
iDeCoは毎月自分で拠出した掛金を運用して老後の「自分年金」を作る制度。iDeCoの運用成果は、原則として60歳以降に受け取ることができます。年金といえば、国民年金や厚生年金といった公的年金をイメージされる方が多いでしょう。iDeCoは、それら公的年金の上乗せ分を自分で作れる制度のひとつです。
iDeCoの最大のメリットは「拠出時」「運用時」「受取り時」の3つのタイミングで税制優遇が受けられることです。
iDeCoで支払う掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になるため、所得税や住民税が軽くなります。
通常、運用で得られた利益には20.315%の源泉分離課税がかかります。しかし、iDeCoで得られた利益には税金が一切かかりません。税金が引かれない分、お金を効率よく増やせます。
iDeCoで運用して築いた資産は、60歳から75歳までの間に一時金か年金で受け取ります。一時金の場合は「退職所得控除」、年金の場合は「公的年金等控除」という所得控除が利用できるため、税金の負担を減らせます。
2022年は、iDeCoの制度改正が相次いで行われています。2022年5月からは、iDeCoに加入できる年齢が「60歳未満」から「65歳未満」と、5年延長されました。
ただし、65歳未満までiDeCoに加入するには、「国民年金の被保険者(加入者)」であることが必要。具体的には、60歳以降も会社員や公務員として働いている人(国民年金の第2号被保険者)や、国民年金の任意加入(国民年金の受給資格を満たしたり、受給額を満額に近づけたりするために、60歳以降に自分で保険料を支払って国民年金に加入すること)をしている人が対象です。自営業・フリーランス(第1号被保険者)や専業主婦(夫)(第3号被保険者)は、60歳になると国民年金の被保険者ではなくなるので、iDeCoには加入できなくなります。
とはいえ、iDeCoの加入期間が5年間延びると、その分掛金を拠出することで得られる所得税・住民税の節税効果が大きくなります。また、運用期間が5年伸びれば、その分得られる運用益非課税の効果や複利効果も大きくなります。なにより、現在50歳の方の場合、加入期間が最長10年から最長15年に延ばせるのです。
iDeCoの掛金は、全額が所得控除できると紹介しました。税額の減る仕組みを見てみましょう。
1年間の給与収入から経費にあたる「給与所得控除」を差し引いて「給与所得」を計算します。次に、給与所得からさまざまな「所得控除」を引いて、「課税所得」を求めます。この課税所得に税率をかけて税額が求められるのです。さらに所得税額は、住宅ローン控除などの「税額控除」によって直接差し引くことができます。
iDeCoの掛金は最低でも毎月5,000円からで、1,000円単位で上限金額まで増額できます。iDeCoの掛金の上限金額は、公的年金の種類や企業年金の有無により異なります。たとえば、企業年金のない会社員(第2号被保険者)の場合、月額2万3,000円(年額27万6,000円)となっています。
たとえば、年額27万6,000円の掛金を拠出した場合、この27万6,000円を全額課税所得から減額できる、というわけです。仮に所得税率が5%の人なら、所得税が1万3,800円、住民税(原則10%)が2万7,600円安くなります。つまり、毎年合計4万1,400円も節税できるのです。
この節税を50歳から60歳になるまでの10年間続けて所得税率が変わらなかった場合、節税額は合計で41万4,000円です。しかし、今回の改正で65歳まで15年間続けられるようになります。つまり、節税額の合計は62万1,000円に増加。実に20万円以上も節税額が増やせるのです。
さらにiDeCoの運用効果を見てみましょう。iDeCoでは定期預金や投資信託で運用を行います。お金を増やす観点で考えると、おススメは投資信託。長期・積立・分散投資の力を借りて、堅実な資産形成が見込めます。
50歳から10年間、毎月2万3,000円ずつ10年間運用し、運用利回り年1%・3%・5%で増やせた場合の資産総額は次のようになります。
(株式会社Money&You作成)
元本の276万円が、運用利回り年1%なら290万円、運用利回り年3%なら321万円、運用利回り年5%なら357万円に増やせています。たとえば運用利回り年3%の場合、運用益は321万円―276万円=45万円です。本来、この45万円からは20.315%の源泉分離課税(約9万円)が引かれるのですが、iDeCoなら非課税です。
同様に、50歳から15年間運用した場合はどうなるでしょうか。
(株式会社Money&You作成)
元本の414万円が、運用利回り年1%なら446万円、運用利回り年3%なら522万円、運用利回り年5%なら615万円に増やせています。運用利回り年5%でも、10年間の運用で増えた金額は81万円でしたが、15年間の運用になると201万円と、10年運用した場合と比較して120万円増える計算。複利効果でお金が加速度的に増えていることがわかります。
また、運用利回り年3%の場合、運用益は522万円―414万円=108万円です。本来、この108万円からは20.315%の源泉分離課税(約22万円)が引かれるのですが、iDeCoなら非課税になります。
当然のことながら掛け金が大きいほど、運用益非課税の効果や資産を大きく増やせる可能性が高まるので、できることならiDeCoは上限金額いっぱいまでかけたいですね。
iDeCoの節税のメリットに加えて、2022年5月からは65歳になるまでiDeCoに加入できるようになったことを紹介しました。運用期間が10年から15年に延びることで、節税できる金額は増えますし、大きな運用益が得られる可能性があります。iDeCoは、50歳からでも遅くありません。ぜひiDeCoを活用して、老後資産を準備していきましょう。
イオン銀行のiDeCoでは、資産運用がはじめてでも選びやすい商品が揃っています。また、金融機関に支払う運営管理手数料も無料(※)。低コストでiDeCoを利用できます。窓口は土日を含めて年中無休で相談できますので、まずは店舗に足を運んでみてくださいね。
お申込みに際しては、以下の留意点を必ずご確認ください。
高山 一恵
ファイナンシャルプランナー(CFP)
(株)Money&You取締役
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。月400万PV超の女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』やチャンネル登録者1万人超のYouTube「Money&YouTV」を運営。
著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)など著書累計170万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。