年収800万円共働き世帯、住宅ローンいくらまで借りられる?無理のない返済額は?
執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|高山 一恵
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【この記事を読んでわかること】
- イオン銀行の「住宅ローン新規お借入れシミュレーション」によると、年収800万円共働き世帯は6,450万円まで住宅ローンが借りられる可能性がある
- 住宅ローンの借入可能額と無理のない返済額は異なる
- 住宅ローンの理想の返済比率は20%。都市近郊でも25%以内におさめる
あこがれのマイホームを購入するときには、多くの人が住宅ローンを利用します。でも、そんなときに気になるのは「自分はいくらまで借りられるの?」ということ。返済をしながらちゃんと生活していけるのか、不安になる方も多いでしょう。今回は、年収800万円の共働き世帯を例に、住宅ローンがいくらまで借りられるのか、無理のない返済額はどのくらいかをご紹介。住宅ローンの借入れ前に知っておきたいポイントを解説します。
年収800万円共働き世帯はいくらまで借りられるか?
住宅を買うときには、住宅購入価格の一部を頭金で支払い、残りの部分は住宅ローンを借りて支払うのが一般的です。もっとも、誰でもいくらでも住宅ローンを借りられるわけではありません。住宅ローンを借りるには、金融機関による住宅ローンの審査を通過する必要があります。
住宅ローンの審査で確認される内容には、
- 年収
- 勤務先や勤続年数
- 年齢
- 健康状態
- 他の借入れの有無
- 家族構成
などがあります。これらを踏まえて、住宅ローンを貸し出すかどうか、いくらまで貸すかを決めているというわけです。
なかでも年収はよくチェックされます。金融機関は何千万円というお金を個人に貸し出すのですから、途中で「返せなくなった」では困ってしまいますよね。年収が高ければ、返せなくなる事態が起こりにくいと考えられるため、一般には年収が高いほど住宅ローンの借入可能額は多くなります。
イオン銀行の「住宅ローン新規お借入れシミュレーション」を利用して、次のような世帯の借入可能額の目安を計算してみましょう。
【条件】
- 年収800万円、共働き世帯
- 夫の年収500万円
- 妻の年収300万円
夫の収入での借入可能額(年収500万円 返済期間35年):3,020万円〜4,030万円
妻の収入を含める(収入合算)場合の借入可能額(世帯年収800万円 返済期間35年):4,840万円〜6,450万円
なお、実際の借入可能額は審査によって決まるため、「年収500万円・800万円なら必ずこの金額が借りられる」というものではありません。
注目したいのが、年収に占める住宅ローン返済額の割合を示す返済比率(返済負担率)の割合です。住宅ローンの返済比率は「住宅ローン年間返済額÷年収×100」で求めることができます。金融機関によって異なりますが、住宅ローンの審査が通る一般的な返済比率の上限は30~40%程度となっています。
たとえば、年収800万円で6,450万円を借りた場合の年間の返済額をイオン銀行の「住宅ローン新規お借入れシミュレーション」で計算(変動金利0.38%・返済期間35年・ボーナス払いなし・手数料定率型)したところ、196万8,408円となりました。196万8,408円を年収800万円で割って求められる返済比率は約24.6%です。
借入可能額と無理のない返済額は異なる
こうお話しすると「自分の年収ならば意外といい家が買えるのでは?」と思われるかもしれません。しかし、借入可能額が高いからといって住宅ローンをたくさん借りてしまうと、返済が苦しくなる可能性があります。なぜなら、返済比率はあくまで「額面」の年収で計算しているからです。実際には、住宅ローンは毎月の給与から税金や社会保険料を差し引いた残りの「手取り」から返済しなくてはなりません。一般的に税金や社会保険料は、額面金額の20%程度です。
額面の年収が夫婦合計800万円だとして、ここから税金や社会保険料が合計20%引かれたとします。この場合、手取りは640万円です。上で紹介したシミュレーションから「手取りベースでの返済比率」を計算すると、196万8,408円÷640万円=約30.8%と、6%ほど上昇します。その分、毎月の手取りに占める住宅ローンの負担が大きくなる、というわけです。
もし額面年収の30%〜35%もの住宅ローンを組んでしまうと、毎月の返済額は手取りの40%を超えてしまう場合もあるでしょう。これでは、生活が苦しくなるのは目に見えています。
また、今回は妻の年収を織り込んで「年収800万円」としましたが、夫婦の収入を合算して住宅ローンを申込むかどうかは慎重に検討したほうがよいでしょう。夫婦どちらかがケガや病気をして収入が減ってしまえば、一気に返済が苦しくなる可能性があるからです。
つまり、住宅ローンの借入額を決める際には「借りられる金額と返せる金額は違う」ことを念頭に置く必要がある、というわけです。
理想的な住宅ローンの返済比率は?返済比率を下げるにはどうする?
借りられる金額と返せる金額は違うことを念頭に置くと、返済比率は20%以内に抑えるのが理想です。返済比率20%の借入可能額を年収別にまとめると、次のようになります。
年収別「返済比率20%」の借入可能額
- 年収300万円:年間返済額60万円(月5.0万円)
- 年収400万円:年間返済額80万円(月6.7万円)
- 年収500万円:年間返済額100万円(月8.3万円)
- 年収600万円:年間返済額120万円(月10.0万円)
- 年収700万円:年間返済額140万円(月11.7万円)
- 年収800万円:年間返済額160万円(月13.3万円)
- 年収900万円:年間返済額180万円(月15万円)
- 年収1000万円:年間返済額200万円(月16.7万円)
イオン銀行の「住宅ローン新規お借入れシミュレーション」によると、年収800万円で毎月13.3万円ずつ住宅ローンが返済できる場合の借入金額の目安は3,790万円(借入期間35年の場合)ですから、年収の5倍に少し届かない程度です。
もっとも、物件の価格は地域により異なります。都市近郊の住宅を購入する場合、返済比率20%が基準だと希望の物件が購入できないかもしれません。この場合は、返済比率を年収の25%程度まで上げてもよいでしょう。地域の事情を考慮しても家計を圧迫しないラインで考えると、返済比率は25%以内に抑えたいところです。
年収別「返済比率25%」の借入可能額
- 年収300万円:年間返済額75万円(月6.25万円)
- 年収400万円:年間返済額100万円(月8.3万円)
- 年収500万円:年間返済額125万円(月10.4万円)
- 年収600万円:年間返済額150万円(月12.5万円)
- 年収700万円:年間返済額175万円(月14.6万円)
- 年収800万円:年間返済額200万円(月16.7万円)
- 年収900万円:年間返済額225万円(月18.8万円)
- 年収1000万円:年間返済額250万円(月20.8万円)
返済比率を下げたいならば、年収を上げればいいのですが、このご時世そう簡単に年収が上がるものでもありません。むしろ住宅ローンの負担を減らすことを考えましょう。頭金を用意できればその分住宅ローンの借入金額が減らせるため、返済比率が下がります。また、物件価格を見直して、もう少し安いところに住むようにするのも一案です。
住宅ローンは無理のない返済計画で借りよう
金融機関によっても異なりますが、住宅ローンの審査が通る返済比率はおおむね30%〜40%となっています。年収800万円なら、計算上は年間返済額240万円〜320万円まで借りられる可能性があります。
しかし、返済比率は額面の年収をもとにしているため、実際に返済比率30%〜40%で住宅ローンを借りると、その後の返済や生活に支障が出てきてしまいます。
ですから、理想は返済比率20%、都市近郊でも25%までにおさめて、無理のない返済計画で借りるようにしましょう。借入額が高いようなら頭金の準備や物件価格の見直しを。また老後の収入減を考えると、完済時の年齢も65歳以下になるように調整することが望ましいですね。
借りられる金額と返せる金額は違うということを念頭に、年収が高いからといってたくさん借りるのではなく、家計を圧迫しないようにしながら住宅ローンを利用しましょう。
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