税務署が教えない「公的年金等控除」の最大活用法とは?計算方法も解説

2026.8.26

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【この記事を読んでわかること】

  • 公的年金等控除は、公的年金などの年金収入から所得税や住民税を計算するときに差引くことのできる金額
  • 公的年金等控除の金額は、年金などの収入の合計額や年齢によって変わる。最低額は65歳未満ならば60万円、65歳以上ならば110万円
  • 公的年金等控除の活用方法としては「年金を片方だけ繰り下げる」「70歳まで働きながら控除を生かす」「iDeCoの受取りに公的年金等控除を使う」がある

年金生活者も年金額が一定額を超えると税金が引かれます。しかし、「公的年金等控除」を上手に活用すれば税金を減らし、手取りを増やすことができます。
今回は、公的年金等控除の活用法を紹介します。

公的年金等控除とは?

公的年金等控除とは、公的年金などの年金収入から所得税や住民税を計算するときに差引くことのできる金額(控除額)です。

税金は年金収入の全額にかかるわけではありません。年金収入から一定額を差引いて算出した「所得」をもとに計算します。このとき差引くことができるのが、公的年金等控除です。

所得は全部で10種類あります。そのうち、公的年金などの年金収入から公的年金等控除を差引いた所得は「雑所得」に区分され、課税の対象になります。

公的年金等控除の対象になる年金には、国民年金・厚生年金・共済年金のほか、年金形式で受取る退職金、iDeCo(個人型確定拠出年金)、企業型DC(企業型確定拠出年金)、DB(確定給付企業年金)、国民年金基金などがあります。
なお、障害年金や遺族年金は「非課税所得」で、課税の対象にはなりません。

公的年金等控除額とは、いくらなのか

公的年金等控除額は、年金などの収入の合計額や年齢(65歳未満・65歳以上)によって変わります。

<公的年金等控除の金額>

  • この表は横にスクロールできます
年金等の収入の合計(A)公的年金等控除
65歳未満65歳以上
60万円超~130万円以下60万円110万円
130万円超~330万円以下(A)×25%+27.5万円
330万円超~410万円以下(A)×25%+27.5万円
410万円超~770万円以下(A)×15%+68.5万円
770万円超〜1,000万円以下(A)×5%+145.5万円
1,000万円超195.5万円
  • 公的年金等にかかる雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合

(株)Money&You作成

公的年金等控除の最低額は65歳未満ならば60万円、65歳以上ならば110万円です。年金収入が65歳未満で60万円以下、65歳以上で110万円以下であれば、年金の所得(雑所得)はゼロになります。年金収入以外に所得がなく、各種控除を考慮した課税所得がない場合は、所得税や住民税はかかりません。

所得控除でも税額を減らせる

年金収入が60万円・110万円を超えても、税金が必ずかかるとはかぎりません。税金の計算は、公的年金等控除後の雑所得からさらに「所得控除」を引いたあとの「課税所得」をもとに計算するからです。

所得控除は、本人や家族の状況、災害や病気といった個人の事情によって、税負担を軽くする制度です。全部で16種類あります。なかでも、1年間の合計所得金額が2,500万円以下であれば控除が受けられる「基礎控除」は、ほとんどの方が受けられる控除です。2026年分の所得税の基礎控除額は、所得金額に応じて異なり、最大104万円です。住民税の基礎控除額は43万円です。

たとえば、収入が年金収入のみ年間180万円(月15万円)の65歳以上の場合、公的年金等控除と基礎控除を受けると、所得税の金額は以下のような計算となり、課税所得はゼロになります。

  • 年金収入:180万円
  • 雑所得:180万円−110万円(公的年金等控除)=70万円
  • 課税所得:70万円−104万円(2026年の所得税の基礎控除)=0円

所得税は課税所得に応じて5〜45%の税率をかけ、一定の控除額を差引いて算出しますが、課税所得がゼロならば所得税もゼロになります。

住民税は基礎控除の金額が変わり、以下のようになります。なお、住民税は前年の所得をもとに計算されます。

  • 年金収入:180万円
  • 雑所得:180万円−110万円(公的年金等控除)=70万円
  • 課税所得:70万円−43万円(住民税の基礎控除)=27万円

住民税の税率は10%(所得割)+5,000円(均等割)ですので、この例では「27万円×10%+5,000円=3万2,000円」となります。

基礎控除のほかにも所得控除(社会保険料控除や生命保険料控除など)が適用されることがあるのであくまで参考の計算となりますが、年金にかかる税金のイメージをつかんでいただくためにご紹介しました。

公的年金等控除の活用法は?

公的年金等控除は、年金を受取っている方ならば給与収入があっても利用できます。それを生かして、公的年金等控除を活用する方法を考えてみましょう。

公的年金等控除 活用法
公的年金等控除 活用法

年金を「片方だけ」繰り下げる

年金は原則として65歳から受取ることができますが、希望すれば60~75歳の間の好きなタイミングで受給を開始できます。60~64歳までに受給することを「繰り上げ受給」、66~75歳までに受給することを「繰り下げ受給」と呼びます。
繰り上げ受給は、1カ月早めるごとに0.4%ずつ受給率が減少し、60歳から受給すると、受給率は76%(24%減額)となります。
繰り下げ受給は、1カ月繰り下げるごとに0.7%ずつ受給率が増加し、75歳から受給すると、受給率は184%(84%増額)となります。

年金の繰り上げは老齢基礎年金・老齢厚生年金を同時にしなくてはなりませんが、繰り下げは老齢基礎年金・老齢厚生年金を別々にできます。65歳になったら、公的年金等控除によって税負担を抑えられる範囲で受取ることを考えます。

老齢基礎年金の満額は年間84万7,300円(2026年度)ですので、老齢基礎年金だけ65歳から受取って、老齢厚生年金は繰り下げれば、老齢基礎年金は公的年金等控除の範囲内に収まり、結果として公的年金等に係る雑所得がゼロになります。よって、受取る老齢厚生年金を増やすことができます。仮に、65歳時点の老齢厚生年金が年間95万円(老齢基礎年金と合わせて約180万円と想定)ならば、70歳まで繰り下げることで老齢厚生年金額が年間約134万9,000円になる計算です。老齢基礎年金と合わせると、年金額は年間約219万6,000円になります。

老齢厚生年金が年間110万円に満たないのであれば、老齢基礎年金だけ繰り下げて老齢厚生年金を受給するのでもいいでしょう。配偶者が万が一亡くなった場合に受取る遺族厚生年金は、自身の老齢厚生年金との調整が行われるため、老齢厚生年金を繰り下げて増額しても、その分だけ遺族厚生年金が減り、受給額全体の増加効果が小さくなる場合があります。老齢基礎年金は遺族厚生年金との調整の対象ではないため、繰り下げによる増額効果をそのまま享受しやすいというメリットがあります。

「働きながら年金をもらう」=「給与所得控除と公的年金等控除を生かす」

給与収入と年金収入の2つがある場合、給与収入には「給与所得控除」、年金収入には「公的年金等控除」が適用されて、それぞれの所得を計算します。働いていれば年金の繰り下げも選びやすいですし、給与収入と年金収入にそれぞれ控除が適用されるため、課税対象となる所得を抑えることができます。年金を片方繰り下げる場合でも、上記で紹介した公的年金等控除が使えますので、税金を減らせます。

さらに、給与と年金の両方を受取っている場合は「所得金額調整控除」が利用でき、給与所得と年金所得の合計額から最大10万円控除できるので、その分税金を減らすことができます。
厚生年金には70歳まで加入でき、年金額を増やすことができる点も、70歳まで働く大きなメリットになります。

iDeCoの受取りに公的年金等控除を使う

iDeCoは自分で出した掛金を運用して60歳以降に受取る制度で、税負担を軽減しながら老後資金を用意できます。
iDeCoの受取り方には、一括でまとめて受取る「一時金」、5年〜20年の間で分割して受取る「年金」、両者を併用する「一時金&年金」の3種類があります。

一時金で受取る場合、「退職所得控除」が利用でき、税額を大きく減らすことができます。ただ、退職所得控除は退職金を一括で受取るときにも使います。
退職金の退職所得控除は「勤続年数」、iDeCoの退職所得控除は「加入年数」によって金額が決まるのですが、勤続年数と加入年数の重複する期間の退職所得控除は使えません。そのため、退職金とiDeCoを同時に受取ると税金の負担が大きくなってしまう可能性があります。

退職金を一時金で受取り、iDeCoは年金で受取るようにすれば、退職金には退職所得控除、iDeCoには公的年金等控除が利用できるので、その分税金を減らすことができます。

70歳までは再雇用で働き、公的年金は70歳まで繰り下げておけば、iDeCoの受取りに公的年金等控除をフル活用できます。

勤続年数30年、iDeCoの加入年数15年、退職金1,800万円、iDeCo450万円(退職所得控除の年数はすべて重複)の場合、次のような違いが生まれます。

(1)60歳で退職金とiDeCoの両方を一時金で受取る場合

退職所得:(2,250万円−1,500万円)×1/2=375万円
所得税 :375万円×20%※1−42万7,500円=32万2,500円
住民税 :375万円×10%※2=37万5,000円

→納める税金…69万7,500円、手取り…2,180万2,500円

  • 1 所得税は課税される所得金額によって税率が異なります。上記の試算では課税される所得が375万円となりますので、所得税は20%となります。
  • 2 住民税の税率は一律10%です。

(2)退職金は60歳に一時金、iDeCoは60~69歳に年金で受取る場合

(退職金)所得税+住民税=22万5,000円
(iDeCo)毎年45万円受取り
60〜64歳:45万円−60万円となり非課税
65〜69歳:45万円−110万円となり非課税

→納める税金…22万5,000円、手取り…2,227万5,000円

上記の例では、退職金とiDeCoを同時に一時金で受取る場合(1)に比べて、退職金を一時金で受取り、iDeCoを年金で受取ることで、それぞれ異なる控除を活用した場合(2)では、税負担は約47万2,500円軽減され、手取り額が約47万2,500円増える結果となりました。

このように、「退職所得控除」と「公的年金等控除」という異なる2つの控除を活用することで、iDeCoと退職金の受取りにかかる税負担を抑えられる可能性があります。受取り方法や受取るタイミングを工夫することが、手取り額を増やすポイントです。

公的年金等控除をフル活用しよう

公的年金等控除は年金にかかる税金を減らせる仕組みです。60歳から使う権利がありますので、使わないのではもったいないですよね。老後のお金を最大化するためにも賢く活用していきましょう。

  • 本ページは2026年8月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性など内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。

お申込みに際しては、以下のご留意点を必ずご確認ください。

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頼藤 太希

経済評論家・マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」(※現在は放送終了)、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、書籍110冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。X(@yorifujitaiki)

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