非課税となる場合があります。世界の難民問題、自然災害の被災地支援や貧困問題などに取り組む活動を行う団体に寄付をすることで、相続対策だけでなく社会貢献活動の一端を担うことが可能になります。
一人暮らしで家族がいない方や子供のいない夫婦が、社会貢献活動を行う団体への遺贈を望むケースもあるようです。
遺贈を行うには、遺言書の作成や遺言を実現してくれるための遺言執行者を選択する必要があります。遺贈したい団体が決まったら、まずはそこに連絡をして遺贈が可能か否かの確認をし、可能であればこれらの手続きを進めていきます。そして弁護士や税理士など専門家の指導を受けながら遺贈の準備を進めていきます。
このように、「寄付」と一口にいってもさまざまな形がありますし、寄付を受け付けている団体も無数にあります。支援をしたい団体が見つかった際には、用途目的と合わせて節税効果がある寄付の方法を覚えておくのも良いでしょう。
小河 由紀子
ファイナンシャルプランナー(CFP)
独立系FPのためのプラットフォーム会社に所属。
「お金に振り回されず、自分の人生の舵取りは自ら行う」を提唱し、顧客がお金に対する不安や苦手意識を克服し、実践できる現実的なアドバイスを行っている。
FP Café登録パートナー。