
厚生労働省「就労条件総合調査」では、5年ごとに会社規模別(従業員の人数別)の退職金制度の状況を調査・公表しています。まずは退職金制度のある会社の割合から見てみましょう。2013年調査と2018年調査の結果を並べたのが次のグラフです。
退職金制度のある会社の割合は2013年から2018年にかけて5%上昇。約8割の会社に退職金制度があります。また、会社規模別に見ると、従業員の多い会社ほど退職金制度があることがわかります。2013年から2018年にかけて、従業員1,000人以上の会社の導入率のみ若干減少していますが、それよりも小さな規模の会社の導入率は増加しています。
また、30人未満の会社についてはこの調査にデータがないのですが、参考までに「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」(東京都産業労働局)を見ると、10人~299人の都内中小企業の退職金制度の導入率は71.3%となっています。
会社の規模の大小で、退職金制度の導入率は多少違うのですが、それでも約8割の会社で退職金制度を導入しています。
大企業と中小企業の退職金の金額を勤続年数別にまとめたのが次の表です。
勤続年数 | 総合職 | 一般職 | ||
---|---|---|---|---|
会社都合 | 自己都合 | 会社都合 | 自己都合 | |
10年(32歳) | 312.8万円 | 186.1万円 | 245.9万円 | 137.5万円 |
20年(37歳) | 965.9万円 | 801.8万円 | 746.2万円 | 525.5万円 |
30年(52歳) | 2012.9万円 | 1898.3万円 | 1218.6万円 | 1123.6万円 |
38年(60歳) | 2686.4万円 | 2659.7万円 | 1608.5万円 | 1550.2万円 |
勤続年数 | 会社都合 | 自己都合 |
---|---|---|
10年(32歳) | 148.3万円 | 113.5万円 |
20年(37歳) | 425.0万円 | 353.4万円 |
30年(52歳) | 785.6万円 | 705.9万円 |
38年(60歳) | 1118.9万円 | - |
大企業(総合職)の退職金の額は中小企業のおよそ2倍程度になっています。大企業(一般職)と中小企業を比較しても、1.5倍程度はあります。勤続年数38年になると、大企業(総合職)と中小企業では1,500万円近い差ができることがわかります。
退職には大きく「会社都合退職」と「自己都合退職」の2種類があります。
会社都合退職は、解雇や退職勧奨などをうけて、会社の都合で退職することです。労働者が希望退職制度に応募して退職した場合も会社都合退職となります。定年退職も会社都合に分類されます。一方、自己都合退職とは転職や結婚、引っ越し、家庭の事情など、労働者の都合で退職することです。
退職金の金額は、会社都合退職の方が高くなります。また退職後、雇用保険から受け取れる失業給付金の給付開始時期や給付期間も、会社都合退職のほうが有利になっています。
自分の会社に退職金制度があるかどうか不安な方は、会社の総務部や経理担当者などに確認してみましょう。またおおよその金額についても、聞きにくいと思われる方もいますが、遠慮なく聞いてみてください。きちんと教えてくれるはずです。
そうやって確認した結果、もし「退職金がない」「思ったより少ない」ということがわかったら、老後資金作りに早急に取りかかる必要があります。
2019年に金融庁が「老後資金は2,000万円不足する」と発表し、話題になったのはまだ記憶に新しいところです。老後の生活費は公的年金だけではカバーできず、個人差こそありますが自助努力で2,000万円程度必要になるのは目に見えているのです。「退職金だけでは2,000万円に届かない」というのであれば、今からコツコツ準備をしていきましょう。
おすすめはお得な税制優遇制度を生かした積立投資。つみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)やiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)などの制度を利用することです。
つみたてNISAは、投資で得られた利益(運用益)にかかる税金をゼロにできる制度です。本来、投資では運用益に約20%の税金がかかります。しかし、「つみたてNISA」なら非課税になりますから、普通に投資するよりも効率よくお金を増やせる可能性があります。
つみたてNISAでは、毎月投資信託などを毎回決まった金額分ずつ買っていく「積立投資」を行います。積立投資は堅実にお金を貯めて増やす「投資の王道」です。
つみたてNISAで投資できる金額の上限は年間40万円までで、非課税となる期間は20年。投資できる商品は金融庁が定めた基準を満たす商品のみとなっています。長い期間コツコツと続けることで、増えたお金がさらなるお金を生み出す「複利」の効果も期待できます。
またiDeCoは、老後資金を自分で積み立てて作る制度です。つみたてNISAと同じく、積立投資で得られた利益にかかる税金をゼロにできます。基本的に、20歳〜60歳未満の国民年金被保険者であれば誰でも加入できます。
さらに、iDeCoでは掛金が全額「所得控除」できるため、所得税や住民税の負担を軽減できます。例えば、所得税の税率が10%の人がiDeCoで年間24万円(2万円×12カ月)積み立てた場合、節税できる金額は、住民税(10%)と合わせて24万円×20%=4万8,000円となります。毎年24万円を貯めながら、年間4万8,000円の節税もできるお得な制度なのです。
イオン銀行では、つみたてNISAやiDeCoの口座を開設して、老後資金作りをスタートできます。つみたてNISAでは20種類の投資信託の中から自分好みの商品を選べます。またiDeCoでは金融機関に支払う手数料(運営管理手数料)が0円となっているため、より効率よくお金を貯められます(別途国民年金基金連合会や事務委託先金融機関の手数料がかかります)。
お申込みに際しては、以下の留意点を必ずご確認ください。
頼藤 太希
マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。
『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)など書籍100冊、著書累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki