子育てする場合「支援制度の手厚い東京都vs家賃の安い埼玉神奈川千葉」どちらに住む方がよいのか?

執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|高山 一恵
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【この記事を読んでわかること】
- 東京都の家賃は他の自治体に比べて高い。東京都の家賃を100%とすると、埼玉県78%・神奈川県87%・千葉県76%などとなっている。
- 東京都の子育て支援は充実。毎月給付金がもらえたり、子育てにかかる費用の補助が受けられる場合がある。
「子育て世帯の経済的支援が手厚いけれど、家賃や住宅価格が高い東京」と「東京に比べ家賃が比較的安い、埼玉神奈川千葉」のどちらの方が子育てをするのによいのか、SNSでもたびたび話題になっています。そこで今回は、一都三県の家賃と子育て施策についてご紹介します。
東京都と埼玉・神奈川・千葉で家賃はどう違う?
家賃は何となく、東京が最も高いというイメージを持たれる方が多いでしょう。ただ、埼玉・神奈川・千葉とどのくらい違うのかまでは、想像がつかないかもしれません。
全国の賃貸物件の仲介・管理会社で作る「全国賃貸管理ビジネス協会」は毎月、都道府県別・間取り別の平均家賃を公表しています。それによると、2024年11月時点の一都三県の平均家賃は、次のようになっています。
<東京・埼玉・神奈川・千葉・全国の間取り別平均家賃>
全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」(2024年11月調査)より(株)Money&You作成
グラフは1部屋・2部屋・3部屋の賃貸物件の賃料をまとめたものです。左から順に、東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県です。参考までに総平均賃料(すべての間取りの平均賃料)と、全国の平均家賃も掲載しました。
グラフからはっきりわかるように、東京都の家賃はやはり他の地域を大きく上回っています。次いで神奈川県が高く、埼玉県と千葉県は大差ない(厳密には、少しだけ埼玉県の方が高い)ことがわかります。
同データによると、東京の家賃を100%とした場合の三県の家賃は以下のようになっています。
- 埼玉県 78%
- 神奈川県 87%
- 千葉県 76%
ちなみに、神奈川県は全国で東京に次いで家賃が高くなっています。
独身のときはワンルームに住んでいて、結婚を期に2部屋の賃貸に住み替えたとします。東京都や神奈川県の場合、1部屋増えることで毎月1万5,000円程度家賃が増えますが、埼玉県や千葉県の場合は6,000円〜9,000円程度増えるだけで済みます。子どもが生まれて3部屋の賃貸に住み替えるとすると、家賃はさらに1万円ほど増えます。
東京都の3部屋(月10万1,000円)と千葉県の3部屋(月7万3,000円)で比較すれば、1年間の家賃の差は実に33万6,000円にもなります。もしも20年間賃貸暮らしを続けたとすると、違いは実に672万円にもなってしまいます。
単身でいるよりも結婚することで「1人あたりの家賃」は下がるとはいえ、東京都や神奈川県では家賃の負担が比較的大きいことがわかるでしょう。
また、このデータには含まれていませんが、住み替えに際して敷金・礼金・仲介手数料、さらには保証料や引っ越し費用などがかかることも忘れてはいけません。そのうえ、人気のエリアに住もうとすると、家賃はさらに高くなります。
東京都と埼玉・神奈川・千葉で子育て施策はどう違う?
今の日本は、子どもを生み育てにくいと多くの人が考えています。子育てをすることで経済的な負担が大きくなったり、社会や職場の支援が得られなかったりすることが「子育て罰」と揶揄されたこともありました。そうしたムードが歯止めの効かない少子化の原因の1つと考えられていることから、各自治体では子育てをサポートする子育て施策を実施しています。
ただ、地域によって子育て施策にもばらつきがあるようです。そこで、東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県の主な子育て施策を見てみましょう。
なお、自治体によっては市区町村レベルで子育て施策を実施しているところもありますが、今回は一都三県の取組みに絞りました。お住まいの地域の子育て施策については、各自治体にお問い合わせください。
【東京都の子育て施策】
無痛分娩の費用助成
2025年10月から都内の病院・診療所で無痛分娩を希望する都内在住の妊婦に対して、最大10万円を助成する予定です。
東京都の調査によると、都内の分娩費用は平均で65万円となっており、出産時に支給される出産育児一時金の50万円を受取ったとしても自己負担が15万円も発生することに加えて、無痛分娩はさらに平均12万4,000円の費用がかかるとのことです。
無痛分娩は、出産の痛みを和らげ、疲労やストレスの軽減につながるため、無痛分娩の費用が助成されれば、出産の痛みに対する不安が軽減され、安心して出産できる方が増えるでしょう。
東京都出産・子育て応援事業 赤ちゃんファースト
2023年4月1日以降に出産される方に対して、妊娠時には妊婦1人あたり5万円相当、出産後には児童1人あたり10万円相当の支援を行うものです。支援の内容は自治体によって異なりますが、育児用品を購入できるクーポンや子育て支援サービスの提供などが受けられます。
子育て応援とうきょうパスポート
都内の企業や店舗などが、18歳年度末までの子どもがいる世帯や妊娠中の方がいる世帯に対して、さまざまなサービスを提供するものです。サービスの内容は企業・店舗などにより異なりますが、粉ミルクのお湯の提供、おむつ替えスペース・授乳スペース・キッズスペースなどの提供、さらには景品やポイントの提供、商品の割引など多岐にわたります。都内9,176の企業・店舗(2024年12月2日時点)でサービスを受けることができます。
018(ゼロイチハチ)サポート
都内に在住する18歳以下の子どもに対し、一人当たり月額5,000円(年額6万円)を支給する施策。子どもの育ちを切れ目なくサポートすることで「子育てのしやすい東京」を実現することを目的に支給されています。もちろん児童手当とは別のもので、所得制限などもありません。
公立小中の給食費無償化
2024年1月以降、東京都内の公立小中学校の給食費は多くの地域で無償化されています。すでに23区と半分以上の市町村で無償化されているとのことです。今後、完全無償化を目指す方向です。
高校の授業料実質無償化
高校授業料に関しては、国の「高等学校等就学支援金制度」によって下記の授業料支援が受けられます。
- 国公立高校…年11万8,800円(世帯の年収の目安:910万円まで)
- 私立高校…年39万6,000円(世帯の年収の目安:590万円まで)
または年11万8,800円(世帯の年収の目安:910万円まで)
ただ、上記のとおり世帯の年収の目安が定められており、年収が高い家庭ではその恩恵を受けられません。
しかし、東京都の場合は都内在住であれば所得制限なく高校の授業料が無料になります。
都内在住であれば都外の私立高校に通っても対象です。逆に、都外在住の子どもが都内の私立高校に通う場合は制度の対象外です。なお、私立中学に通う場合も年間10万円の補助が受けられます。
【埼玉県の子育て施策】
パパ・ママ応援ショップ
18歳年度末までの子どもがいる世帯に配られる「パパ・ママ応援ショップ優待カード」を店舗等で提示すると、割引などのサービスが受けられます。なお、3人以上の子どもがいる世帯は「多子世帯応援ショップ」で同様に割引などのサービスを受けられます。
赤ちゃんの駅
民間施設や公共施設に用意されている赤ちゃんの駅では、誰でも自由におむつ替えや授乳ができます。
【神奈川県の子育て施策】
かながわ子育て応援パスポート
県内在住の妊娠中の方や小学生以下の子どもがいる世帯が利用できる制度です。店舗等に提示することで、割引や景品の提供などのサービスを受けることができます。
かながわ子育てパーソナルサポート
LINEの公式アカウント「かながわ子育てパーソナルサポート」では、子育ての専門家にオンラインで相談ができたり、子育て支援情報を検索したりできます。また、子どもの体調が悪い場合には、かながわ救急相談センターに連絡ができます。
【千葉県の子育て施策】
チーパス
千葉の子育て優待カードです。18歳年度末までの子どもがいる18歳未満の子どもがいる世帯が利用可能で、協賛店で提示することでいろいろな子育て応援サービスを受けることができます。また、パソコン・タブレット・スマホなどから利用できる「チーパス・スマイル」では、妊娠・出産・子育てに関する情報やお知らせを受取ることができます。
このようにみてみると、東京都と埼玉県・神奈川県・千葉県ではサービスに随分と差があることがわかります。埼玉県「パパ・ママ応援ショップ」、神奈川県「かながわ子育て応援パスポート」、千葉県「チーパス」はいずれも同じようなサービスですし、東京都のように無料になるといったものもありません。家賃は東京都より安いといっても、こうした点にも注目しておきたいものです。
たとえば、018サポートで年6万円、18年間もらったらそれだけで108万円になりますし、給食費も月5,000円として9年間無料になれば54万円です。さらに高校の授業料が無償になるなどで、子育て費用を抑えることができます。東京都は確かに家賃が高いのですが、子育て施策の面ではとても配慮されているといえるでしょう。
もちろん、どこに住むかは家賃と子育て施策だけで決めるものではありません。物価・物件・住環境・仕事・利便性など、考えるべきことはたくさんあります。ただ、これから住むところを考えるというのであれば、今回紹介した家賃や子育て施策も合わせて検討したいところです。都内がよいのか、それとも埼玉県・神奈川県・千葉県がよいのかを考える際の参考にしてみてください。
- ※ 本ページは2025年1月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。