パパママ必見!妊娠、出産前に知っておくと便利な手続き、準備やお金の話
執筆者:ファイナンシャルプランナー(CFP)|高山 一恵
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妊娠すると、子どもを授かった喜びでいっぱいだと思いますが、それと同時に考えなければならないのが「お金の問題」。妊娠・出産時には1年間で50万円〜100万円程度かかるといわれています。でも、必要以上に心配する必要はありません。なぜなら、「妊娠・出産でもらえるお金」はいろいろあるからです。今回は、妊娠・出産でかかるお金ともらえるお金と将来の子どもにかかる教育費の準備方法についてお話します。
出産費用はいくらかかる?
子どもの誕生は、喜びでワクワクすると同時に、妊娠から出産まであれこれ想像すると何かとお金がかかりそう…と出産をネガティブに捉えてしまっている人も少なくないのではないでしょうか。
では、実際、出産費用はいくらかかるのでしょうか?
まず抑えておきたいのが、「妊婦検診」。妊娠すると定期的に胎児の状態をチェックするために病院で検診を受けることになりますが、基本的に妊婦検診は14回程度といわれています。検査の内容によっても違いがありますが、検診費用は1回5,000円〜10,000万円程度かかります。
次に分娩費用ですが、これは個人病院なのか総合病院なのか、有名病院なのか、個室なのか大部屋なのかによっても異なります。また、イマドキは分娩スタイルにこだわる人も多く、一般的な分娩方法は自然分娩ですが、水中分娩や無痛分娩などを選択する人も増えてきています。
このように選ぶスタイルによって分娩入院費は40万円〜100万円を超えるものまでありますが、「国民健康保険中央会正常分娩分の平均的な出産費用について(平成28年度)」によると、全国平均は約50万5,000円とのこと。地域差もあり、出産費用が最も高い東京都の平均は約62万円、最も低い沖縄県だと平均約42万円のようです。
その他にもおむつ、ミルク、肌着、抱っこ紐、などのベビーグッズの準備も必要です。
株式会社ベネッセコーポレーションが運営する「たまひよ」の先輩ママDATA(たまひよインターネット調査(2017年3月、2019年9月実施))によると、ベビーグッズの準備費用は平均で14万円程度のようです。ただし、最初にあれもこれもと買いすぎす、子どもの成長に合わせて必要になったら買い足していくというスタンスで臨むと買いすぎを防ぐことができます。
知っておきたい妊娠・出産でもらえるお金
こうやってみてくると、やっぱり出産ってお金がかかる!と思ってしまうと思いますが、実はこの大きな費用を補ってくれるさまざまな制度があります。
まずは、妊婦健診の費用を助成する「妊婦健診助成金制度」。上記でお話したように、1回の健診費用は、5,000円〜10,000円程度と、決して安くありません。一般的には、14回の健診で10万円程度かかるようです。そこで、妊婦健診にかかる費用負担を減らすため、各自治体で妊婦健診の費用を一部助成するために「妊婦健診の補助券」を妊婦さんに配布しています。
妊娠すると、お住まいの自治体で母子手帳を受け取りますが、母子手帳を受け取る際にもらえる健診券(補助券)を健診時に渡すことで、無料で健診が受けられるようになります。ただし、14回を超える健診や、基本的な内容を超える検査については実費負担となることが多いようです。このあたりは、お住まいの自治体によって助成の内容が異なりますので、各自治体に確認しましょう。
次に、分娩費用を賄ってくれる「出産育児一時金」。健康保険や国民健康保険から42万円(利用している医療機関が産科医療補償制度を導入していない場合は40万4,000円)が支払われます。夫の扶養に入っている人は、夫の加入する健康保険からの支給となります。つまり、出産する施設や分娩方法にこだわりを持たなければ分娩費用のほとんどを賄うことができるわけです。
さらに嬉しいことに出産育児一時金を健康保険から医療機関に直接支払ってもらう「直接支払制度」があります。この制度を利用すれば、自分が支払うお金は出産育児一時金でまかなえなかった分だけでよいので、持ち出しが少なくて済みます。また、直接支払制度に応じていない病院では、「受取代理制度」が適用になります。自分で書類を書き、健康保険組合などに提出します。こちらも直接病院に支払われるので、自分のお金を持ち出さなくてすみます。この2つの対象にならなかった場合には、産後に申請することもできます。なお、出産後に出産育児一時金を受け取る場合は、請求期限は「出産翌日から2年以内」ですので請求漏れがないよう注意しましょう。
他にワーキングマザーが受け取れるお金として、「出産手当金」「育児休業給付金」があります。
健康保険に加入している働くママさんには、「産前の6週間(42日)と産後の8週間(56日)あわせて98日」はいわゆる産休として、休むことが認められています。特に産後の6週間は、法律で必ず休まなければいけないと定められています。ただし、休むことが認められていても、会社はその間、給料を支払うことを義務付けられていません。つまり、産休を取ったのはいいけれど、収入が途絶えてしまうこともあるわけです。
そこで産休中の給料を補ってくれるありがたい存在が「出産手当金」です。健康保険に入っていれば、支給日額に会社を休んだ日数分受け取ることができます。ちなみに、支給日額は、「支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した金額を30日で割り、その金額に2/3を掛けた金額」です。
仮に支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額が25万円だった場合、支給日額は、5,555円となります。産休を98日とると、「5,555円×98日分=約55万円」もらえます。出産予定日より出産が遅れた場合は支給額が多くなり、早まった場合は少なくなります。
産休に入る前に、会社から健康保険出産手当金支給申請書をもらっておきましょう。書類に記入し、出産後に病院から証明書を受け取り、健康保険組合に申請します。申請後、1〜2カ月後に指定の口座に振り込まれます。
産休が終わると、今度は、育児休業に入る人は多いでしょう。原則として、子どもが1歳になるまで育休を取ることが可能なのですが、その間会社は給料を支払う義務はありません。この間の収入減をカバーするのが「育児休業給付金」です。
「育児休業給付金」は、雇用保険に加入していて、育児休業開始前の2年間のうち12カ月間、各月の労働日数が11日を超えている人が受け取れる制度。契約社員やパートも対象になります。原則子どもが満1歳になるまで受け取ることができますが、認可保育園に申し込んだものの空きがなく、市町村から「不承諾」の通知書を受取っている場合には1歳6カ月まで延長することができます。さらに、「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。
パパ・ママ育休プラスとは、2010年6月から導入された制度で両親ともに育児休業をとった場合の特例。父親が育児休暇を取得して育児参加をすることによって従来は1年だった育児休業期間をさらに2カ月延長させることができるというものです。
育児休業給付金の金額ですが、従来はお給料(休業開始時賃金日額×賃金日数)の50%が支給されていましたが、2014年4月から育休に入って最初の6カ月間については67%に引き上げられています。その後の6カ月間は50%支給されます。人によっては、1年育休で休んだ場合、給付金が100万円以上になることもあります。
育児休業給付金の手続きは、勤務先の所在地を管轄する公共職業安定所で行い、勤務先を通じて、2カ月ごとに申請します。ちなみに、産休、育休中の健康保険や厚生年金保険料は免除されます。保険料を支払わないからといって、将来の年金が減るということはありません。かなりおトクな制度だと言えますね。
出産後は何かと忙しいので、出産前にもらえるお金のリストを作成し、もらい忘れのないように準備しておきましょう。
妊娠・出産でもらえるお金
助成制度 名称 |
届先 | 内容 |
---|---|---|
妊婦健診 費用助成 |
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妊娠すると、妊娠の経過が順調か定期的に健診を受ける。妊婦健診の標準的な受診回数は14回程度。1回5,000円〜1万円かかる。この費用を自治体が助成。ただし、市区町村によって、助成の内容は異なる。 |
出産育児 一時金 |
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健康保険に加入している本人、またはその配偶者など、なんらかの健康保険に加入している人は、子ども1人につき42万円が支給される。42万円のうち1万6,000円は、産科医療補償制度の掛け金なので、産科医療補償制度に加入していに医療機関の場合、40万4,000円の支給になる。産後申請の場合は、申請期限は、出産日の翌日から2年以内。 |
児童手当 |
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中学校卒業までの子どもを養育している人がもらえる。支給額は、0〜3歳未満が1万5,000円、3歳〜15歳まで1万円。毎年6月、10月、2月に前月までの4カ月分が支給される。基本的に児童手当は子どもが生まれてから15日以内に居住地の役所に申請することで翌月分からもらうことができる。毎年6月に市区町村から届く現況届を提出しないと、支給が受けられなくなるため注意が必要。 |
出産手当金 |
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産休に入る前に、勤務先から「健康保険出産手当金支給申請書」をもらっておき、書類に必要事項を記入。出産後に病院から証明書を受け取り申請へ。 会社員や公務員など、健康保険に加入している人で産休中に給料が減額されたり、なくなった場合に支給。出産予定日の前42日、出産56日の計98日間、標準報酬日額の3分の2がもらえる。 |
育児休業 給付金 |
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育児休業を取得する父親、母親に支給される。原則、子どもが1歳になる前日まで支給されるが、「パパ・ママ育休プラス制度」を使って、父母が時期をずらして、育休を取得する場合は、1歳2カ月まで延長できる。支給額は休業から6カ月までは、賃金の67%、6カ月以降は、賃金の50%が支給される。 |
将来の教育費に向けて子どもが小さいうちから準備しておこう
今まで見てきたように、妊娠・出産に関する費用は、妊娠・出産をサポートするさまざまな助成制度があるので、必要以上に心配する必要はありません。
むしろ、きちんと考えておかなくてはならないのが、今後の子どもの教育費のこと。
特に子どもが小さいうちは、お稽古事などに費用はかかりますが、まだ本格的に教育費はかからないので、お金を貯めるチャンスです。また、2019年から「幼児教育・保育無償化」がスタートしており、0歳〜2歳については、住民税非課税世帯の子どものみが無償化の対象ですが、基本的にすべての3歳から5歳児の幼稚園、保育所、認定子ども園等の利用料が無料になっています。利用料金が無料になった分、将来の教育費のためにしっかり貯めておきたいところです。
教育資金として有効に活用したいのが、「児童手当」です。児童手当は、居住している自治体から0歳~中学校修了(15歳に到達後の最初の年度末)までの児童を養う保護者に支給されます。もらえる金額は以下のとおりです。
児童手当の支給額
0~3歳未満 | 一律15,000円 | |
---|---|---|
3歳~小学校修了前 | (第2子まで) | 10,000円 |
(第3子以降) | 15,000円 | |
中学生 | 一律10,000円 | |
所得制限額以上 | 一律5,000円 |
仮に子どもが0歳のときから児童手当を15年間フルに貯めたとすると約200万円になります。児童手当は、年3回、2月・6月・10月の10日に4カ月分がまとめて支給されますが、振込先は生活費口座とは別口座に設定して隔離しておきましょう。中学卒業までに200万円貯蓄できていれば安心ですね。児童手当を受け取るための手続き(現況届の提出)は毎年行う必要があるので忘れないようにしましょう。
ただし、教育費のピークである大学入学時(子ども18歳)には、300万円〜500万円を準備しておきたいところです。教育費は、ピンポイントで使う時期が決まっているので、まずは、確実性を重視して商品を選ぶことが大切です。
確実性を重視した王道商品といえば、財形貯蓄や銀行の自動積立定期預金でしょう。会社に財形制度があれば、簡単な手続きをするだけで給与からお金を天引きして貯めてくれます。税制優遇のようなものはありませんが、スタートから1年たてば、自由に引き出し可能です。
財形貯蓄の制度が会社にない場合、銀行の自動積立サービスを利用しましょう。毎月指定した日に銀行口座から自動的にお金を引き出し、定期預金に預け入れてくれます。
財形貯蓄や銀行の自動積立定期預金の金利は正直、期待できませんが、毎月決めた金額をコツコツ積立てていくことにより、着実にお金を貯めることができます。ちなみに、子どもが生まれたときから毎月15,000円を積み立てることができると、18歳の時点で約300万円貯まります。
コツコツ貯蓄するのも大切ですが、多くの教育費を準備できるに越したことはありません。効率的にお金を増やすためには、投資信託を活用するとよいでしょう。
投資信託は、投資家から集めたお金を専門家が運用してくれる金融商品です。集めた資金は国内外の株や債券などに投資されますが、具体的に何に投資するかは、投資信託ごとの方針に基づいて専門家が決めます。
個人でも株や債券などを買うことはできます。しかし、買ったものが値下がりしてしまうと、大きく損をする可能性があります。その点、ほとんどの投資信託は、数十から数百種類の資産を組み入れていますから、どれか1つが値下がりしても、ほかの資産の値上がりがカバーし、結果として利益を生み出してくれる可能性があるのです。この考え方を分散投資といいます。
投資信託を活用するなら「つみたてNISA」がオススメです。つみたてNISA(積立NISA)とは、2018年1月からスタートした積立投資専用の「NISA(少額投資非課税制度)」です。つみたてNISAでは、毎年の非課税の上限金額は40万円で、年間40万円までの投資で得られた利益に対し、最長20年間非課税になります。
また、つみたてNISAで買える金融商品は、基本的に金融庁が定めた一定の基準を満たした投資信託です。明らかに初心者に不向きなものや積み立て投資に適さないものは除かれるので、投資先を選びやすくなります。
尚、元本割れのリスクもありますので、教育費を準備するときには、手堅く貯めつつ、投資信託で積極的に増やすという具合に、バランスよく準備していくことが大切です。
- ※ 本ページは2021年12月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
お申込みに際しては、以下の留意点を必ずご確認ください。