
「基礎控除」は改正前は所得金額に関わらず一律年間38万円となっていましたが、今回の改正で「10万円引き上げられ48万円」となりました。
同時に、一定の所得層以上は一律の控除は必要ないという考えから、年間所得2,400万円以上の方は段階的に控除額が引き下げられ、2,500万円を超える所得層の基礎控除額は0円となります。
「給与所得控除」とは、会社員や公務員などの給与所得者が勤務する上での必要経費として年収から差し引くことができる控除ですが一律で10万円引き下げられました。
また、控除の要件である給与所得の上限が1,000万円から850万円となります。(ただし、23歳未満のいわゆる子育て世代は「所得金額調整控除」が設定され適用外)
同時に給与所得の上限も220万円から195万円と変更されました。
今回の改正によって増税になる人と減税になる人、影響のない人がいます。
会社員・公務員などの給与所得者のうち給与収入が850万円を超える人で、独身者と23歳未満の扶養している親族がいない人です。
今回の改正で基礎控除額と給与所得控除の合計が15万円下がるため課税所得が15万円増えた結果所得税は34,500円の増税となります。
今回の改正で減税になる人とは、個人事業主、自営業、フリーランスなど個人で仕事をしている人たちです。課税所得が2,400万円以下であれば減税となります。
今回の改正で基礎控除額が10万円上がるため、課税所得が10万円減った結果所得税は2万円の減税になります。※1
今回の改正は「働き方改革」による働き方の多様化を応援する意味もあることから、個人で仕事をする人の税負担が軽くなる内容になっているようです。
会社員・公務員などの給与所得者のうち年収が850万円以下の人たちです。年収850万円以下の場合は基礎控除が10万円上がりますが、給与所得控除が10万円下がるため、下図のとおりプラスマイナスで変更がありません。
今回の税改正では、働き方と年収など立場によって増税、減税、変わらないなど影響が分かれましたが、実は長期的にみると、さまざまな制度の変更で、手取り額は減少傾向にあります。
最近20年間で手取り額に影響を与えた主な制度変更は次のとおりです。
制度の変更、縮小、廃止とともに、税金、健康保険料、厚生年金や国民年金の保険料の増加に伴い手取り額は年々減少傾向にあります。
また、健康保険および介護保険の負担も右表のとおり増加傾向にあります。保険料の負担は、20年と比べ500万円の所得の場合年間で16万円ほど負担が増えていることになります。
このような手取り額の減少に対しては、税制優遇を積極的に活用して備えることができます。
例えば、35歳会社員(企業年金がない・家族構成:妻35歳専業主婦・子供5歳/3歳)がiDeCoと住宅ローン控除を利用した場合を考えてみましょう。
iDeCoは掛金全てが所得控除の対象になります。年収650万円の方が月々23,000円積み立てたら、年間276,000円の所得控除になり、課税所得が276,000円減ります。つまり82,800円の節税になります。※3
住宅ローン控除制度は2021年12月末までに住み始めて10年間が適用期間となります。※4 年末の住宅ローン残高が3,000万円であれば、その1%の約30万円を所得税から税額控除することができる制度で、10年間、毎年約30万円前後の税金が戻ってくることになります。※5 尚、所得税だけで控除しきれない場合には、住民税からも一部控除が可能です。※6
その他の税制優遇が受けられる制度も含めて、ご自身が使える控除はぜひ積極的に検討し利用することをお勧めします。
肥後 知歩
ファイナンシャルプランナー
中立的な金融教育機関で約15年間、講師として登壇中。家計管理や資産運用についての講演、乗り合い代理店にて保険の見直し相談を約200世帯以上経験し、今に至る。現在はセミナー講師(年間講演回数100講演以上)、コラム執筆や個人相談なども含め幅広く活動中。
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