子ども・子育て支援金、いくら負担することになる?対象者は?
執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|高山 一恵
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【この記事を読んでわかること】
- 子ども・子育て支援金は少子化対策の「加速化プラン」の財源として徴収されるお金。2026年度から徴収がスタートする
- 子ども・子育て支援金は社会保険料に上乗せする形で支払う。金額は会社員で年収600万円の場合月1000円(2028年度)と試算されている
- 加速化プランによって少子化が解決するかは未知数
少子化対策を強化する改正子ども・子育て支援法などが2024年6月5日に可決、成立しました。この中で、2026年度より徴収が始まることが決まったのが「子ども・子育て支援金」です。今回は、子ども・子育て支援金がどんなお金なのか、負担の対象、いくら負担することになるのかを紹介します。
子ども・子育て支援金とは?
子ども・子育て支援金は、2028年度までに実施する少子化対策の「加速化プラン」の財源を調達するために新設された仕組みです。
ご存じのとおり、少子化はどんどん進んでいます。厚生労働省の発表によると、2023年の合計特殊出生率(1人の女性が一生のうちに産む子どもの数を表す指標)は1.20で、統計開始後もっとも低くなりました。東京にいたっては0.99で、1を下回っています。かねてから少子化は問題だと叫ばれていましたが、状況は悪化する一方です。それを食い止めようとする加速化プランのために、国民から広く子ども・子育て支援金を徴収しようとしているのです。
加速化プランの予算規模は3.6兆円です。このうち1.5兆円は既定予算の活用、1.1兆円は社会保障の歳出改革でまかない、残りの1兆円を子ども・子育て支援金でまかなうこととなっています。
子ども・子育て支援金は2026年度から段階的に徴収がスタート。初年度は6,000億円、2027年度は8,000億円、2028年度以降は1兆円が徴収される予定です。
子ども・子育て支援金を負担する人は?負担額はいくら?
子ども・子育て支援金は、社会保険料に上乗せして支払います。日本は国民皆保険で、すべての人が何らかの社会保険に加入していますので、それらの保険を通して負担することになります。
こども家庭庁によると、社会保険制度別の子ども・子育て支援金の目安となる金額は、次のようになっています。
<子ども・子育て支援金の金額試算(月額)>
こども家庭庁の資料(参照2024-06-12)をもとに(株)Money&You作成
全制度を通じた平均は月250円〜450円となっていますが、この金額は
- 会社員や公務員が加入する「被用者保険」(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合)
- 個人事業主やフリーランスが加入する「国民健康保険」
- 75歳以上の高齢者が加入する「後期高齢者医療制度」
のすべての加入者を合計した際の平均額です。
子どもなど実際には保険料の負担のない加入者を除いた「被保険者1人あたり」の保険料でみると、2028年度の会社員・公務員の負担は月平均800円、個人事業主・フリーランスなどの負担は月平均600円となることがわかります。会社員・公務員の場合は、労使折半が前提で同じ額を会社も支払うことになります。
また、こども家庭庁によると、会社員・公務員、個人事業主・フリーランスの年収別の支援金額の目安は次のようになっています。
<子ども・子育て支援金の年収別支援金額(月額)>
公務員・会社員
個人事業主・フリーランスなど
こども家庭庁の資料(参照2024-06-12)をもとに(株)Money&You作成
会社員・公務員で年収600万円の場合、2028年度には月約1,000円ですから、年間で1万2,000円の負担になります。年収が高ければ、さらに負担が増します。
また、個人事業主やフリーランスも、2028年度には年収800万円だと月額1,100円ですから、年1万3,200円の負担です。
政府は「歳出改革と賃上げで社会保障負担率の抑制の効果を生じさせ、その範囲内で制度を構築していくことにより、全体として実質的に負担は生じない」と説明し、子ども・子育て支援金による実質負担はゼロだと説明しています。しかし、野党は「実質的な増税だ」と反論しています。
なお、ここまで紹介した支援金の金額は、こども家庭庁が2021年度の総報酬から機械的に試算したもののため、実際の金額はまた変わる可能性があります。とはいえ、ひとつの参考になる金額とはいえるでしょう。
子ども・子育て支援金は何に使われる?
少子化対策の加速化プランには、具体的には次のようなことが挙げられています。
児童手当の拡充(2024年10月から実施)
児童手当の所得制限が撤廃されるうえ、これまで中学生までだった支給期間が高校生までに延長されます。また、第3子以降の支給額が月3万円に増額されます。
出産育児一時金の引き上げ(2023年から実施中)
出産育児一時金は1人あたり42万円でしたが、2023年4月からは50万円に引き上げられています。
出産・子育て応援交付金(2023年から実施中)
妊娠届を出したときに5万円相当、出生届を出したときに5万円相当(多胎のときは人数分)の「出産・子育て応援ギフト」がもらえます。また、妊娠中からさまざまな悩みや相談ができる伴走型相談支援が受けられます。
出産費用の保険適用(2026年度をめどに検討中)
出産費用は病気ではないとして保険適用の対象外となっていますが、2026年度をめどに保険の適用が検討されています。
フラット35の金利引き下げ(2024年2月から実施中)
子育て世帯への住宅支援として、フラット35の金利が優遇される「フラット35子育てプラス」があります。子どもの人数に応じて金利が引き下げられます(最大年−1.0%)
修士段階の授業料後払い制度の導入(2024年度から実施)
大学などの高等教育の負担軽減のために、修士段階の授業料後払い制度を導入。また貸与型奨学金の返還の柔軟化も検討されています。
こども誰でも通園制度(仮称)の創設(2024年から試行的事業を実施)
保育園や幼稚園などに通っていない子どもが、親の就労要件を問わず月一定時間、保育施設へ通える制度が創設されます。2024年から試験的に実施され、2026年4月からは全国で開始する方針です。
育児休業給付金の給付率を手取り10割相当に(2025年度からの実施を目指す)
育休取得時に受給できる育児休業給付金の給付率は育児休業開始から180日目までは休業開始前の賃金の67%、181日目からは50%ですが、両親が14日以上育休を取得した場合は休業開始前の賃金の80%程度に引き上げる方針です。これにより、現行は手取りで8割相当になっている育児休業給付金が手取り10割で受け取れるようになります。
子ども・子育て支援金がこれらに活用されることで、子育て世帯は恩恵が受けられます。実際、こども家庭庁の試算によると、子どもが18歳までに受けられる給付が1人あたり平均でおよそ146万円増えるとみられています。たとえば児童手当ひとつとっても、単純に高校生までもらえるようになることで、36万円もらえる金額が増えます。それで助かる家庭もあるでしょう。
しかし、冒頭でも触れたとおり、長年問題視されている少子化は食い止められるどころか、どんどん加速しています。そもそも、これらの仕組みが少子化対策になっているのかを見直し、実効性のある対策ができているかを考えること、そして抜本的な改革を行うことが必要ではないでしょうか。
- ※ 本ページは2024年6月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。