年収400万円、800万円、1,200万円で手取り額はどう変わる?

執筆者:マネーコンサルタント

頼藤 太希

年収

2021年1月4日 (最終更新日:2025年3月26日)

みなさんの年収が2倍・3倍になったらどうしますか?
あれが欲しい、これがしたいなど夢や希望が叶うかもしれません。しかし現実には、年収が2倍・3倍になっても、手取りの金額は2倍・3倍になりません。なぜなら、年収が増えると、それに伴って税金や社会保険料が増えてしまうからです。

今回は、年収400万円・800万円・1,200万円の場合で、税金や社会保険料、さらには手取りの金額がどのように変わるのかを紹介します。また、税金を少しでも減らすためにぜひ使いたい制度についてもご紹介します。

年収が2倍・3倍になると…手取りはどうなる?

年収は、給与明細の「総支給額」に書かれた金額を合計した金額です。ここから、税金や社会保険料などが引かれ(控除され)、残った金額が手取りの金額になります。

例えば、年収400万円の場合の手取りの試算の方法を紹介します。

【試算の条件】

  • 会社員・35歳独身・東京都在住
  • 所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみ
  • 社会保険料は厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料
  • 復興特別所得税を考慮

【年収400万円の手取りの計算方法】

①年収から「給与所得控除」を引き、「給与所得」を計算する
400万円−124万円=276万円

②給与所得から「所得控除」を引き、「課税所得」を計算する
所得税の課税所得…276万円−58万円(基礎控除)−59.7万円(社会保険料控除)=158.3万円
住民税の課税所得…276万円−43万円(基礎控除)−59.7万円(社会保険料控除)=173.3万円

③所得税は課税所得に応じた所得税率(5%~45%)を用いて算出
158.3万円×5.11%=8.1万円

④住民税は一律10%(所得割)+5,000円(均等割)
173.3万円×10%+5,000円=17.8万円

⑤年収から税金と社会保険料を引いた金額が手取り
400万円−8.1万円(所得税)−17.8万円(住民税)−59.7万円(社会保険料)=314.4万円

年収800万円・1,200万円でも同様の計算を行い、税金や社会保険料、手取りの金額がどう変わるのか表にまとめました。

<年収400万円・800万円・1,200万円の手取り・控除額>

年収 手取り 控除額の内訳 控除額計
所得税 住民税 社会保険料
所得税 所得税率
400万円 314.4万円 8.1万円 5% 17.8万円 59.7万円 85.6万円
800万円 592.1万円 46.3万円 20%
45.6万円 116.1万円 207.9万円
1,200万円 854万円 126.8万円 23% 83.1万円 136.1万円 346万円
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(株)Money&You試算・作成

手取りの金額は、年収が400万円から800万円と年収が400万円増えても、277.7万円しか増えていません。また、年収が800万円から1,200万円と年収が400万円増えても、261.9万円しか増えていません。

年収ほどに手取りが増えない理由は、控除される税金や社会保険料にあります。なかでも、注目したいのが所得税です。所得税の税率は「累進課税」といって、所得が多くなると5%〜45%まで、段階的に増えていきます。

年収400万円の場合、所得税率は5%で税額も8.1万円で済んでいます。しかし、年収800万円になると20%、年収1,200万円になると23%と、所得税の税率がアップします。そのため、所得税の税額も大きく増え、年収1,200万円では126.8万円も負担することになります。年収が400万円から3倍の1,200万円になると、所得税は15倍強になる計算なのです。

所得税ほどのペースではありませんが、年収が上がるほどに住民税や社会保険料もアップし、年収から控除する金額が増えていきます。そのため、「年収が2倍・3倍になっても手取りが2倍・3倍にならない」ということが起きるのです。

税金は減らすことができる!

以前と比べて年収がなかなか上がりづらい時代です。年収が上がっても、税金は増えるのですが、諦めてはいけません。おトクな制度を活用することで、税金は減らせるからです。

たとえば「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」は、老後資金を作るために掛金を積み立て、自分自身で運用商品を選んで運用する制度です。iDeCoの掛金を積み立てると、掛金が所得控除となり、所得税・住民税を減らすことができます。そのうえ、運用で得られた利益にかかる税金(20.315%)も非課税※1になります。自分の将来のためにお金を積み立てながら、税金を減らせるおトクな制度なのです。
※1 運用中の年金資産には1.173%の特別法人税がかかりますが、現在は課税が凍結されています。

また、「ふるさと納税」もおトクな制度です。「納税」というとさらに税金が増えそうですが、そうではありません。ふるさと納税では、自分が応援したい自治体に寄附を行います。すると、寄附した金額のうち2,000円を超える金額について、所得税や住民税を控除することができます。

ふるさと納税をしてもしなくても、納める税金の金額は同じなので、ふるさと納税は「節税できる」制度ではありません。しかし多くの場合、ふるさと納税を行なった各自治体からはお礼の品(返礼品)をもらえます。この返礼品の分がおトクになるというわけです。なお、実質2,000円の負担で済む寄附金額の上限は、年収や家族構成などにより異なります。ぜひ、ふるさと納税制度の活用をご検討ください。

  • 本ページは2025年2月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。

お申込みに際しては、以下の留意点を必ずご確認ください。

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頼藤 太希

マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、著書累計180万部。YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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