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【この記事を読んでわかること】
「定年は60歳」でも、60歳から再雇用・再就職で引続き働く方は多くいます。内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、男性の就業者は60〜64歳で84.0%、65〜69歳で62.8%。女性の就業者は60〜64歳で65.0%、65〜69歳で44.7%となっています。
将来の年金額を増やすことを目的に働いている方だけではないかもしれませんが、60歳以降も厚生年金に加入して働くことで、年金額を増やすことができます。
では、60歳で退職してその後働かなかった場合と、年収が半分になっても65歳・70歳まで働く方では、毎年の年金額はいくら変わるのでしょうか。
日本の公的年金には、国民年金と厚生年金の2種類があります。
国民年金は、20歳から60歳までのすべての方が加入する年金です。40年間にわたって所定の国民年金保険料を支払えば、誰もが満額の年金を受取ることができます。
国民年金から受取れる老後の年金を老齢基礎年金といいます。
老齢基礎年金の満額は月額7万608円、年額にすると84万7,300円です(2026年度の金額。昭和31年(1956年)4月1日以前生まれの方は月額7万408円、年額84万4,900円)。
もらえる年金額は毎年変動し、インフレ・賃金上昇が続いていくと、年金額は増えていく仕組みとなっています。このあと説明する厚生年金も同じです。
厚生年金は、会社員や公務員が勤務先を通じて加入する年金です。会社員や公務員は、毎月の給料から厚生年金保険料が天引きされています。
給与が高いほど、加入年数が長いほど、納める厚生年金保険料が増え、老後に受取れる厚生年金の金額が増えます(ただし、上限はあります)。厚生年金から受取れる老後の年金を老齢厚生年金といいます。
老齢厚生年金の金額は「平均標準報酬額×0.005481×加入期間の月数」でざっくりと計算することができます。
平均標準報酬額とは、毎月の標準報酬月額と標準賞与額の総計を加入月数で割った金額のことです。標準報酬月額は、4月~6月に支給された報酬の平均額から計算した標準月額を32等級に分類したもので、上限は32等級の65万円です(なお、今後35等級・75万円まで段階的に引上げられる予定です)。
賞与にかかる保険料は賞与の金額から千円未満の端数を切り捨てた金額に保険料率をかけた額で、上限は月額150万円です。なお、賞与とみなされるのは、支給回数が年3回以下のものです。
これをもとに計算すれば年金額がわかるのですが、自分で計算するのでは大変です。2026年度の年金早見表で自分の年金額を大まかに確認しましょう。
<2026年度の年金早見表>
厚生年金 加入期間 | 5年 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 | 37年 | 40年 | 42年 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢 | 28歳 | 33歳 | 38歳 | 43歳 | 48歳 | 53歳 | 58歳 | 60歳 | 63歳 | 65歳 | |
| 生涯の平均年収 | 200万円 | 90.3万円 | 95.9万円 | 101.5万円 | 107.1万円 | 112.7万円 | 118.3万円 | 123.9万円 | 126.1万円 | 129.5万円 | 131.7万円 |
| 300万円 | 93.3万円 | 101.8万円 | 110.4万円 | 118.9万円 | 127.5万円 | 136.0万円 | 144.6万円 | 148.0万円 | 153.1万円 | 156.6万円 | |
| 400万円 | 95.9万円 | 107.1万円 | 118.3万円 | 129.5万円 | 140.6万円 | 151.8万円 | 163.0万円 | 167.5万円 | 174.2万円 | 178.7万円 | |
| 500万円 | 98.2万円 | 111.7万円 | 125.2万円 | 138.7万円 | 152.1万円 | 165.6万円 | 179.1万円 | 184.5万円 | 192.6万円 | 198.0万円 | |
| 600万円 | 101.2万円 | 117.6万円 | 134.1万円 | 150.5万円 | 166.9万円 | 183.4万円 | 199.8万円 | 206.4万円 | 216.3万円 | 222.9万円 | |
| 700万円 | 104.1万円 | 123.5万円 | 142.9万円 | 162.3万円 | 181.7万円 | 201.1万円 | 220.5万円 | 228.3万円 | 240.0万円 | 247.7万円 | |
(株)Money&You作成
表の縦軸は「生涯の平均年収」、横軸は「厚生年金加入期間」です。生涯の平均年収と厚生年金加入期間の交点の金額が、65歳からもらえる老齢年金(満額の84万7,300円)+老齢厚生年金)の合計額です。この表では前述の「標準報酬月額」を用いて老齢厚生年金の金額を算出しています。
60歳(厚生年金加入期間37年)時点の年金額は、60歳で退職した場合に65歳からもらえる年金額を示しています。
たとえば、60歳で退職し生涯の平均年収が600万円だった場合、65歳からもらえる年金額は206.4万円とわかります。
国民年金は40年(480月)加入することで満額の老齢基礎年金がもらえるようになります。たとえば20歳から60歳まで40年加入していたなら、それ以上加入して老齢基礎年金を増やすことはできません。
一方、厚生年金は最長で70歳まで加入できます。60歳以降も厚生年金に加入することで、70歳までは老齢厚生年金の金額を増やすことができます。
60歳以降も厚生年金に加入した場合に増える老齢厚生年金の金額は、次の通りです。
<60歳以降働いた場合に増える老齢厚生年金の金額>
厚生年金 加入期間 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 60歳以降の年収 | 200万円 | +1.1万円 | +2.2万円 | +3.3万円 | +4.4万円 | +5.5万円 | +6.6万円 | +7.7万円 | +8.8万円 | +9.9万円 | +11.0万円 |
| 250万円 | +1.4万円 | +2.7万円 | +4.1万円 | +5.5万円 | +6.9万円 | +8.2万円 | +9.6万円 | +11.0万円 | +12.3万円 | +13.7万円 | |
| 300万円 | +1.6万円 | +3.3万円 | +4.9万円 | +6.6万円 | +8.2万円 | +9.9万円 | +11.5万円 | +13.2万円 | +14.8万円 | +16.4万円 | |
| 350万円 | +1.9万円 | +3.8万円 | +5.8万円 | +7.7万円 | +9.6万円 | +11.5万円 | +13.4万円 | +15.3万円 | +17.3万円 | +19.2万円 | |
| 400万円 | +2.2万円 | +4.4万円 | +6.6万円 | +8.8万円 | +11.0万円 | +13.2万円 | +15.3万円 | +17.5万円 | +19.7万円 | +21.9万円 | |
| 450万円 | +2.5万円 | +4.9万円 | +7.4万円 | +9.9万円 | +12.3万円 | +14.8万円 | +17.3万円 | +19.7万円 | +22.2万円 | +24.7万円 | |
| 500万円 | +2.7万円 | +5.5万円 | +8.2万円 | +11.0万円 | +13.7万円 | +16.4万円 | +19.2万円 | +21.9万円 | +24.7万円 | +27.4万円 | |
(株)Money&You作成
60歳以降の再雇用・再就職では多くの場合、年収が下がります。
前述の60歳・平均年収600万円の方が、60歳以降は半分の年収の300万円で70歳まで働いたとします。このとき、増える老齢厚生年金の金額は表より65歳時点(5年)で+8.2万円、70歳時点(10年)で+16.4万円とわかります。従って、以下のようになります。
<再雇用・再就職時の年金受給額例>
【1】60歳で定年退職
→もらえる年金は年206.4万円(月額 約17.2万円)
【2】65歳まで再雇用(再就職):年収半分で働いた場合
→もらえる年金は年214.6万円(月額 約17.9万円)
【3】70歳まで再雇用(再就職):年収半分で働いた場合
→もらえる年金は年222.8万円(月額 約18.6万円)
この金額から税金や社会保険料を差引くため、上記の金額が単純な手取りにはなりませんが、10年間、年収半分で働くことで毎年の年金額は16.4万円、月額換算で約1.4万円増やせることがわかります。
60歳以降の再雇用・再就職でどのくらい年収が減るかは人それぞれ違います。上記の表では200万円から500万円まで50万円刻みで掲載していますので、実際の年収に近いところをご確認いただければと思います。
60歳以降も働くことで年金額は増やせます。年収が減ったとしても、働いて勤労収入を得ていれば、そのお金を生活費に回したり、老後のために貯めたりできます。
また、収入があれば、年金の繰り下げ受給もしやすくなります。
年金は原則として65歳から受取ることができますが、希望すれば60~75歳の間の好きなタイミングで受給を開始できます。60~64歳までに受給することを「繰り上げ受給」、66~75歳までに受給することを「繰り下げ受給」と呼びます。
繰り上げ受給は、1カ月早めるごとに0.4%ずつ受給率が減少し、60歳から受給すると、受給率は76%(24%減額)となります。
繰り下げ受給は、1カ月繰り下げるごとに0.7%ずつ受給率が増加し、75歳から受給すると、受給率は184%(84%増額)となります。
国民年金の任意加入働かないという場合でも、もしも国民年金の加入期間が40年間に満たないなら、国民年金に任意加入することができます。
任意加入では、60歳〜65歳までの5年間、自分で国民年金保険料を支払うことで、国民年金保険料の加入期間を増やせます。加入期間が1年間増えると、老齢基礎年金は年約2万円増える計算となります。任意加入によって加入期間が40年に達したら、老齢基礎年金を満額もらうことができますし、40年に達しなくても、年金額を増やすことができます。
任意加入している期間は、付加年金に加入することもできます。付加年金は、国民年金に加入している方が年金を上乗せできる制度です。国民年金保険料に月400円上乗せして付加保険料を支払うことで、老齢基礎年金の金額が「200円×付加保険料納付月数」分増えます。
仮に60~65歳までの5年間付加年金に加入すると、2万4,000円の付加保険料で老齢基礎年金が年1万2,000円増えます。年金を2年以上受取ると、支払った付加保険料を上回る年金を受取れるようになり、その後も年金を長く受取るほど受給額の増加によるメリットが大きくなります。
なお、国民年金の加入期間が40年に満たない方でも、60歳以降、厚生年金に加入して働く場合には国民年金の任意加入ができません。しかし、厚生年金には「経過的加算」という仕組みがあり、これによって基礎年金にあたる部分が充当される(上限は480月)ので、任意加入をする必要はありません。
その他、NISAやiDeCoを利用して老後資金を用意しておくことも大切です。
60歳以降働いた場合を含む年金額の目安を紹介しましたが、何よりもまず大切なのは、自分の年金額を知ることです。50歳以上の方であれば、毎年誕生日ごろに届く「ねんきん定期便」に、今のまま60歳まで加入した場合に65歳からもらえる年金見込額が記載されます。給与が少なくなったり、仕事を辞めたりしなければ、おおよそこの年金額がもらえますので、いくらなのかを確認しましょう。
ねんきん定期便に記載されている二次元コードをスマホなどで読取ると、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」が起動します。受給予定の年金額がすぐわかるうえ、「今後の平均年収」「退職する年齢」「年金を受け取り始める年齢」のスライドを左右に動かすだけで老後の年金額をシミュレーションできます。2026年度からは新たにiDeCoや障害年金についてもシミュレーションできるようになっています。
自分の年金額を知ることで、老後資金のために今後いくら用意すればいいのかが見えてきますので、ぜひ確認をしてみてください。
頼藤 太希
経済評論家・マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」(※現在は放送終了)、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、書籍110冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。X(@yorifujitaiki)
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