子育て世帯の給付金一覧!私は対象?
執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|高山 一恵
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子育てには何かとお金がかかるもの。それを見越して国や自治体は子育て世帯に対して給付金を用意しています。ただ、給付金は申請しなければもらえませんので、まずは自分がどんなお金をもらえるのか知ること、そしてもれなく申請することが大切です。今回は、子育て世帯がもらえる主な給付金と、もらえる金額やもらえる条件を解説します。
「こども未来戦略方針」で子育て世帯への支援は増える?
日本の少子化問題は深刻です。厚生労働省によると、2022年の出生数は77万747人で、ピーク時の3分の1以下になっています。さらに、少子化によって人口減少も加速。日本の総人口は今後50年で8700万人程度にまで減る恐れがあります。少子化・人口減少に歯止めをかけなければ、経済は衰退すると考えられます。
2023年6月に政府が閣議決定した「こども未来戦略方針」は、こうした少子化・人口減少の状況を反転させようとするもの。大きく分けて、
①若い世代の所得を増やす
②社会全体の構造・意識を変える
③全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する
の3つを実現しようとしています。
国は今後3年をかけて年3兆円半ばの予算を投じ、「こども・子育て支援加速化プラン」(以下「加速化プラン」)に集中的に取り組む、としています。
加速化プランには、具体的には次のような内容が盛り込まれています。
こども未来戦略方針「加速化プラン」の主な内容
2024年度 | ・児童手当の拡充 (所得制限撤廃・支給延長・多子世帯への加算) |
---|---|
・住宅ローン(フラット35)の金利優遇 | |
・高等教育費の負担軽減 (奨学金制度の充実・授業料後払い制度の創設) |
|
こども誰でも通園制度(仮称)創設 | |
2025年度 | ・育休の推進 (男性育休の取得推進、育休の給付引き上げ) |
・時短勤務の給付制度を創設 | |
2026年度以降 | ・出産費用の保険適用 |
・自営業者の育児期間の国民年金保険料免除措置 | |
・短時間労働者の雇用保険の適用拡大 |
(株)Money&You作成
すでに決まっているもの、これから検討されるものなどさまざまあります。また、支援の内容や金額が不十分だとニュースやネットなどで話題になっているものもあります。しかし、その是非は別として、少なくとも子育て世帯への支援は増えるものと考えられます。
私の世帯は何がもらえる?給付金チャート
では実際、私たちが子育てする場合には、どんな給付金がもらえるのでしょうか。出産・育児でもらえる主な給付金と、その給付金の対象となる年収を簡単なチャートで紹介します。
出産・育児でもらえる給付金と年収チャート
(株)Money&You作成
出産時の妊婦健診の費用や、出産育児一時金・出産手当金については、年収の要件はないので、所定の手続きをすることで原則誰でももらえます。一方、育児に関する給付金の中には、年収の要件があるものがあります。年収が一定額を超えると、金額が少なくなったり、もらえなくなったりします。
このほか、自治体によって独自の支援を用意しているところもあります。たとえば、兵庫県明石市では高校3年生までの医療費の無料化、第2子以降の保育料の無料化、0歳児のいる家庭へのおむつや子育て用品のプレゼント、中学校の給食費の無償化などの支援が行われています。また千葉県流山市でも、共働き世帯のための送迎保育システムや育児支援、保育園を併設した子育て応援マンションの認定などを行い、子育てにやさしい街づくりを行なっています。
子育て世帯の給付金をチェック
それでは、子育て世帯がもらえる給付金をチェックしてみましょう。
出産・育児でもらえる給付金
助成制度名称 | 届先 | 対象・内容 |
---|---|---|
妊婦健診費用助成 | ・居住地の市区町村役場 市区町村で母子健康手帳を交付される際、一緒に交付される |
妊娠が順調かを調べる妊婦検診は標準14回程度受ける。1回5000円〜1万円かかる費用を自治体が助成。市区町村により助成内容は異なる |
出産育児一時金 | ・出産する医療機関 (直接支払制度) ・健康保険組合、市区町村 (受取代理制度) 出産後の申請も可能 |
妊娠85日以降の子ども1人につき50万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関の場合48万8000円)の支給。流産・死産などでも受け取れる |
出産手当金 | ・勤務先または健康保険組合 勤務先から「出産手当金支給申請書」をもらい、出産後に病院から証明書を受け取り申請 |
産休中に給料が減ったりなくなったりした際に受け取れる。出産予定日の前42日、出産後56日の計98日間、標準報酬日額の3分の2がもらえる |
児童手当 | ・居住地の市区町村役場 (公務員の場合は所属庁) |
中学校卒業までの子どもを養育している人に支給。原則0〜3歳未満月1万5000円、3歳〜15歳まで月1万円など。2・6・10月に4ヶ月分を受け取る |
児童扶養手当 | ・居住地の市区町村役場 | 子どもを育てるひとり親家庭に支給。金額は所得や子の人数で異なる。高校卒業までの間、子1人の場合最大月4万3070円、2人の場合最大+1万170円など |
子育て世帯生活支援特別給付金 | ・児童扶養手当受給者や令和4年の「子育て世帯生活支援特別給付金」を受け取った方は申請不要 直近で収入が減った世帯は自治体に申請 |
食費などの物価高騰の影響を受ける低所得の子育て世帯に支給。児童一人あたり一律で5万円もらえる |
育児休業給付金 | ・勤務先の所在地を管轄する公共職業安定所。勤務先を通じて、2ヶ月ごとに申請 | 育児休業を取得する父親、母親に支給。原則、子どもが1歳になる前日まで。支給額は休業から6ヶ月まで賃金の67%、6ヶ月以降は賃金の50% |
扶養控除 | ・年末調整や確定申告で申請 | 16歳以上の扶養親族がいる場合に受けられる控除。1人あたり38万円〜63万円所得を減らせる |
高等学校等就学支援金制度 | ・学校を通じて申請 | 返還不要の授業料支援。私立高校の場合年39万6000円、公立高校の場合年11万8800円がもらえる |
こどもエコすまい支援事業 | ・こどもエコすまい支援事業者を通じて申請 | 申請時18歳未満の子のいる子育て世帯または39歳未満の若者夫婦世帯。高い省エネ性能の家(ZEHレベル)を新築・購入すると100万円、リフォームだと最大60万円がもらえる |
(株)Money&You作成
妊婦健診費用助成
妊婦が出産までに妊婦健康診査を受診する回数は14回程度が望ましいとされています。そこで、安心して妊婦健康診査を受診できるよう、市区町村が健診費用を助成します。市区町村により金額は異なりますが、約10万円分の健診費用が無料になります。
出産育児一時金
出産するときに、健康保険からお金が受け取れる制度です。出産費用は50万円程度かかりますが、出産育児一時金を受け取ることで、その大部分をカバーできます。出産育児一時金は子ども1人につき50万円。産科医療補償制度に加入していない医療機関の場合、子ども1人につき48.8万円がもらえます。
出産手当金
出産のため会社を休んだときは、出産手当金が支給されます。産休中(産前の6週間(42日)と産後の8週間(56日)、合わせて98日)は、給料のおよそ3分の2が受け取れます。
児童手当
子育て世帯に、子育て支援や少子化対策などのために給付されるお金です。児童手当の金額は、
- 3歳未満:一律15,000円
- 3歳以上小学校修了前:10,000円(第3子以降は15,000円)
- 中学生:一律10,000円
となっています。
児童手当には「所得制限限度額」「所得上限限度額」があります。子どもを養育している人の所得が所得制限限度額以上になると、児童手当は一律で月額5,000円(特例給付)に減額されます。さらに、子どもを養育している人の所得が所得上限限度額以上になると、児童手当は支給されなくなります。
児童手当の所得制限限度額・所得上限限度額は、子どもを養育している人の扶養親族などの数によって変わります。
【児童手当の所得制限限度額・所得上限限度額】
扶養親族等の数 | ①所得制限限度額 | ②所得上限限度額 | ||
---|---|---|---|---|
所得制限限度額 | 収入額の目安 | 所得上限限度額 | 収入額の目安 | |
0人 | 622万円 | 833.3万円 | 858万円 | 1071万円 |
1人 | 660万円 | 875.6万円 | 896万円 | 1124万円 |
2人 | 698万円 | 917.8万円 | 934万円 | 1162万円 |
3人 | 736万円 | 960万円 | 972万円 | 1200万円 |
4人 | 774万円 | 1002万円 | 1010万円 | 1238万円 |
5人 | 812万円 | 1040万円 | 1048万円 | 1276万円 |
内閣府の資料より(株)Money&You作成
なお、児童手当は今後改正され、
- 所得制限が撤廃
- 支給期間が高校生まで延長
- 第3子以降の子どもには3万円が支給
となる予定です(2024年10月(2025年2月支給分)より)。
児童扶養手当・子育て世帯生活支援特別給付金
児童扶養手当は、父母が離婚したなどで、父子家庭・母子家庭となったひとり親世帯に支給されるお金です。児童扶養手当の金額は、ひとり親の所得によって「全額支給」と「一部支給」があります。全額支給の場合は、
- 児童1人:月額43,070円
- 児童2人目:月額10,170円加算
- 児童3人目以降:月額6,100円
となっています(2023年度)。一部支給の場合は、所得に応じて金額が減額されます。
児童扶養手当の対象となる所得制限限度額と年収の目安は、次のとおりです。
【児童扶養手当の所得制限限度額と年収の目安】
扶養人数 | 受給者(ひとり親) | 扶養義務者、孤児の養育者など | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
全部支給 | 一部支給 | |||||
所得制限限度額 | 年収の目安 | 所得制限限度額 | 年収の目安 | 所得制限限度額 | 年収の目安 | |
0人 | 49万円 | 122万円 | 192万円 | 311万円 | 236万円 | 372万円 |
1人 | 87万円 | 160万円 | 230万円 | 365万円 | 274万円 | 420万円 |
2人 | 125万円 | 215万円 | 268万円 | 412万円 | 312万円 | 467万円 |
3人 | 163万円 | 270万円 | 306万円 | 460万円 | 350万円 | 515万円 |
(株)Money&You作成
なお、児童扶養手当の対象になっている人は、子育て世帯生活支援特別給付金も受け取れます。子育て世帯生活支援特別給付金は、物価上昇などで家計が急変した低所得の子育て世帯に支給される給付金。児童一人あたり一律で5万円が支給されます。
育児休業給付金
産休が終わり、育休に入った会社員の方が受け取れるのが育児休業給付金です。育児休業給付金の金額は、
- 6カ月(180日目)まで:給料(休業開始時賃金日額×賃金日数)の67%
- 181日目以降:給料(休業開始時賃金日額×賃金日数)の50%
となっています。育休を1年間取ったという場合、金額が100万円以上になることも珍しくありません。
扶養控除
16歳以上の配偶者以外の子どもや親などを養っている場合に所得控除が受けられる制度です。控除される金額は扶養親族によって異なります。
- 一般の控除対象扶養親族 38万円
- 特定扶養親族 63万円
- 老人扶養親族(同居老親等) 58万円
- 老人扶養親族(同居老親等以外) 48万円
高校生の扶養親族は「一般の控除対象扶養親族」、大学生(厳密には、19歳以上23歳未満)は「特定扶養親族」に該当します。
高等学校等就学支援金制度
高等学校等就学支援金は、国が高校などの授業料を支援してくれる制度です。支給される年額は、通う高校が公立か私立かによって異なります。
- 公立高校:11万8800円
- 私立高校:39万6000円
ただし、高等学校等就学支援金には所得制限があります。たとえば、両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合、私立高校の39万6000円の支援が受けられる年収は590万円以下、公立高校の11万8800円の支援が受けられる年収は910万円以下となっています。
こどもエコすまい支援事業
こどもエコすまい支援事業は省エネ住宅を推進する事業です。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。生活で消費するエネルギーよりも生み出すエネルギーが上回る住宅)のような、高い省エネ基準を満たす住宅の購入・建築をすると一律で100万円、リフォーム工事をすると5万円から60万円の補助が受けられます。
対象となる世帯は、18歳未満の子を育てる子育て世帯または夫婦どちらかが39歳以下の若者夫婦世帯です。
以上、子育て世帯の給付金について、紹介してきました。給付金は、申請しないともらえませんので、自分が対象のものがあったら必ず申請するようにしましょう。