事実婚とは?手続き・税金・相続からメリット・デメリットまで徹底解説!

2025.11.21

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【この記事を読んでわかること】

  • 事実婚とは、婚姻届を提出せずに夫婦としての関係を築く形態。戸籍上は独身のまま、生活実態や社会的認識において夫婦とみなされる
  • 事実婚と認められるには、継続的な共同生活を送っていることや、お互いを夫婦として認識していること、経済的な協力関係があることなどが必要
  • 住民票の続柄欄に「未届の妻(夫)」と記載してもらうなど書類の準備をしておくと、年金や保険の手続きがスムーズになる

「結婚」という形に縛られず、パートナーとの生活を続けたいと思ったことはありませんか?近年では、「事実婚」という選択肢が注目を集めています。これは、法律上の婚姻届を提出せずに夫婦のような関係性を築くライフスタイルです。特に同棲生活が長いカップルや、結婚に踏み切れない事情を抱える方々にとって、事実婚は新しい可能性を提供します。
本コラムでは、事実婚の基本的な定義や手続き方法、さらにはそのメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。事実婚を考える際の参考としてご覧ください。

「事実婚」の定義とは?法律婚との違い

事実婚とは、婚姻届を提出せずに夫婦としての関係を築く形態のことです。法律上の婚姻届を出さないため、戸籍上は独身のままですが、同居や経済的な協力をはじめとする生活実態、周囲からの夫婦としての認知があれば社会的に夫婦とみなされるケースがあります。
近年では、結婚という制度にこだわらず、互いの人生を尊重しながらパートナーシップを築くカップルの増加とともに事実婚の認知が拡大しています。

法律婚とどこが違うのか

法律婚とは、婚姻届を役所に提出して正式に夫婦として認められる従来の形態です。一方で、事実婚は婚姻届を提出しないため、法律上の夫婦としての権利や義務が一部制限される場合があります。

事実婚を法律婚と比較した主な違いをまとめました。

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  法律婚 事実婚
戸籍 同じ戸籍 独立した戸籍
いずれかが改姓し同姓にする 別姓のまま
相続権 発生する

認められない
(遺言書で対応)

税金 配偶者控除など適用 適用されない
社会保険 配偶者扶養で適用 適用される場合がある
子供の親権 共同親権

出生時母子関係成立(単独親権)
父子関係は認知届で成立

離婚手続き 離婚届が必要 届け出不要

戸籍の扱い
法律婚では夫婦は同じ戸籍に入りますが、事実婚ではそれぞれ独立した戸籍に留まります。


日本では過去に選択的夫婦別姓が検討されましたが、改正法案の国会提出に至っていません。実務上での旧姓の通称使用が可能な範囲は広がりつつあるものの、法律婚では戸籍名で別姓を維持することはできません。

相続権
法律婚では配偶者に相続権が発生しますが、事実婚では認められない場合があります。そのため、事実婚関係にあるパートナーに遺産を遺したい場合、遺言書などで対応する必要があります。

税金
法律婚の場合、配偶者控除や扶養控除が適用される仕組みがありますが、事実婚やその他の形態では適用されないことが多いです。

社会保険
法律婚の場合に入れる配偶者扶養には、事実婚でも実態次第で認められる場合があります。ただし年収が130万円以上ある場合は法律婚でも社会保険料が生じます。

子供の親権
法律婚は共同親権ですが、事実婚の場合は単独親権です。出生時に母親に親権が生じます。父子関係を法的に成立させるには父親が認知届を提出する必要があります。

離婚手続き
法律婚は離婚届が必要ですが、事実婚は届け出不要です。

同性同士でも事実婚は可能?

日本では同性婚は法律上認められていませんが、同性同士でも事実婚を選択することは可能です。2025年10月現在、主要な政令指定都市をはじめとする全国約530の自治体が「パートナーシップ証明書」を交付しており、これにより病院の面会や住宅契約、企業福利厚生などの面で法律婚と同様のパートナーとして社会的な認知を得られるようになることが期待されています。
ただし異性間の事実婚と同様に、相続権や税制上の優遇措置などの法的権利に多くの制限があります。そのため、同性カップルの場合も、遺言書の作成や財産管理の契約など、法的なリスクを補完する手続きが重要です。

事実婚は、法律婚とは異なる柔軟性を持つ一方で、法的な権利や社会的認知の面で課題もあります。それでも、多様な生き方を尊重する現代社会において、有力な選択肢の1つとなっています。

事実婚と認められるための手続き

事実婚に手続きはありませんが、事実婚を法的に認められやすくするために、いくつかの条件や準備が必要です。一定の条件を満たすことで、法律上や社会的にその関係を証明しやすくなるのです。以下では、具体的な条件、手続きの流れ、必要な書類、手続き時の注意点について解説します。

事実婚と認められる条件とは?

事実婚が認められるためには、以下のような条件を満たす必要があります。

1.共同生活を送っている
同居していることが基本的な条件となります。同居年数は特に定められていませんが、目安としては数年以上継続的な共同生活を送っていることが多く、期間が長いほど事実婚を認められやすくなります。

2.夫婦としての社会的実態がある
お互いを夫婦として認識しており、第三者への紹介や認知などでもそのように扱われる関係である場合、事実婚を認められやすくなります。

3.生活費の共有や協力
生活費を分担したり共同で管理したりするなど、生活を支えるための経済的な協力関係にあると事実婚を認められやすくなります。

事実婚の手続きの流れとは?

事実婚の手続きは、法律婚とは異なり統一的な公式手続きは存在しません。
しかしいざという時のために以下のような準備を進めておくと事実婚関係を認められやすいでしょう。

住民票の記載変更
役所で住民票の続柄欄に「未届の妻(夫)」と記載してもらうことが可能です。これにより、事実婚関係を公的に証明する一助となります。ただし、住民票の記載に対応しているかどうかは自治体によって異なります。

共同生活の証拠を残す
同一住所での公共料金の請求書や賃貸契約書、銀行口座の情報、郵便物など、共同生活の証拠となる書類を揃えます。

公正証書を作っておく
財産分与や相続トラブルの回避のために、遺言書など公正証書を作っておくと安心です。

上記の書類を用意しておくと、保険や年金の手続きの際、証明資料として有利に働く場合があります。
社会保険や年金で認められるためには生計を同一にしている証拠が必要ですが、税金や扶養の取扱いはケースによって異なります。

必要な書類と準備

事実婚を証明するためには、以下の書類や準備が役立ちます。

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住民票 続柄欄に「未届の妻(夫)」と記載されたもの
共同名義の契約書 賃貸契約書、住宅ローン契約書など、共同生活を証明する契約書類
家計の共有を示す証拠 生活費や家賃の支払い記録、共有口座の取引明細書など
写真やメールの履歴 長期的な関係性を示すための個人的な証拠(必要に応じて)

このような書類を事前に用意することで社会的・法的なトラブルに備えましょう。

手続き時の注意点

事実婚の手続きにおいては、以下の点に注意が必要です。

法律婚と異なる取り扱い
法律婚と事実婚では、相続権や税制面で異なる扱いを受ける場合があります。そのため、専門家(弁護士や税理士)に相談することをおすすめします。

証拠の保管
共同生活を証明できる書類は、紛失しないように保管しておくことが重要です。特に賃貸契約や住民票の写しは定期的に更新する必要がある場合があります。

周囲の理解と承認
事実婚に対する社会的な認識はまだ完全ではないため、周囲の理解を得る努力も必要です。特に親族や職場に対しては、関係を説明する準備をしておくとよいでしょう。

事実婚のメリット

事実婚と認められるための手続きについて紹介しましたが、いくつかの準備が事前に必要なことがわかります。中でも、周囲の理解を得ることは場合によっては難しいこともあります。
それでも、事実婚には従来の法律婚にはない柔軟性や独自のメリットがあります。以下では、事実婚を選ぶことで得られる主なメリットを詳しく解説します。

婚姻の手続きに伴う費用や時間の削減

事実婚では、法律婚に比べて婚姻届の提出をはじめとした手続きに伴う費用や時間を削減できます。
婚姻に関する金銭的・時間的な負担が軽減されるほか、パートナー間で生活費を分担することで家計の効率化が図れます。

夫婦別姓を維持できる

事実婚の大きな特徴の1つが、「夫婦それぞれが自分の姓をそのまま名乗れる」という点です。
法律婚では同じ姓を名乗ることが義務づけられていますが、事実婚では戸籍を別々に保つため、改姓の必要がありません。

これは単に手続きの手間が少ないというだけでなく、これまで自分の名前とともに築いてきたキャリアや信用をそのまま守れるという意味があります。特に、名前が仕事の評価や信頼につながっている方にとっては重要なポイントでしょう。

また、姓を変えずにいられることで、「結婚によってどちらかの家に入る」という感覚よりも、「対等な立場で新しい関係を築く」という意識を持ちやすくなります。
氏名は自己認識に大きな影響を及ぼします。別姓の維持は、個人の尊重や夫婦の平等を大切にする気持ちのあらわれでもあります。

離婚時の煩雑な手続きが不要

婚姻届を出していないため、離婚届を提出せずに関係を解消することが可能です。ただし円満な関係解消のためには財産分与の取り決めが必要です。

対等な関係を築く下地になる

法的拘束が少ない分、互いの価値観を尊重しやすく、ライフスタイルに合わせた形で関係を築きやすくなることが期待できます。

事実婚のデメリット

事実婚には自由や柔軟性がある一方で、いくつかのデメリットも存在します。以下では、法律的な課題、社会的な認知度、そして子どもに与える影響について詳しく解説します。

法的保護が弱い

事実婚では、婚姻届を提出しないため、法律婚のような明確な法的保護を受けることができません。たとえば、財産分与や相続の際に、配偶者としての権利が認められないケースがあります。そのため、別れる際やどちらかが亡くなった場合に、トラブルが発生する可能性があります。

社会的な認知の課題

事実婚はまだ日本でそれほど一般的とはいえません。親族や職場などで説明や理解を求める場面が生じることもあるでしょう。また世代によって婚姻観に違いがあるため、周囲への説明が必要になる場面が増えるかもしれません。

また、公式の場で理解を求める必要性が生じます。たとえば、パートナーの病院での面会や手術の同意が必要な場合、手続きが複雑になることがあります。このような場面では、関係性を証明する公的な書類を用意できるとよいでしょう。

税制上の優遇措置が受けられない

配偶者控除や扶養控除といった税制上の優遇措置が受けられない点もデメリットです。
ただし、被扶養者の年収が201万6,000円以上なら法律婚だったとしても配偶者控除はなくなるので、扶養に入る必要はありません。

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社会保険上の扶養に入るためには証明が必要

社会保険における扶養に入るには、生計を同一にしていることを証明する必要があります。
ただし、被扶養者の年収が130万円以上なら、法律婚だったとしても社会保険料はかかるので、扶養に入る必要がありません。

子どもへの影響

法律婚の場合は共同親権ですが、事実婚の場合は婚姻届を提出していないため、出生時の親権は母親のみに発生します(単独親権)。父子関係の証明には認知届の提出が必要です。認知が成立すれば法律婚と同様に父親も法的な親となるため、養育費や相続に関する権利義務が生じます。

ただし、親権者は原則母親単独です。父母の合意や家庭裁判所の手続きによって、親権を父親に変更したり、監護権を分けて定めたりすることは可能ですが、法律婚のように自動的な共同親権は認められていません。
また、別れた際の親権争いや養育費の取り決めが、法律婚とは異なる可能性があります。
2024年5月に成立した「民法等の一部を改正する法律案」により、法律婚の場合には、将来的に離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」制度が導入される予定です。

ただし、親権の在り方に厳密な違いがあるとはいえ、普段の生活であまり意識することはないでしょう。子どもの情緒発達には親の婚姻の形式よりも、一貫した愛情と家庭の安定が大切です。親子の信頼関係や日常での関わり方を重視しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 事実婚にすると税金は損しますか?

配偶者控除・扶養控除は使えませんので、その分所得に対して課税されます。税制とは異なりますが、社会保険上の扶養は認められる場合もあるため、パートナーの社会保険料が浮く可能性はあります。
ただし、被扶養者にしたいパートナーの年収が元々130万円以上なら社会保険料はかかりますし、201万6,000円以上なら配偶者控除額は0円になりますので、パートナーに一定の所得がある場合は法律婚でも事実婚でも等しく税制優遇の対象外になりえます。

Q2. 財産の相続はできますか?

自動的な相続権はありません。遺言書を作成して相続人を指定すれば財産を残せます。

Q3. 子どもの戸籍および親権はどうなりますか?

事実婚の場合、子どもは母親の戸籍に入ることが通常ですが、父親が「認知届」を提出すれば、父母の子どもとして法的な親子関係が成立します。婚姻していない夫婦の子供でも、父親が認知を行うことで法律婚と大きな差はほぼなくなります。

Q4. 事実婚はどのくらいで認められますか?

一般的に「数年以上の継続的な同居と経済的共同生活、および周囲の第三者からの認知」が認められる目安とされています。

まとめ

事実婚は、法律婚とは異なる形でパートナーシップを築く選択肢として拡大しています。柔軟なライフスタイルを実現しやすい一方、法的保護の範囲が限定される点も理解しておく必要があります。
自分たちの価値観や状況に合った関係を選び、パートナーとともに納得のいく形で生活を築いていくことが、事実婚を成功させる鍵となります。事実婚の際は、メリット・デメリットを把握し、必要な手続きや法的な側面での情報収集を行うとよいでしょう。
最後に、事実婚を検討することで、より自由で多様な生き方を選択できる可能性が広がります。自分たちに最適な形を探し、前向きな未来を描きましょう。

  • 本ページは2025年11月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。

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