サラリーマンを早期リタイアしたい! メリット・デメリットはどんなものがある?
執筆者:ファイナンシャルプランナー(AFP)|池田 幸代
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コロナ禍で、これまで当たり前だとされてきた生活を変えざるを得ない状況になってしまいました。しかしそれは、変えたいと思う生活や環境を見直すきっかけにもなっています。そのような生活の変化の中で、早期にリタイアしてもお金に困らないで自由に生活していくという考え方「FIRE」が日本でも広がっています。
今回は、多様な働き方として、早期リタイアで得られるメリットとデメリットをご紹介します。
- 従来の価値観にとらわれない選択肢としての早期リタイア
- アーリーリタイアとセミリタイアの違い
- 早期リタイアのメリットとデメリット
- 早期リタイアをするために必要なこと
- セミリタイアを行うための注意点
- 今回のまとめ
従来の価値観にとらわれない選択肢としての早期リタイア
昔は就職したら定年まで勤めることが一般的でしたが、最近は転職しやすい世の中になって転職が活発化し、フリーランスの働き方が増えるなど従来の枠にとらわれない生き方を選ぶ動きが出てきました。また、定年後も再雇用や個人事業主で働き続ける流れもあります。
そんな中で出てきた概念が「FIRE」です。FIREとは、経済的に自立して早期リタイアを目指すという意味の英語の頭文字からきています。
今までにも十分な資産形成をして早期リタイアするブームはあったのですが、ごく一部の人しか実践できない内容でした。ところが、FIREの考え方は投資と節約をベースにしているため、今までより比較的少ない資産でもリタイアが可能なので、注目を集めているのです。
早期リタイアといっても、どんな生活を目指すかは人それぞれです。完全にリタイアして自由な時間を満喫する人もいれば、週に2〜3日働く、1日3時間だけ働く、自分の好きなことで収入を得るなど、社会との接点を保ったまま生活するという人もいます。どんなライフスタイルをゴールにするかは、特に決まりはありません。
アーリーリタイアとセミリタイアの違い
早期リタイアにはよく「アーリーリタイア」と「セミリタイア」という言葉が登場します。まず早期リタイアは、定年退職前に仕事を引退すること全般を意味しています。アーリーリタイアはリタイアする時期のことで、早期優遇退職制度などの条件に満たない人が退職することいいます。
一方、セミリタイアはリタイアの種類のことをいいます。完全に会社を辞めて仕事をしない「完全リタイア」や、自分の時間や生活に重点をおきながらアルバイトやフリーランスなどの仕事で収入を得るのが「セミリタイア」です。この他も期間限定で働く「ミニリタイア」などがあります。早期リタイアの先に、選択肢の一つにセミリタイアがあるという感じです。
早期リタイアのメリットとデメリット
もちろん憧れる早期リタイアにも、メリットとデメリットがあります。イメージにとらわれずに考える必要があります。
まず早期リタイアのメリットですが、自由な時間が増えます。決められた時間と仕事をこなすことから解放されて、自分の好きなことに時間を使うことができます。いやな仕事をするストレスもありません。さらに仕事をする場合でも自分で時間配分を調節しながら、適度に働くことができます。
早期リタイアのメリット
- 自由な時間が増える
- 仕事をするストレスがない
- 社会との距離感を自分で調節できる
逆に早期リタイアのデメリットとしては、会社という砦がなくなり保障や福利厚生がなくなります。当然のことながら、今まで受け取っていた会社からの給与やボーナスがなくなるので、収入に関しても不安定になる可能性があります。ですから収入を得る手段を複数用意するとか、資産運用などの不労所得があると安心です。また早期リタイアをすると安定した収入がなくなるので、社会的な信用が低下します。マイホームの購入やローンを組むことが難しくなるので、できるだけ大きな買い物は、リタイアする前に行っておきましょう。
サラリーマンのときには病気やケガをしても、会社の有給休暇や傷病手当金などの制度が使えました。リタイア後は、自分の体が資本なので、健康管理には注意が必要です。さらに隠れたデメリットとして、年金が少なくなるという面があります。リタイアすることによって、厚生年金の保険料の納付がなくなってしまうからです。
早期リタイアのデメリット
- 収入が不安定になる
- 保障や福利厚生がなくなる
- 社会的な信用が低下する
- 健康面に注意が必要
- 年金が少なくなる
早期リタイアをするために必要なこと
早期リタイアという選択肢を選んでも、年齢や時期、家族構成などで条件が異なります。また漠然と自由な暮らしを手にいれたいという思いだけでは、思い描く結果には結びつきません。ここでは、押さえておきたい項目をチェックしておきましょう。
貯蓄や資産づくり
長生きを前提に年金などの収入を差し引いて、少なくても90歳くらいまでは生活ができる貯蓄を準備したいものです。またリタイアする時期を遅いと必要額は小さくなります。資産づくりには、税制のメリットが大きいiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAを利用しましょう。
収入源
十分な貯蓄を準備したとしても、想定外の支出や投資環境の変化はつきものです。収入源を複数用意することで、リスクを分散させることができます。FIREでは、リタイア後も投資の収入を得ることで、経済的な自立をめざしています。いつでも働けるためには、スキル、健康、人脈などの無形資産の形成も必須です。
支出のコントロール
将来の支出の見積もりには、統計の平均を用いることがありますが、自分の数字で計算することが大切です。もし浪費していると感じるものがあれば、削る努力が必要になります。支出を減らして、できるだけ投資に回せるかが早期リタイアのカギになります。
将来設計と計画性
自由な時間に憧れても、リタイア後の具体的な将来設計が描けていないと、充実した時間を過ごすことはできません。いつまで働いていくら稼ぐのか、どんな生活をしたいのか、そうしたお金を貯める目標や目的をはっきりさせることで、早期リタイア達成の確率が上がります。
セミリタイアを行うための注意点
早期リタイアを行うためには、資金計画をはじめ、住む場所やどんな生活を希望するかなど、家族を含めた話し合いなど具体的な準備が大切になってきます。想定外のことがあっても退職した会社には戻れませんし、一度セミリタイアをしてしまうと、特別な能力や技能がないと再就職も難しくなってしまいます。どうしてもリスクが伴うので、いくつかのパターンを用意し、具体的な計画を綿密に立てた上で実行に移したいものです。リタイアがゴールではなく、あくまでも新たな生活のスタートだということを心にとめておきましょう。
今回のまとめ
- 従来の働き方の枠を越えて、早期リタイアという考え方が広がってきた。
- 早期リタイアにも種類があり、メリットとデメリットがある。
- 早期リタイアを成功させるポイントに貯蓄、収入減、生活費のコントロールなどがある。
- セミリタイアを行うためには、入念な準備と具体的な計画が必要になる。
- ※ 本ページは2021年8月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
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