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住宅ローンの借換えはタイミングが大事?借換え時の注意点について解説

【この記事を読んでわかること】

  • 住宅ローンの借換えには「諸費用がかかる」「金利変動リスクが生じる場合がある」「住宅ローン控除が受けられない場合がある」といったデメリットがある
  • 住宅ローンの借換えにも審査があるため、借換えができない場合もある
  • 「住宅ローンの残債期間が10年以上」「残高が1,000万円以上」「現在の金利と借換え後の金利差が0.3%以上ある」なら借換えのメリットが出る可能性がある

住宅ローンの借換えをすると、月々の返済額および総返済額を減らせる可能性があります。物価が上がり給料が上がりにくいご時世ですから、「住宅ローンをより有利なものに借換えたい」と考える方も多いことでしょう。
しかし、よく考えずに安易に住宅ローンの借換えをすると、後悔することになる可能性もあります。今回は、住宅ローンの借換えのデメリット・注意点と、借換えに適したタイミングについて紹介します。

住宅ローン借換えの3つのデメリット

住宅ローンの借換えとは、金利の高い住宅ローンから低い金利の住宅ローンにするなど、今よりも有利な条件で新たな住宅ローンに借換えることをいいます。これまでの住宅ローンの残債を新しい住宅ローンで借りたお金を使って一括返済し、以後は新しい住宅ローンの返済を行います。借換えによって、月々の返済額や総返済額が減らせれば、その分支出削減(手取りの増加)につながるのですから、うれしいですよね。

しかし、借換えには次のようなデメリットも存在します。

住宅ローン借換えのデメリット1:借換えには費用がかかる

住宅ローンの借換えは、単に残債の返済先の金融機関が変わるだけではありません。借換えるにあたっては、さまざまな費用がかかります。金融機関によってかかる費用の種類や金額は異なります。中でも大きいのは保証料と事務手数料です。

保証料は、住宅ローンを借りている人が返済できなくなってしまったときに、金融機関が住宅ローンの残高を保証会社に肩代わりしてもらうための費用です。住宅ローンの借換え先の銀行の保証会社に支払います。金融機関によっては、保証料がかからない(保証会社を利用していない)場合もあります。

事務手数料は、住宅ローンの借換えの手続きをしてもらうためにかかる費用です。借入金額に関わらず一定額かかる「定額型」と、借入金額の◯%という形でかかる「定率型」の2つがあります。

そのほかにも、次のような費用がかかります。

  • 団信保険料(団体信用生命保険の保険料)
  • 印紙税(住宅ローンの契約書に貼る印紙代)
  • 登録免許税(抵当権の抹消・設定にかかる費用)
  • 司法書士報酬(登記をしてもらうために払う報酬)
  • 火災保険料・地震保険料 など

これらの諸費用は住宅ローンに含めて借りることができる金融機関もあります。しかし、その分住宅ローンの借入金額が増えてしまうため、毎月返済額や総返済額が増えることには注意が必要です。借換えをするにあたっては、諸費用を含めた金額で考えてメリットが出るかを考える必要があります。

住宅ローン借換えのデメリット2:金利変動リスクが生じることがある

住宅ローンの借換えでは、固定金利から変動金利、変動金利から固定金利へと、金利の種類を変更できます。固定金利より変動金利のほうが低金利の場合が多く、固定金利から変動金利に変更すれば、借入金利は下がるでしょう。

ただし、固定金利を変動金利に変更すると、金利上昇による金利変動リスクが生じることになります。確かに、借換え時は金利が低く、返済額も減るかもしれません。しかし、あとになって金利が上昇した場合、月々の返済額や総返済額が増加してしまう可能性があります。

反対に、変動金利から固定金利に変更すれば、以後は金利が上昇しても金利変動リスクはなくなります。しかし、今後金利が上昇するかどうかは事前にはわかりません。金利が上昇することを見越して固定金利に変更したものの、いつまでも金利が上がらず、結果として変動金利のままでいたほうが月々の返済額や総返済額が少なくて済んだ…ということも、ないとはいえません。

また、当初一定期間の金利を固定する固定金利選択型の住宅ローンの場合、固定金利の期間(固定金利特約期間)には変動金利に変更できない場合があります。

住宅ローン借換えのデメリット3:住宅ローン控除の対象外になる可能性がある

住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高の0.7%(2022年以降に借りた住宅ローンの場合)にあたる金額を最大13年にわたって所得税・住民税から控除できる制度です。

住宅ローン控除の細かい内容についてはこちらの記事でご確認ください。

【2023年】住宅ローン控除(減税)は何が変わる?メリット・デメリット

住宅ローン控除は「税額控除」といって、税額を直接差し引くことができるメリットの大きな控除なのですが、住宅ローンの借換えによって住宅ローンの返済期間が短くなり、10年未満になってしまうと、住宅ローン控除の対象外となってしまいます。

なお、借換えをしても住宅ローン控除の適用期間は延長されません。あくまで「住み始めてから最大で13年」となることを押さえておきましょう。

住宅ローンの借換えができない?考えられる理由は?

住宅ローンの借換えによるデメリットをお話ししてきましたが、そもそも住宅ローンは必ずしも借換えができるとは限りません。次のような場合は、金融機関に借換えを申し込んでも断られてしまう可能性があります。

健康状態に問題がある

民間の住宅ローンを申し込むときには、団信への加入を義務付けています。(※フラット35を除く)これは、住宅ローンの借換え時も同じです。健康状態に問題があり団信に加入できない場合には、借換えもできなくなります。

収入が減ってしまった

住宅ローンの審査では、年収に占める年間の返済額を示す返済負担率がチェックされます。金融機関や家計の状況によっても異なりますが、一般的に返済負担率が年収の30%から35%を超えると審査に通りにくくなる傾向があるようです。同じローンを借りていても、収入が減れば返済負担率は高くなってしまいます。そのため、はじめに住宅ローンを借りたときよりも収入が減っていると借換えができない場合があります。

転職・独立した

住宅ローンの審査では、安定した収入があるかを調べるために、勤め先での勤続年数を審査項目のひとつに入れています。転職した直後では、勤続年数が少ないために、借換えが認められない場合があります。また、起業するなど独立した場合も同様で、収入が不安定だととらえられてしまう場合があります。個々のケースによっても異なりますが、少なくとも半年から3年程度の勤続年数(または、事業の実績)は必要でしょう。

物件の価値が落ちている

金融機関には、住宅ローンの返済が長く滞ったときに、物件を競売にかけて売却して、貸していた資金を回収する権利(抵当権)があります。しかし、物件の価値が落ちていて、物件を売却しても資金が回収できない可能性が高い場合は、融資を行わない可能性があります。

信用情報機関に延滞の情報などが記載された

住宅ローンだけでなく、カードローン、自動車ローン、公共料金などの他の支払いで延滞があり、信用情報機関にその情報が記録された場合は、借換えができなくなる可能性があります。債務整理などをしている場合も同様です。

住宅ローン借換えの2つの注意点

借換えの審査が通ったとしても、借換えの際には次のような点に注意しておきましょう。

住宅ローン借換えの注意点1:団信の内容が変わっている場合がある

団信の保障は通常、住宅ローンの返済をする人が亡くなったり高度障害状態になったりした場合に受けられます。この団信に、特約を追加することでより幅広い保障を受けることができます。たとえば、

  • がん保障特約(がん団信):所定のがんと診断されたときに保険金が支払われる特約
  • 3大疾病特約:がん、急性心筋梗塞、脳卒中の3大疾病へ罹り所定の状態になった場合に保険金が支払われる特約
  • 8大疾病特約:3大疾病特約に加えて高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性すい炎になった場合に保険金が支払われる特約

などそのほかにも様々な種類がありますが詳細な保障の内容や定義は保険会社ごとに異なるため、詳しくはお申込みの金融機関にお尋ねください。
特約を付加する場合、住宅ローンの金利に0.1%〜0.3%などと上乗せするケースがほとんどです。しかし、借換え時に金利だけ注目してしまい、借換え前はがん団信だったのに借換え後は亡くなったときと高度障害だけ保障される通常の団信になっていた…ということもないとはいえません。この場合、借換え後に所定のがんと診断されても団信の保障は受けられなくなってしまいます。金利や返済額だけではなく、団信の内容もチェックしておきましょう。

住宅ローン借換えの注意点2:返済額が増えてしまう場合もある

固定金利から変動金利に借換えをした場合は、金利が下がるため、借換え時の毎月の返済額を減らすことができるでしょう。しかし、反対に変動金利から固定金利に借換えをした場合は、金利が高くなるため、毎月の支払額や総返済額が増えてしまいます。確かに固定金利にすることで金利上昇リスクを避けることができますが、毎月の返済額が増えて生活が苦しくなってしまうようでは大変です。固定金利に変更する場合、毎月無理なく返済できるのかを検討しておきましょう。

なお、「変動金利で借りておいて、変動金利の金利が上昇してきたら固定金利に乗り換えればいい」と考える方もいるかもしれません。しかし、金利は一般的に、先に固定金利から上昇するものです。変動金利が上がるときには、すでに固定金利が上がってしまっているため、変動金利から固定金利への借換えで返済額を抑えることは難しいでしょう。

借換えのタイミングはいつ?

以上を踏まえて、借換えのタイミングをどうすればいいか、検討してみましょう。
借換えでメリットが出る目安として挙げられるのは、次の3つの条件です。

  • 住宅ローンの残債期間が10年以上
  • 住宅ローンの残高が1000万円以上
  • 現在の金利と借換え後の金利差が0.3%以上

③の金利差は、昔は「1.0%以上」と言われていましたが、今では「0.3%以上」でも借換えのメリットが出るようになっています。昔は高かった借換え時の諸費用が、ネット銀行などの台頭などにより安くなったのがその理由です。住宅ローンの残債期間・残高が多いと、十分に借換えのメリットを出すことができます。

また、金融機関によっては借換えのときに借換え前の住宅ローンよりも借入期間を延ばすことができるところもあります。借入期間が長くできると、金利の支払い期間が長くなるため総返済額は増えますが、毎月の返済額はその分抑えることができます。

月々の返済額の負担が大きい場合は、3つの条件を満たさなくても、金融機関に相談してみることをおすすめします。借換えや条件変更などによって、負担を減らすことができるかもしれません。

また、以下のようなタイミングでも住宅ローンの借換えを検討してみましょう。

固定金利の期間の終了後

固定金利選択型の住宅ローンの場合、固定金利の期間が終わり、変動金利に移行すると金利の優遇幅が減る場合があります。また、固定金利を再選択できる場合にも、手数料がかかるケースがあります。変動金利に移行するときには、住宅ローンの借換えをして負担を減らせないか、検討してみましょう。

健康状態が良いとき

もしも住宅ローンの借換えを検討していて、今は健康だというのであれば、健康診断に問題が出てきたり、入院・手術などをしたりする前に借換えをしましょう。団信に加入できなければ、借換えもできなくなってしまいます。

収入が下がる前

子育てや介護などで働き方が変わり、収入が下がることがあらかじめわかっているならば、その前に住宅ローンの借換えをしたほうがいいでしょう。借換えによって返済額を抑えることができれば、収入が下がった場合にも対応しやすくなります。

転職・独立する前

すでに転職することがわかっていたり、独立したりする予定があったりするなら、その前に住宅ローンの借換えの手続きをしておきましょう。金融機関は勤続年数がどのくらいか、収入が安定しているかをチェックしています。仕事が変わって、それらがリセットされる前に審査をしてもらったほうが通りやすくなります。

住宅ローンの借換えで大切なのは、金利や返済額だけではありません。タイミングによっては借換えができないこともありますし、借換えによってかえって不利になってしまったりすることがあることを紹介してきました。

しかし、住宅ローンを借換えると、金利を下げ、毎月の返済額や総返済額を抑えられる可能性があるのですから、ぜひ検討すべきことはどなたでも同じです。
まずは金融機関に相談してみることをおすすめします。

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頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計100万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。

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