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【この記事を読んでわかること】
ビットコインに代表される仮想通貨(暗号資産)。ネット内でやり取りされるお金といえばそのとおりなのですが、買い物をするお金というよりも投資先として活用される「資産」というイメージの方がほとんどでしょう。
現状、仮想通貨の利益には株・投資信託・FXなどの金融商品よりも多額の税金がかかる可能性があります。しかし今後は、それらの金融商品と同様の税金で済むようになる見通しです。今回は、仮想通貨にかかる税金と、制度変更によってその税金がどのくらい変わるのかを紹介します。
税金の課税方法には、他の所得と合算して税率が決まる「総合課税」と、他の所得とはわけて税率が決まる「分離課税」の2つがあります。
仮想通貨の取引で得た利益は、現状「雑所得」という所得になり、総合課税の対象です。
令和8年度(2026年度)の税制改正大綱では、仮想通貨の取引によって得られた利益が総合課税から分離課税の一種「申告分離課税」に移行することが盛り込まれました。
仮想通貨に投資して利益の出ている方であれば、多くの場合、申告分離課税になってから利益を確定した方が納める税金が少なくなるため、注目されています。
総合課税では、給与など他の所得を合算して税額を計算します。総合課税の税率は、所得の合計額(課税される所得金額)に応じて5%〜45%となっています。
<所得税額の速算表>
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
| 195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
国税庁のウェブサイトより(株)Money&You作成
所得税は「超過累進課税」といって、「4,000万円以上の部分に45%」「1,800万円から4,000万円未満の部分に40%」…というように、段階的に計算します。しかしこの速算表を使えば、課税される所得金額に税率をかけ、控除額を差引くだけで所得税額が算出できます。加えて、住民税もかかります。住民税の税率は所得金額に関わらず、一律10%です。
また、2026年までは所得税額の2.1%が東日本大震災からの復興に伴う「復興特別所得税」として加算されます。2027年からは復興特別所得税の税率が1.1%に引下げられる代わりに、防衛力強化のための防衛特別所得税が1%課される見通しです。2026年も2027年以降も「所得税額の2.1%」(端数は切り捨て)で同じですが、名目が少々変わります。
総合課税の場合、これだけの税金がかかるとなれば、仮に仮想通貨で大きな利益が出ていたとしても売却しにくいでしょう。
分離課税は、他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算する課税の方法です。分離課税には、さらに確定申告が原則不要な「源泉分離課税」と、原則必要な「申告分離課税」があります。このうち、株などの金融商品を売ることで得られた利益は申告分離課税の対象となります。特定口座(源泉徴収あり)を使っていれば確定申告は不要ですが、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座を使っている場合には確定申告が必要です。
申告分離課税の税率は、一律20%(所得税15%+住民税5%)です。これに復興特別所得税(所得税15%の2.1%)を加えると、20.315%です。
総合課税と申告分離課税で、税額にいくら差が出るかを見てみましょう。
仮想通貨で1億円の所得(利益)が出た場合を想定します(給与所得など、その他の所得はないものと仮定します)。
総合課税の場合
総合課税の場合、所得税額は1億円×45%−479万6,000円=4,020万4,000円、復興特別所得税の金額は4,020万4,000円×2.1%=84万4,284円です。
住民税の税率は一律10%が原則ですので、1億円×10%=1,000万円です。
以上を合計すると、総合課税の場合の税額の合計は5,104万8,284円になります。1億円の利益があっても、手元に残るのは4,895万1,716円になってしまいます。
申告分離課税の場合
申告分離課税の場合、1億円×20.315%=2,031万5,000円ですので、税額の合計は2,031万5,000円となります。
<仮想通貨取引利益1億円での税金シミュレーション結果>
総合課税 |
5,104万8,284円 |
|---|---|
申告分離課税 |
2,031万5,000円 |
| 差額 | 申告分離課税の方が3,073万3,284円安い |
税額は総合課税が5,104万8,284円、申告分離課税が2,031万5,000円ですから、その差は実に3,073万3,284円にもなります。
仮想通貨の税金は、仮想通貨を保有している間にはかかりません。税金がかかるのは、仮想通貨を売却・交換・決済したタイミングです。つまり、利益が確定したタイミングでその利益に対して税金がかかります。
給与所得者の場合、1年間の仮想通貨を含めた雑所得が20万円を超える場合、確定申告が必要です。1年間の仮想通貨の取引履歴を確認し、20万円を超えていたら確定申告書を作成して税務署に提出・納税を行います。
なお、医療費控除を受ける、住宅ローン控除を申請するなどで確定申告を行う場合、仮に仮想通貨の利益が20万円以下であっても申告が必要になります。
本稿執筆時点では、仮想通貨の課税方式の移行はまだ決定したわけではありません。今後、税制改正大綱を元にした法案が審議され、国会で成立すれば決定となります。また、実際に総合課税から申告分離課税に移行する時期も決まっていません。
現状では「金融商品取引法の改正法の施行の翌年から」となっています。2026年の通常国会で提出が見込まれる金融商品取引法の改正案の成立後なので、遅くとも2028年からではないかと考えられます。
すでに仮想通貨を保有していて、利益確定のタイミングをうかがっているのであれば、2028年以降にした方がよいかもしれません。今後の動向にぜひ注目しましょう。
頼藤 太希
経済評論家・マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」(※現在は放送終了)、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、書籍110冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。X(@yorifujitaiki)
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