住民税は新卒・5年目・10年目でどれだけ変わる?
執筆者:マネーコンサルタント|頼藤 太希
-
- 暮らす
毎月の給与明細を見ると、住民税が引かれていることがわかるでしょう。住民税は、個人の場合、毎年1月1日時点で住所のある市区町村に両方まとめて支払う税金とはいうものの、なかなか高いなと思われる方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、住民税がどのように決まるのか、新卒・5年目・10年目で住民税額がどれだけ変わるのか、試算を確認してみましょう。
住民税いつから払い始める?計算の仕方は?
住民税は、教育・福祉・救急・消防・ゴミ処理・道路の整備など、私たちの生活に身近な行政サービスの費用をまかなうために納める税金です。
住民税には、お住まいの市区町村に納める「市町村民税」(東京23区では「特別区民税」)と、都道府県に納める「道府県民税」(東京23区では「都民税」)の2つがあります。
市町村民税と道府県民税にはそれぞれ、所得金額を元に税額が計算される「所得割」と、所得金額にかかわらず税額が一定の「均等割」の2つがあります。
所得割は、次の流れで計算します。
住民税の所得割が決まるまで
(株)Money&You作成
①給与収入から「給与所得控除」を引き、給与所得を計算する
給与所得控除は会社員や公務員に認められている「必要経費」のようなものです。給与収入から差し引くことができる給与所得控除の金額は、一律で決まっています。
給与所得控除の金額
国税庁のウェブサイトより
②給与所得から「所得控除」を引き、課税所得を計算する
所得控除は、個人の事情に合わせて税金の負担を軽くすることができる控除です。所得控除には、基礎控除・配偶者控除・扶養控除など全部で15種類あり、それぞれ控除できる金額が異なります。これらの所得控除を差し引いて、個人の課税所得を算出します。
なお、所得税の計算でも15種類の所得控除ができますが、所得税と住民税では控除額が違うものがあります。所得税の控除額より住民税の控除額のほうが少なくなっています。
③課税所得に税率(一律10%)をかけ、所得割を計算する
課税所得が算出できたら、所得割を計算します。所得割の税率は市町村民税が6%、道府県民税が4%なので、合計10%です(なお、政令指定都市の場合は市町村民税が8%、道府県民税が2%の合計10%)。
④所得割に均等割を加える
均等割の金額は、道府県民税が1,500円、市区町村民税が3,500円、合計で5,000円です。算出された所得割に均等割を加えることで、住民税の合計額がわかります。
以上、住民税の計算方法を細かく見てきましたが、何も計算できるようになる必要はありません。毎年6月ごろになると、この方法で算出された住民税の金額を知らせる「住民税決定通知書」が届きます。この金額を6月から翌年5月にかけて納めます。
会社員や公務員など、給与をもらっている人は「特別徴収」といって、毎月の給与から天引きされます。
なお、住民税は「前年の所得」を元にして納める税金です。したがって、前年の所得がない社会人1年目の場合は通常かかりません。社会人2年目になると、1年目の所得を元にして住民税が計算され、支払いが始まります。
年齢別の住民税の例
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、各年代の月収の推移は次のようになっています。
年齢別の平均賃金(大卒・男女計・5歳刻み)
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」より(株)Money&You作成
この金額をもとに、新卒2年目・5年目・10年目の方の住民税がそれぞれいくらになるか、目安の金額を算出してみましょう。
年齢別の住民税の例1:新卒2年目(24歳)
【前提条件】
- 東京都在住
- 月収:23万3,600円(年収:280万3,200円)
- 扶養なし
- 所得控除は基礎控除(43万円)と社会保険料控除(42万4000円)のみ考慮
①給与収入から「給与所得控除」を引き、給与所得を計算する
- 給与所得控除
年収280万3,200円×30%+8万円=92万960円
- 給与所得
280万3,200円−92万960円=188万2,240円
②給与所得から「所得控除」を引き、課税所得を計算する
- 所得控除
基礎控除43万円+社会保険料控除42万4000円=85万4000円
- 課税所得
188万2,240円−85万4000円=102万8,240円
(1000円未満切り捨てのため)102万8000円
③課税所得に税率(一律10%)をかけ、所得割を計算する
- 所得割
102万8,000円×10%=10万2800円
④所得割に均等割を加える
- 住民税
10万2,800円+5,000円=10万7,800円
以上より、新卒2年目の方の住民税は、10万7,800円となりました。
年齢別の住民税の例1:社会人5年目(27歳)
【前提条件】
- 東京都在住
- 月収:26万5,200円(年収:318万2,400円)
- 扶養なし
- 所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみ考慮
同様に計算を行うと、社会人5年目の方の住民税は、13万700円となりました。給与が上がった分給与所得控除も増えるのですが、課税所得もその分増えるため、住民税も2.3万円ほど上がっています。
年齢別の住民税の例3:社会人10年目(32歳)
【前提条件】
- 東京都在住
- 月収:30万4,900円(年収:365万8,800円)
- 扶養あり(配偶者・収入なし)
- 所得控除は基礎控除・社会保険料控除・配偶者控除を考慮
同様に計算を行うと、社会人10年目の方の住民税は、12万4,500円とわかりました。社会人5年目よりもさらに給与が上がっていますが、配偶者控除が適用されていることで、課税所得は少なくなりました。そのため、社会人5年目よりも住民税額が6,200円減っています。
住民税の決まり方と、新卒2年目・5年目・10年目の住民税の金額の試算を紹介しました。今回は計算を簡単にするために、所得控除を最低限のものに絞りましたが、他にも利用できる所得控除があれば、活用することで住民税の金額を抑えることができます。年末調整や確定申告の際にもれなく申請して、できるだけ住民税を安くすることを考えましょう。
今回のまとめ
- 住民税には「市町村民税」(東京23区では「特別区民税」)と、都道府県に納める「道府県民税」(東京23区では「都民税」)がある
- 市町村民税と道府県民税には、それぞれ所得割と均等割がある
- 住民税の所得割の税率は一律10%で、前年の所得を元に計算される。均等割は5000円。