届け出すれば免除される・もらえるお金の制度5選
執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|高山 一恵
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- 節約術
家計の状況が厳しくなったり、お金が必要になったりしたとき、頼りにしたいのが、暮らしを支えてくれる給付金の制度。ただし、これらのお金は、届け出をすることではじめて受け取ることができます。今回はそうした給付金を受け取れる公的制度のなかから役立つものを5つ選んで紹介します。
- 届け出すればもらえるお金の制度1:国民年金保険料の免除・猶予・追納
- 届け出すればもらえるお金の制度2:傷病手当金
- 届け出すればもらえるお金の制度3:高額医療費制度
- 届け出すればもらえるお金の制度4:遺族年金
- 届け出すればもらえるお金の制度5:年金受給の繰り上げ・繰り下げ(60代~)
- 忘れずに届け出しよう
届け出すればもらえるお金の制度1:国民年金保険料の免除・猶予・追納
日本に住む20歳以上60歳未満の方は、国民年金に加入し、保険料を支払う義務があります。しかし、経済的な理由で納付が難しい場合は、国民年金保険料の免除・猶予を受けることができます。免除・猶予には、主に次のような制度があります。
学生納付特例制度
20歳といえば、大学などに通っている学生もまだ多い時期です。学生なので保険料が納められない場合に利用できるのが学生納付特例制度。大学等に在学しており、所得が一定以下の場合、在学期間中の保険料の納付が猶予されます。納付猶予期間は、年金の受給資格期間に算入されます。
申請免除
本人・配偶者の所得が一定額以下、もしくは失業中などの理由で保険料が納められない場合、申請すれば納付が免除されます。申請免除には、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類があります。免除の割合によって本来の年金額より減額となりますが、免除申請することにより、保険料を納めなくても一定の年金額が保障されます。
産前産後期間の免除制度
フリーランスや個人事業主の方など、第1号被保険者の方が出産する場合、出産予定日または、出産日の属する月の前月から4カ月間(多胎妊娠の場合は出産予定日の3カ月前から6カ月間)国民年金保険料が免除されます。こちらは申請免除と違い、保険料を納めたとみなされるため、年金額は減少しません。
納付猶予特例
20 歳以上 50 歳未満で本人・配偶者の所得が一定額以下の場合、申請することで保険料の納付が猶予されます。
【ポイント】
国民年金保険料の猶予・免除を受けた場合、過去10年以内であれば保険料の追納が可能です(産前産後期間の免除では追納不要)。すべて追納すれば、本来の満額の年金を受け取れるようになりますので、ぜひ追納しましょう。なお、免除や猶予の申請をせず「未納」になっている保険料は、2年前までのものしか支払えません。
届け出すればもらえるお金の制度2:傷病手当金
傷病手当金は、健康保険に加入している方が病気やケガで働けずに会社を休んだ場合に受け取れるお金。条件を満たすと、通算1年6カ月にわたって、給与のおよそ3分の2の金額が受け取れます。仮に給与が月30万円ならば、毎月約20万円が受け取れる計算ですから、大きいですね。
傷病手当金は、うつ病も対象になります。全国健康保険協会「現金給付受給者状況調査報告(令和2年度)」によると、傷病手当金の傷病別の受給件数の割合のトップ3は「精神及び行動の障害」(32.72%)、「新生物」(17.72%)、「筋骨格系及び結合組織の疾患」(10.56%)となっています。とくに20代〜30代の若い世代は「精神及び行動の障害」、つまりうつ病などで傷病手当金を申請する割合が50%超と多くなっています。
【ポイント】
傷病手当金を受け取れる条件は
- 業務外の病気やケガで療養中
- 仕事に就くことができない
- 連続する3日間(待機期間)を含めて4日以上仕事を休む
(待機期間は傷病手当金が受け取れない) - 給与の支払いがない
(傷病手当金より少ない給与が支払われている場合は、差額が受け取れる)
を満たす場合となっています。
また、以前は同じ病気やケガで受け取る傷病手当金の支給期間が支給開始日から「最長1年6カ月」でしたが、2022年1月からは「通算1年6カ月」に変わりました。療養しながら働く方でもお金が受け取りやすくなっています。
届け出すればもらえるお金の制度3:高額医療費制度
高額療養費制度は、医療機関や薬局などで支払った医療費がひと月で上限額を超えたとき、その超えた分が支給される制度です。自己負担の上限額(自己負担限度額)は収入や年齢によって異なります。ただし、食費や差額ベッド代、先進医療などの保険適用外の費用は高額療養費の対象外です。
たとえば年収約370万円〜770万円で70歳未満の方の、ある月の医療費が100万円かかったとします。このとき、そもそも窓口で支払う医療費は3割負担の30万円です。ここからさらに高額療養費制度を利用すると、自己負担は8万7430円に。残りの約21万円は、およそ3カ月〜4カ月後に払い戻されます。
また、直近1年間で3回以上高額療養費の支給を受けている場合、4回目からは「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに減ります。
【ポイント】
高額療養費制度は医療費がかさんだときの強い味方ですが、後からお金が戻ってくるとはいえ、一時的にお金を立て替える必要があります。しかし事前に医療費が高額になることがわかっているなら、健康保険組合等に「限度額適用認定証」を申請して提示すれば、医療費の支払いがはじめから自己負担限度額で済みます。
届け出すればもらえるお金の制度4:遺族年金
遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入していた人が亡くなったとき、その人に生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。国民年金から受け取れる「遺族基礎年金」と厚生年金から受け取れる「遺族厚生年金」があります。いずれも、遺された家族の生活費をサポートするのに役立つ年金です。
【ポイント】
遺族基礎年金は、「子のある配偶者」または「子」のみが対象です(子は18歳になって最初の3月31日を迎えるまで。障害がある場合は20歳)。つまり、子のない配偶者は受け取ることができません。金額も一律で決まっており、「77万7,800円+子の加算額」です。子の加算は、1〜2人目は22万3,800円、3人目以降は7万4,600円です(以上金額は2022年度のもの)。
対して、遺族厚生年金が受け取れる人は、故人の「配偶者・子」「父母」「孫」「祖父母」といった優先順位があり、より順位の高い人が受け取ります。
夫、父母、祖父母は亡くなったときに55歳以上であることが条件。そのうえ、受給できるのは60歳からとなります。また、30歳未満の子のない妻は、5年間しか受給できません。
届け出すればもらえるお金の制度5:年金受給の繰り上げ・繰り下げ(60代~)
公的年金(国民年金・厚生年金)は原則として65歳から受け取ることができます。しかし、必ず65歳から受け取らなければならない、というわけではありません。公的年金は、60歳から75歳の間の希望する時期から受け取りをはじめることができます。
60歳〜64歳までに受け取ることを繰上げ受給、66歳〜75歳までに受け取ることを繰下げ受給といいます。繰上げ受給では、1カ月受給を早めるごとに受け取れる年金が65歳受給時より0.4%ずつ減り、60歳まで繰り上げると24%減額になります。それに対し、繰下げ受給では、1カ月受給を遅らせるごとに受け取れる年金が65歳受給時より0.7%ずつ増え、75歳まで繰り下げると84%増額になります。
なお、繰上げ受給は国民年金・厚生年金とも同時に行います。繰下げ受給は「国民年金だけ」「厚生年金だけ」と別々に行うこともできます。
【ポイント】
年金の繰上げ受給・繰下げ受給の制度は、2022年4月に改正されました。
- 繰上げ受給の減額率 0.5%→0.4%に縮小
- 繰下げ受給できる年齢 70歳まで→75歳に拡大
これによって、年金の受け取りの選択肢が増えます。
ひとつ忘れてはいけないのは、繰上げ受給にしても繰下げ受給にしても、一度年金を受給しはじめると、生涯その減額・増額が続くということ。安心した老後が送れるよう、計画を立てて受け取るようにしましょう。
忘れずに届け出しよう
お金のもらえる制度を5つ、紹介してきました。冒頭でも触れましたが、これらのお金は届け出をすることではじめて受け取れるものです。ですから、忘れたり、面倒くさがったりせず、確実に届け出をすることが大切です。
また今回紹介した他にも、お金がもらえる制度はたくさんあります。自分が利用できそうな制度はないかを確認して、使える制度はどんどん活用していきましょう。
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