
年収は、給与明細の「総支給額」に書かれた金額を合計した金額です。ここから、税金や社会保険料などが引かれ(控除され)、残った金額が手取りの金額になります。
例えば、年収400万円の場合の手取りの試算の方法を紹介します。
【試算の条件】
【年収400万円の手取りの計算方法】
①年収から「給与所得控除」を引き、「給与所得」を計算する
400万円−124万円=276万円
②給与所得から「所得控除」を引き、「課税所得」を計算する
所得税の課税所得…276万円−58万円(基礎控除)−59.7万円(社会保険料控除)=158.3万円
住民税の課税所得…276万円−43万円(基礎控除)−59.7万円(社会保険料控除)=173.3万円
③所得税は課税所得に応じた所得税率(5%~45%)を用いて算出
158.3万円×5.11%=8.1万円
④住民税は一律10%(所得割)+5,000円(均等割)
173.3万円×10%+5,000円=17.8万円
⑤年収から税金と社会保険料を引いた金額が手取り
400万円−8.1万円(所得税)−17.8万円(住民税)−59.7万円(社会保険料)=314.4万円
年収800万円・1,200万円でも同様の計算を行い、税金や社会保険料、手取りの金額がどう変わるのか表にまとめました。
<年収400万円・800万円・1,200万円の手取り・控除額>
年収 | 手取り | 控除額の内訳 | 控除額計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
所得税 | 住民税 | 社会保険料 | ||||
所得税 | 所得税率 | |||||
400万円 | 314.4万円 | 8.1万円 | 5% | 17.8万円 | 59.7万円 | 85.6万円 |
800万円 | 592.1万円 | 46.3万円 | 20% |
45.6万円 | 116.1万円 | 207.9万円 |
1,200万円 | 854万円 | 126.8万円 | 23% | 83.1万円 | 136.1万円 | 346万円 |
(株)Money&You試算・作成
手取りの金額は、年収が400万円から800万円と年収が400万円増えても、277.7万円しか増えていません。また、年収が800万円から1,200万円と年収が400万円増えても、261.9万円しか増えていません。
年収ほどに手取りが増えない理由は、控除される税金や社会保険料にあります。なかでも、注目したいのが所得税です。所得税の税率は「累進課税」といって、所得が多くなると5%〜45%まで、段階的に増えていきます。
年収400万円の場合、所得税率は5%で税額も8.1万円で済んでいます。しかし、年収800万円になると20%、年収1,200万円になると23%と、所得税の税率がアップします。そのため、所得税の税額も大きく増え、年収1,200万円では126.8万円も負担することになります。年収が400万円から3倍の1,200万円になると、所得税は15倍強になる計算なのです。
所得税ほどのペースではありませんが、年収が上がるほどに住民税や社会保険料もアップし、年収から控除する金額が増えていきます。そのため、「年収が2倍・3倍になっても手取りが2倍・3倍にならない」ということが起きるのです。
以前と比べて年収がなかなか上がりづらい時代です。年収が上がっても、税金は増えるのですが、諦めてはいけません。おトクな制度を活用することで、税金は減らせるからです。
たとえば「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」は、老後資金を作るために掛金を積み立て、自分自身で運用商品を選んで運用する制度です。iDeCoの掛金を積み立てると、掛金が所得控除となり、所得税・住民税を減らすことができます。そのうえ、運用で得られた利益にかかる税金(20.315%)も非課税※1になります。自分の将来のためにお金を積み立てながら、税金を減らせるおトクな制度なのです。
※1 運用中の年金資産には1.173%の特別法人税がかかりますが、現在は課税が凍結されています。
また、「ふるさと納税」もおトクな制度です。「納税」というとさらに税金が増えそうですが、そうではありません。ふるさと納税では、自分が応援したい自治体に寄附を行います。すると、寄附した金額のうち2,000円を超える金額について、所得税や住民税を控除することができます。
ふるさと納税をしてもしなくても、納める税金の金額は同じなので、ふるさと納税は「節税できる」制度ではありません。しかし多くの場合、ふるさと納税を行なった各自治体からはお礼の品(返礼品)をもらえます。この返礼品の分がおトクになるというわけです。なお、実質2,000円の負担で済む寄附金額の上限は、年収や家族構成などにより異なります。ぜひ、ふるさと納税制度の活用をご検討ください。
お申込みに際しては、以下の留意点を必ずご確認ください。
頼藤 太希
マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、著書累計180万部。YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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