転職しても平気!個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)も一緒に連れていこう!
執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|辻本 ゆか
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年々増える転職率
働き方が多様化している昨今。一つの会社で定年まで働き続けることが当たり前だった時代から、転職をしてキャリアアップを目指すことが特別ではない時代となってきました。そこで気になるのが、これまで積み立てているiDeCo(個人型確定拠出年金)のこと。
会社員が転職した場合、iDeCoはどうすれば良いのでしょうか。
- iDeCoは自由に持ち運べる
- ケース(1)転職先に企業年金がない場合
- ケース(2)転職先に企業年金制度がある場合
- 公務員になった場合
- ケース(3)自営業者等の場合
- ケース(4)専業主婦等の場合
- 運用指図者になるとどうなる?
- 今回のまとめ
iDeCoは自由に持ち運べる
確定拠出年金制度には「企業型」と「iDeCo(個人型)」の2種類があります。
「企業型」は企業が退職金制度として企業型確定拠出年金を導入し、原則掛金は事業主が支払い従業員を加入させています。一方、iDeCoは個人が自分の意志で加入し掛金を支払います。
どちらも原則60歳までの期間、引出しや脱退はできません。転職や退職をしても運用資産を持ち運べるというポータビリティ制度があります。
iDeCoは2017年1月より加入できる人の範囲が拡大し、多くの人がせっかく始めた積み立てを断念することなく続けられるようになりました。ただし、会社員や公務員、自営業など、どんな職業に就くかによって加入条件や月々の掛金の上限が異なります。
職業等 | 掛金の上限額 |
---|---|
ケース(1) 企業年金のない会社の従業員 (国民年金第2号被保険者) |
対象者① 27.6万円/2万3,000円(月額) |
ケース(2) 企業年金のある会社の従業員 (国民年金第2号被保険者)
企業型確定拠出年金のみに加入の方 ②-2 企業型確定拠出年金以外の企業年金に加入の方
|
対象者②-1 24万円/2万円(月額) 対象者②-2 14.4万円/1万2,000円(月額) |
ケース(3) 自営業者等(国民年金第1号被保険者) |
対象者③ 81.6万円/6万8,000円(月額) |
ケース(4) 専業主婦等(国民年金第3号被保険者) |
対象者④ 27.6万円/2万3,000円(月額) |
また、転職先によって必要となる手続きも変わってきます。まずはしっかりiDeCoを持ち運べるよう、それぞれどのような手続きが必要なのか見ていきましょう。
ケース(1)転職先に企業年金がない場合
転職先に企業年金制度がない(厚生年金基金や確定給付企業年金など確定給付型の企業年金制度・企業型確定拠出年金のどちらも導入していない)場合、以下の①または②のいずれかから選ぶことができます。
①iDeCoの掛金積み立てを継続する
この場合、手続きとして「加入者登録事業所変更届」と、転職先の「事業主証明書」を、契約している金融機関(運営管理機関)に提出する必要があります。なお、ひと月の掛金上限額は2万3,000円。上限が変わったことにより月々の掛金の額を変更する場合は、「加入者登録事業所変更届」に記入します。
②「運用指図者」になる
「資格喪失届」を提出することで、iDeCoの掛金の積み立てをストップし運用の指図だけができる「運用指図者」になることも可能です。
ケース(2)転職先に企業年金制度がある場合
転職先企業で確定給付型の企業年金制度に加入する場合と、企業型確定拠出年金に加入する場合とで、手続きや月々の掛金の上限に違いがあります。
まず、確定給付の企業年金制度に加入する場合は、今まで通り個人型確定拠出年金を利用することができます。転職先に企業年金がない場合と同様に、そのままiDeCoの掛金積み立てを継続するか「運用指図者」になるかを選びます。その他、転職先の企業の規約でiDeCoの資産受け入れが可能であれば、年金資産を転職先の確定給付企業年金へ移換することが可能です。できれば前もって転職先企業の担当部署に確認をしておくと安心です。
企業型確定拠出年金に加入する場合については、以下の①②③のいずれかから選ぶことができます。
①転職先企業が実施する「企業型確定拠出年金」へ移換する
今までiDeCoで運用していた個人別管理資産を企業型の確定拠出年金に移換します。
この場合、手続きとしてiDeCoの「資格喪失届」の提出と企業型への移換手続きが必要です。
②iDeCoの掛金積み立てを継続する
企業型の規約でiDeCoへの加入を認めている場合は、移換せずにiDeCoの掛金積み立てを継続することも可能です。この場合、手続きとして「加入者登録事業所変更届」と、転職先の「事業主証明書」を、契約している金融機関(運営管理機関)に提出してください。なお、ひと月の掛金上限額は2万円(他に企業年金制度がない場合)。上限が変わったことにより月々の掛金の額を変更する場合は、「加入者登録事業所変更届」に記入します。
③「運用指図者」になる
「資格喪失届」を提出することで、「運用指図者」になることも可能です。
公務員になった場合
2017年1月より公務員もiDeCoに加入できるようになったため、今まで通りiDeCoを利用することができます。ひと月の掛金上限は1万2,000円となります。転職先に企業年金がない場合と同様に、そのまま掛金の積み立てを継続するか運用のみ行う「運用指図者」になるかを選びます。継続する場合の手続きは「加入者登録事業所変更届」と、転職先の「事業主証明書(共済組合員用)」を、「運用指図者」になる場合は「資格喪失届」を、契約している金融機関(運営管理機関)に提出してください。
ケース(3)自営業者等の場合
引き続き、iDeCoに加入することが可能です。ただし、国民年金の保険料を納めている、または、国民年金保険料の免除を受けていないなど加入の条件を満たしている必要があります。ひと月の掛金上限は、国民年金基金の限度額と併せて6万8,000円。継続する場合の手続きは「加入者登録事業所変更届」を、「運用指図者」になる場合は「資格喪失届」を、契約している金融機関(運営管理機関)に提出してください。
ケース(4)専業主婦等の場合
2017年1月より専業主婦等もiDeCoに加入できるようになりました。ひと月の掛金上限は、2万3,000円。継続する場合の手続きは「被保険者種別変更届」を、「運用指図者」になる場合は「資格喪失届」を、契約している金融機関(運営管理機関)に提出してください。
運用指図者になるとどうなる?
運用指図者である期間は、60歳等で一時金として受取る場合の退職所得控除額を計算する際に使用する「退職所得控除の勤続年数」にカウントされません。例えば、加入期間が15年あったとすると本来ならば15年すべてが勤続年数にカウントされますが、そのうち1年運用指図者の期間があったなら、(15年-1年)の14年が勤続年数になってしまうのです。
つまり、運用指図者である期間は、iDeCoを活用するメリットである掛金の拠出時、運用時、受取時のうち、拠出時と受取時の2つで税制優遇が受けられないということです。
企業や働き方によっては退職金が用意されないこともありますが、iDeCoに加入することによって自分で退職金を準備できるという安心感も生まれます。家計と相談しながら状況に応じて掛金を増減したり、転職の際には手続きを忘れずに行ったり、無理のない範囲でコツコツ積み立てを続けましょう。
今回のまとめ
- iDeCoには退職時に持ち運びができる制度(ポータビリティ制度)がある
- 転職先によって必要となる手続きや掛金の上限に違いがある
- 運用指図者になるとiDeCoのメリットが活かせない
- コツコツ積み立てをすることで、自分で退職金を準備できるという安心感が生まれる
- ※ 本ページは2018年9月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
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