失業保険をもらうための条件は?いくら受取れる?

執筆者:マネーコンサルタント

頼藤 太希

保険

2025年4月23日

【この記事を読んでわかること】

  • 失業保険(雇用保険)は退職した方の生活を安定させ、新しい仕事を探すための支援をしてくれる保険
  • 45歳で雇用保険の加入期間が20年以上、離職前6カ月の賃金の合計が180万円の方が自己都合で退職した場合に、受取れる失業給付(雇用保険の基本手当)の金額は91万5,300円
  • 雇用保険の「失業等給付」には、雇用保険の基本手当のほかにもさまざまな給付金が用意されている

失業保険は、退職したあとの当面の生活を支えてくれる制度です。次の仕事を探すにあたってのお金の不安を軽減してくれます。ただ、もし実際に退職するとなれば、自分がいくらくらい受取れるのか気になるはずです。
今回は、失業保険を受取るための条件と、失業保険がいくら受取れるかをご紹介します。失業したときに受取れるさまざまな給付金についても、一緒に確認していきましょう。

失業保険・失業給付・失業手当とは

失業保険は、正式名称を「雇用保険」といいます。雇用保険は下記の3つの条件をすべて満たした方が加入する保険です。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある
  • 学生でない(一部例外あり)

雇用保険は、退職した方の生活を支え、新しい仕事を見つけてもらうための給付を行います。これを「失業等給付」といいます。失業等給付には、大きく分けて下記の4種類があり、それぞれさまざまな給付が用意されています。

①求職者給付:退職した方の生活を安定させる給付
②就職促進給付:退職した方の再就職を支援・促進する給付
③教育訓練給付:働くためのスキルアップ・能力開発を支援する給付
④雇用継続給付:働く方が仕事を続けることを援助する給付

<失業等給付の種類>

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失業等給付

求職者給付

一般被保険者に対する

求職者給付

基本手当

技能習得手当

(受講手当・通所手当)

寄宿手当

傷病手当

高年齢被保険者に対する

求職者給付

高年齢求職者給付金

短期雇用特例被保険者に

対する求職者給付

特例一時金

日雇労働被保険者に

対する求職者給付

日雇労働求職者給付金

就職促進給付

就業促進手当 就業手当
再就職手当
就業促進定着手当
常用就職支度手当
  移転費
求職活動支援費

教育訓練給付

  教育訓練給付金
教育訓練支援給付金

雇用継続給付

高年齢雇用継続給付 高年齢雇用継続基本給付金
高年齢再就職給付金
育児休業給付 育児休業給付金
介護休業給付 介護休業給付金

(株)Money&You作成

「失業保険」という言葉は、雇用保険のようにこれらの失業等給付全体を指すこともあれば、次に紹介する「基本手当」(雇用保険の基本手当)のことを指すこともあります。また、雇用保険の基本手当のことを「失業手当」「失業給付」と呼ぶこともあります。

失業したときに受取ることのできる給付金は?

失業したときに受取ることのできる給付金のメインが、雇用保険の基本手当です。「雇用保険の基本手当」では長いので、以下ではすべて「失業給付」と呼ぶことにします。

失業給付は、雇用保険に加入している方が退職し、「失業の状態」にある方に支給される給付です。
失業の状態とは、下記の条件をすべて満たす場合のことをいいます。

  • 積極的に就職しようとする意思がある
  • いつでも就職できる能力や環境がある
  • 積極的に仕事を探しているが、就職していない

失業給付の金額は、「基本手当日額×所定給付日数」で決まります。
基本手当日額は、離職時の年齢と、離職前6カ月の賃金をもとに計算する「賃金日額」で計算されます。細かい計算は割愛しますが、2024年8月からの基本手当日額は下記のようになっています。なお、毎年8月に金額が改定されます。

  • 離職時の年齢が29歳以下…2,295円〜7,065円
  • 離職時の年齢が30歳〜44歳…2,295円〜7,845円
  • 離職時の年齢が45歳〜59歳…2,295円〜8.635円
  • 離職時の年齢が60歳〜64歳…2,295円〜7,420円

所定給付日数は、失業給付を受給できる期間です。所定給付日数は、主に労働者側の理由で退職する自己都合退職(一般退職者)と、主に勤め先の理由などで退職する会社都合退職(特定受給資格者・特定理由資格者)で異なるほか、離職時の年齢や雇用保険に加入していた期間によっても変わります。

<失業給付の所定給付日数>

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特定受給資格者・一部の特定理由離職者※

  雇用保険の加入期間
年齢 1年未満

1年以上

5年未満

5年以上

10年未満

10年以上

20年未満

20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上35歳未満 120日 180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 150日 180日 240日 270日
45歳以上60歳未満 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 150日 180日 210日 240日
  • 一部の特定理由離職者…労働契約期間が満了し、契約更新がないために離職した者

上記以外の離職者

  雇用保険の加入期間
年齢 1年未満

1年以上

5年未満

5年以上

10年未満

10年以上

20年未満

20年以上
全年齢 90日 90日 90日 120日 150日
  • 特定理由離職者は被保険者期間が6か月(離職以前1年間)以上あれば失業給付の受給資格が得られる

(株)Money&You作成

会社都合退職のほうが、給付日数が長くなっています。

以上より、失業給付の金額が計算できます。
たとえば、45歳で雇用保険の加入期間が20年以上、離職前6カ月の賃金の合計が180万円の方が自己都合で退職したとします。このとき受取れる失業給付の金額は下記のとおりです。
6,102円×150日=91万5,300円

失業給付を受取るには、自己都合対象の場合、離職日以前2年間に12カ月以上の被保険者期間があることが必要です。会社都合退職の場合はその半分で、離職日以前1年間に6カ月以上の被保険者期間があることが条件となっています。

失業給付の手続きは、最寄りのハローワークで行います。求職の申込みをして就職活動を行い、「失業の状態」にあると認定される必要があります。退職した勤め先から受取る「離職票」を持参のうえ、手続きしましょう。

その他の給付はどんなときに受取れる?

上記でも紹介したとおり、失業等給付には、失業給付(雇用保険の基本手当)のほかにもたくさんあります。ここでは、主なものを紹介します。

高年齢求職者給付金

失業給付は、65歳になると受取れなくなります。その代わり、受取れるのが高年齢求職者給付金です。「離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算6カ月以上ある」「失業の状態にある」の条件を満たした方が対象です。失業給付同様、「基本手当日額×所定給付日数」の金額が受取れますが、所定給付日数は30日または50日となっています。なお、高年齢求職者給付金は条件を満たせば何度でも受取れますし、年金と一緒に受取ることもできます。

再就職手当

失業給付の受給資格者が再就職した場合に支給されるのが再就職手当です。失業給付の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある場合は失業給付の日額の60%、3分の2以上ある場合は70%の金額が、失業給付の支給残日数分受取れます。

教育訓練給付

在職中の方や退職した方が、厚生労働大臣指定の教育訓練講座を受講・修了した場合に、受講費用の一部が支給されるのが教育訓練給付です。対象の講座数は1万以上ありますので、次の仕事を見つけるためのスキルアップにも役立ちます。
教育訓練給付の給付金の支給額は、教育訓練のレベルに応じて次の3種類あります。

  • 専門実践教育訓練給付金

受講費用の50%(年間上限40万円)を受講開始日から6カ月ごとに支給
資格取得・就職した場合は受講費の20%(年間上限16万円)を追加で支給

  • 特定一般教育訓練給付金

受講費用の40%(年間上限20万円)を受講終了後に支給
資格取得・就職した場合は受講費の10%(年間上限5万円)を追加で支給

  • 一般教育訓練

受講費用の20%(上限10万円)を受講終了後に支給

高年齢雇用継続給付

60歳以降に継続雇用や再雇用され、賃金が低下した方に支給される給付金です。高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類があります。

<2つの高年齢雇用継続給付>

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種類 高年齢再就職給付金 高年齢雇用継続基本給付金
受給条件
  • 60歳以上65歳未満
  • 雇用保険の被保険者期間が5年以上
  • 60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に低下

失業給付を100日以上残して

安定した職業に再就職した

同じ会社に継続雇用

または失業給付を受けずに再就職した

受給期間

失業給付の支給残日数

 100日以上200日未満…1年間

 200日以上…2年間

60歳に達した日の属する月から

65歳に達する日の属する月まで

最大5年間

(株)Money&You作成

高年齢雇用継続給付には、失業給付を受取らずに再雇用された場合の「高年齢雇用継続基本給付金」と、失業給付を一部受取って再就職した場合の「高年齢再就職給付金」の2つがあります。どちらも2025年3月31日までは、60歳以降の給料が60歳時点の75%未満になった人が対象です。賃金の低下率が61%以下の場合に、最大で毎月の賃金額の15%の給付金が受取れます。

2025年4月からは、高年齢雇用継続給付の支給率が下がります。賃金の低下率が64%以下の場合に、最大で毎月の賃金額の10%の給付金が支給されるように変わるため、受取れる金額が減ります。さらに、2030年4月以降は高年齢雇用継続給付の制度そのものが廃止される予定です。

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失業保険(正式には雇用保険)には、働けなくなったときの生活を安定させ、新しい仕事を探すためのさまざまな支援が用意されています。失業給付(雇用保険の基本手当)はもちろん、その他のさまざまな給付も活用できれば、次の仕事を探すためのより心強い味方となってくれるでしょう。仕事を退職し、これから他の仕事を探すというのであれば、ぜひハローワークで相談して自分が対象になる制度をフル活用することをおすすめします。

  • 本ページは2025年3月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。

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頼藤 太希

マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、著書累計180万部。YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。日本年金学会会員。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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