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住宅ローン「頭金なしで今」か「5年後に頭金ありで購入」どっちが正解?

いつかはマイホームを購入したい、と思ったら、まずは頭金を貯めようと考える人が多いと思います。しかし、金利などの条件によっては、頭金なしで今すぐ購入したほうがトクになる場合があることは、案外知られていません。

では、実際に「頭金なしで今すぐ購入」か、「頭金をじっくり貯めて、5年後に頭金300万円で購入」するのとでは、どちらがよいのでしょうか。

頭金がないと住宅購入は難しい?

住宅購入は高いお買物です。そのため、ほとんどの場合に住宅ローンで借入れをして購入することになりますが、借入れには利息がかかります。
同じお金を借りるなら、利息の負担が軽い方がおトクです。つまり、利息を安くする借り方が賢い住宅ローンの組み方と言えるでしょう。

では、どうすれば利息を安くできるのでしょうか。
利息を節約する方法としては、返済期間を短くする、といった方法も考えられます。返済期間が短ければ払う利息の総額が安くなりますが、それには1カ月あたりの返済金額を増やさなくてはなりません。
そのため、無理なくできる方法としては、借入れ金額を少なくすることが有効と言われています。

たとえば3,000万円の物件を購入しようとするとき、3,000万円のローンを組むのではなく、頭金として300万円を支払って2,700万円だけローンを組めば、利息が安くなるというものです。
このような効果があるので、住宅購入を考えると「まずは頭金になる資金を貯蓄しよう」と考える人が多くいます。

住宅ローンの頭金はいくら必要?金額の目安と注意点

どの程度の金額を頭金として準備をすればいいのか、悩ましいのではないでしょうか。少ししか貯まっていないうちにローンを組めば、借入額が大きくなり、その分利息の負担も増えてしまいます。逆に、たくさん貯めてからローンを組もうとすると、利息の負担は減りますが、希望のエリア・物件の買い時を逃したり、借入金利が上昇したり、ローンを借り入れる年数が減ってしまったりしそうです。

住宅ローンの頭金は、一般的に住宅購入価格の10~20%が必要だとされています。
たとえば、5,000万円の住宅を購入するなら500万円~1,000万円の頭金、3,000万円の住宅の購入なら、300万~600万円の頭金を準備しましょう、ということです。

つまり、住宅ローンは購入価格の80〜90%で組むわけです。住宅ローンは購入する住宅が担保になる場合がほとんどなので、おのずとローンは物件価格の範囲内です。銀行などの金融機関は、個人の年収や家族構成、借入期間、金利などを考慮して、返済負担率を算出し、その基準値内に収まる金額を借りられる金額として設定しています。また、金利分も考慮されるため、借りられる金額が80〜90%になることが多いとされています。

そして、忘れてはならないのが、住宅購入時の諸経費です。
購入する住宅が、一戸建てかマンションか、新築か中古かによって異なりますが、目安としては、注文住宅や新築マンションでは、住宅購入時の各種手数料や税金は物件価格の3~6%、建売住宅や中古住宅で6~9%程度です。たとえば、3,000万円の住宅を購入した場合、100万~300万円くらいの諸経費がかかる計算です。

これらの諸経費は、頭金とは別に準備をしておくことになります。
ですから、将来3,000万円の新築マンションを購入したい、との希望があるなら、頭金20%=600万円と、諸経費6%=180万円、合計780万円くらいの貯蓄が目安となります。

頭金を決める際に注意したいポイント

まず住宅の購入価格と、頭金と諸経費の関係を確認してください。頭金の金額を決めるには、購入価格を仮でよいので設定します。地域はこのあたり、広さはこのくらい、学校や病院が近くにあって、などの条件で探してみると価格の相場がわかります。その価格をもとに、準備する頭金と諸経費の金額の目安が計算できます。

住宅の購入価格から計算した頭金と諸経費

物価価格 頭金 諸経費 合計
10~20% 3~9%
2,000万円 200万~400万円 60万~180万円 260万~580万円
3,000万円 300万~600万円 90万~270万円 390万~870万円
4,000万円 400万~800万円 120万~360万円 520万~1,160万円
5,000万円 500万~1,000万円 150万~450万円 650万~1,450万円
6,000万円 600万~1,200万円 180万~540万円 780万~1,740万円

頭金準備には、次の3つの考え方があります。

1:貯蓄できる金額から計算する

毎月の収入や、ボーナスからいくらの貯蓄ができるか考えていきます。生活費はすでに節約をしていると思いますが、よく見直せばまだ節約できるところがあるかもしれません。
住宅購入のための貯蓄にまわせる金額がわかったら、何年後にいくら貯められそうか計算できるのではないでしょうか。この方法のメリットは、計画的な貯蓄を続けられることです。

2:住宅購入する時期から計算する

住宅購入する時期を先に決めてしまう考え方もあります。たとえば「5年後に購入する」、と決めて、そのためには毎月、毎年、いくらの貯蓄をしていけばよいのか逆算するのです。
この方法のメリットは、貯蓄の金額だけではなくゴールの時期も明確なので、ブレることなく貯蓄ができることです。節約を頑張るだけではなく、収入を増やせるようなことも視野にいれて考えるとよいでしょう。

3:貯蓄できた金額から考える

過度な節約はストレスを引き起こすことがあるため、無理をせずにバランスを考えることが大切です。とりあえず住宅購入用の貯蓄はそれなりに続けておいて、「そろそろ買いたいな」と思ったタイミングで買えそうな物件を探す、という方法もあります。

頭金を準備するのは、どの方法をとるにしてもなかなかハードルが高いのが現実です。

しかし、最近は頭金なしで全額住宅ローンも可能になっています。
そして、頭金なしで購入した方がおトクになる場合があるのです。

「頭金なし」と「5年後の頭金あり」の違いは?

では具体的に、「頭金なし」と「頭金あり」の違いを見てみましょう。
3,000万円の物件を購入する場合、頭金なしなら借入れは3,000万円、頭金が300万円あれば借入れは2,700万円です。
どちらも返済期間は30年、金利は全期間固定の年1.3%で計算します。

3,000万円の物件購入をする場合

頭金 0円 300万円
借入額 3,000万円 2,700万円
金利 年1.3%(全期間固定)
返済期間 30年
毎月の返済額 100,681円 90,613円
返済総額 36,245,142円 32,620,594円
利息総額 6,245,142円 5,620,594円

比べてみると、毎月の返済額は「頭金あり」のほうが約1万円安くなり、返済総額は約362万5,000円少なく、利息総額は約62万5,000円少なくすることができます。
しかし、頭金を作るために5年かかったとしたら、その間の家賃がかかります。トータルでおトクになるかどうかは、家賃の負担も考慮に入れることが必要です。

5年間の家賃を含めての比較

頭金 0円 300万円
借入額 3,000万円 2,700万円
金利 年1.3%(全期間固定)
返済期間 30年
毎月の返済額 100,681円 90,613円
返済総額 36,245,142円 32,620,594円
利息総額 6,245,142円 5,620,594円
家賃(月10万円) 0円 600万円
利息+家賃 6,245,142円 11,620,594円

家賃が月10万円だとすると、5年間で600万円の支出になります。
利息と家賃を合計すると、さきほどとは結果が逆転し、「頭金なし」のほうが約537万5,000円も負担を軽くできることがわかりました。

さらに、「頭金なし」と「5年後に頭金300万円」のちがいは、今後の金利の動向にも影響されます。
今後、金利が上昇すれば5年後には年1.3%では借りられず、もっと高い金利の住宅ローンを組むことになってしまいます。そうすると、家賃負担に加えて利息が増えてしまいますので、「住宅購入を決めている」ならば、早い時期に住宅購入を決断したほうが有利です。

また、金利が今後も変わらなければ、5年後にも年1.3%で借りられますが、先ほどの表でみたとおり、家賃分の負担が増します。そのため、この場合も早いほうが有利になります。
あるいは、金利が下落したら、と考えると、5年後には年1.3%よりも低い金利で借りられると見込めるので、頭金を貯めてから住宅を購入した方が有利になります。

まとめると、次のようになります。

5年後の金利による影響

上昇している場合 住宅購入は早いほうが有利(金利分と家賃分)
変わらない場合 住宅購入は早いほうが有利(家賃分)
下落している場合 頭金を貯めたほうが有利

現在はマイナス金利政策のもと、どの金融機関でも低金利が続いています。
さらに金利が下がることは考えづらく、5年後には金利は上昇または変わらないと考えられています。

頭金を貯めるよりも繰上返済のほうが有利

今後、金利が上がる、もしくは変わらないのであれば、頭金を貯蓄するよりも、早い時期にローンを組み、その後繰上返済を活用するとよいでしょう。
5年で300万円の貯蓄をするなら、繰上返済にしたほうが有利です。

繰上返済0円と、5年後に繰上返済300万円のちがい

繰り上げ返済 0円 5年後300万円
借入額 3,000万円
金利 年1.3%(全期間固定)
返済期間 30年 26年8カ月
毎月の返済額 100,681円
返済総額 36,245,142円 35,181,675円
利息総額 6,245,142円 5,181,675円

繰上返済を利用すると、利息を100万円以上安くすることができ、さらに返済期間を3年以上短くできます。

頭金なしでも住宅購入はできる

このように、頭金がなくても住宅購入が有利にできることがわかりました。頭金にこだわりすぎると、住宅購入のグッドタイミングを逃してしまうかもしれませんね。
頭金を貯めている間に金利上昇したら不利に働きます。そして、頭金を貯めようと思っているなら、先に住宅ローンを借りておいて、そのお金は繰上返済に回そうということです。
結婚、出産、進学など、住宅購入を考える時期は人それぞれにありますが、頭金にしばられず、ライフプランに合わせて住宅購入をしていくことが大切ではないでしょうか。

とは言え、まったく貯蓄がないのに住宅購入をするのは考え物です。
住宅購入には、事務手数料や、転居費用、新居のための家具や家電の購入など、さまざまな出費がともないます。これらの支出にも備えなくてはなりません。
住宅購入は計画的に、そして総合的に考えることが大切です。

今回のまとめ

  • 住宅ローンは頭金がなくても借りられる
  • 利息だけではなく、住宅購入までの家賃も含めて計算する
  • 金利上昇、もしくは変動しないなら、頭金なしで借りて繰上返済を上手に利用
  • 頭金にこだわらず、計画的・総合的に考える
  • 本ページは2023年6月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。

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ファイナンシャルプランナー(AFP) タケイ 啓子

ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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