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65歳、70歳と、長く働く時代が見えている一方で、より早く退職をめざす「FIRE(経済的自立・早期リタイア)」の考え方が話題になっています。物価上昇や老後資金への不安、NISA制度の拡充などを背景に資産運用への関心が高まるなか、FIREは大きな注目を集めています。
今回は、FIREがめざす経済的自立や、FIREを実現するための資産形成の考え方について、紹介します。
FIREは「Financial Independence, Retire Early」を略した言葉です。「経済的自立と早期リタイア」という意味があります。
FIREがめざす「経済的自立」は、一生暮らすのに困らないような大金持ちになることではなく、資産運用をすることで得られる収入(不労所得)によって生活費をまかなうことです。具体的には、以下の手順で考えます。
FIRE実現のために、必要な資産総額を逆算します。そして、できるだけ支出を減らし、お金をなるべく資産運用に回します。そこから得られる収入で早期リタイアをめざすというわけです。
FIREと早期リタイアは考え方に違いがあります。
早期リタイアは、定年を待たずに仕事を辞めて自由な時間を楽しむライフスタイルをさします。一方、FIREは資産運用による収入で生活費をまかなえる状態をつくり、そのうえで早期リタイアを実現する考え方です。
つまり、早期リタイアが「早く仕事を辞めること」に重点を置くのに対し、FIREは「経済的自立を達成すること」が前提となります。
十分な資産や資産収入がないまま早期リタイアすると、退職後に資金不足に陥るリスクがあります。しかしFIREでは、生活費を支えられる資産を築いてからリタイアするため、長期的に安定した暮らしをめざせる点が特徴です。
また、FIREは必ずしも完全に働かなくなることを意味しません。サイドFIREやバリスタFIREのように、資産収入と労働収入を組み合わせながら、自分のペースで働くスタイルもあります。そのため、FIREは単なる早期退職ではなく、「お金に縛られずに働き方や生き方を選べる状態をめざす考え方」といえるでしょう。
FIREを実現できれば、資産運用によって経済的自立を維持しつつ、働き方や生き方の自由度を高められます。一方で、多額の運用資金が必要になることから、近年では「FIRE疲れ」という言葉も聞かれるようになりました。そこでFIREのメリットとデメリット、両方を確認しておきましょう。
FIREの最大のメリットは、お金のためだけに働く必要がなくなり、自分の意思で働き方を選べるようになることです。趣味や家族との時間、自己投資など、自分が大切にしたいことに時間を使いやすくなります。
また、FIREをめざす過程で家計管理や資産形成への意識が高まり、貯蓄や投資の習慣が身につく点もメリットです。仮に早期リタイアまで至らなくても、経済的な余裕を持ちやすくなるでしょう。
FIREを実現するには多額の資産が必要になるため、長期間にわたる節約や積立投資を続ける必要があります。また、資産運用には価格変動をはじめとする各種リスクがあり、市場環境によっては想定どおりの運用成果が得られない場合もあります。
さらに近年「FIRE疲れ」という言葉も出てきました。FIREをめざすために生活費を抑えた結果、将来のために現在の楽しみを極端に我慢し続けることでストレスが蓄積し、かえって生活の満足度が低下することをさします。
また、資産額ばかりを気にしてしまったり、SNSでFIRE達成者と比較して焦りを感じたりすることで、精神的な負担につながるケースもあります。
無理のない生活を守りつつ資産形成を生活の一部に組み込みながら、自分に合ったペースでFI(経済的自立)をめざすことが重要です。
ひとくちにFIREといっても、その種類にはさまざまなものがあります。
「必要な資産額」と「働く・働かない」の違いで次のように分類できます。
「早期リタイア」と聞いて最もイメージしやすいのがフルFIREでしょう。フルFIREは完全リタイアした後も標準的な生活を実現するFIREです。なお、フルFIREという言葉は、次に紹介するファットFIREと同じ意味で使われる場合もあります。
ファットFIREは完全リタイアで高水準の生活を実現するFIREです。ファット(太った)という言葉のとおり、必要な資産額も多くなります。達成するための難易度も高く、実現できる方は限られますが、悠々自適な生活を送ることができるでしょう。
プチFIREは、定年より少し早めに退職することをめざすFIREです。たとえば60歳定年であれば50代のうちに退職するイメージです。年金をもらいはじめるまでのあと数年〜10年程度の資金を用意すればいいので、比較的達成しやすいでしょう。早く退職することで、老後の時間を長く取ることができます。
リーンFIREは完全リタイアをするものの、節約しながら生活するFIREです。リーンは「細い」「痩せた」という意味です。毎月の生活費が少なければ、FIRE実現に必要な金額もその分少なくて済みます。質素な生活を好む方に向いているFIREです。
サイドFIREは副業やアルバイトと不労所得を組み合わせるFIREです。FIREに必要な収入は、すべてを資産運用(不労所得)で用意する必要はありません。副業をしたり、業務委託で仕事を請け負ったりして生活費の一部を用意できれば、資産運用で用意すべき資産額を減らせるため、FIRE達成のハードルは下がります。完全リタイアではなく、好きな仕事で働いていたいという方にも向いています。
バリスタFIREはパートタイム程度の労働と資産運用を組み合わせるFIREです。カフェで働く方を指すバリスタの語が示すとおり、バリスタFIREでは、パート・アルバイトなどで働くことで生活費の一部を確保しつつ、残りを資産運用でまかなうことを考えます。生活費の半分を副業収入で賄うサイドFIREと近く、サイドFIREの中にパートタイマーという働き方を選んだバリスタFIREがあります。
コーストFIREは、あらかじめ老後資金を貯めておいて、残りの生活費を稼ぐFIREです。老後資金としてまとまったお金を用意しておけば、資産運用によってそのお金を少しずつ増やすことができます。目標の金額に達するまでは、日々の生活費を自分のペースで働いて稼ぎます。
FIREを実現するためには資産を減らさないことが必要です。その考え方に「4%ルール」というものがあります。4%ルールは「生活費を投資元本の4%以内に抑えられれば、資産が目減りすることなく暮らしていける」というルールで、米国の大学の論文を根拠にしています。
言い換えると、FIREするために必要な資産は「投資元本(100%)÷年間支出(4%)」ですから、年間支出の25倍の資産を用意すれば、FIREが実現できるというわけです。
たとえば、年間支出が300万円(月25万円)だとすれば、FIREに必要な資産は300万円×25倍=7,500万円です。この7,500万円をそのまま取り崩してしまえば、25年で底がついてしまいます。しかし、7,500万円を運用に回し、年4%の不労所得を得ることができれば、7,500万円×4%=300万円ですから、年間支出の300万円をそのまま得ることができます。こうして、元本を減らすことなく生活できるというわけです。
<FIRE実現に必要な資産>
年間支出:300万円(月25万円)
不労所得:年4%と想定
→ 運用資産:年300万×25倍=7,500万円
サイドFIREなど、FIRE後も働き続けるセミリタイアの場合でも考え方は同様です。働くことで毎月15万円の勤労収入が得られるのであれば、年間支出300万円のうち180万円は勤労収入で補えます。
言い換えれば、資産運用で用意する必要のある資産額は120万円×25倍=3,000万円となります。3,000万円を運用に回して年4%の不労所得が得られれば、毎年3,000万円×4%=120万円です。よって、勤労収入+不労所得=300万円にできます。
<サイドFIRE実現に必要な資産>
年間支出:300万円(月25万円)
勤労収入:月15万円
不労所得:年4%と想定
→ 運用資産:年120万円×25倍=3,000万円
最も、4%ルールの「4%」はあくまで米国の株式市場の過去データをもとにしたものであり、将来時点において必ずしも4%で運用が続けられるという保証はありません。
また、日本で実践する場合においても同様です。
投資資産は価格変動することにも注意が必要です。もし、年4%の運用ができなければ、不労所得が減ってしまいます。この場合は、支出を削るか、働くなどして他の収入で補う必要が出てきます。それができない場合は、資産を取り崩すことになります。
かつての億万長者の早期リタイアよりも少ない資産で早期リタイアをめざすFIREですが、FIREするにもそれなりの資産が必要です。その資産を用意するときにぜひ活用したいのが「複利効果」です。
複利効果は、運用益を積立金に組入れることで、その利益が次の利益を生み出し、雪だるま式に増えていく効果のことです。アインシュタインが「人類最大の発明」と呼んだといわれる、お金を増やすには大切な効果です。
たとえば、毎月3万円ずつ20年間お金を貯めると、資産総額は720万円です。しかし、毎月3万円で積立投資を行い、年利4%で増やすことができれば、資産総額は約1,100万円になる計算です。複利効果の有無で、約380万円もの差がつくのです。
つみたて投資におすすめなのが、「投資信託」です。
投資信託は、投資家から集めた資金を1つにまとめて、運用のプロ(ファンドマネージャー)がさまざまな商品に投資する商品です。1本の投資信託には数十〜数百以上の銘柄が組み入れられていることが多く、特定の銘柄が値下がりしても、ほかの銘柄の値上がりによって損失を補える可能性があります。このように複数の銘柄を組み入れることでリスクを抑える仕組みを「分散投資」といい、投資信託では分散投資によるリスクヘッジの効果を期待できます。
さらに、「NISA」を利用すれば効率よく資産を増やすことができます。NISAは投資で得られた利益にかかる税金を非課税にできる制度です。投資の利益には、本来20.315%の税金がかかるのですが、NISAを使えばそれがゼロにできるというわけです。ただし、NISAには年間の投資枠や非課税保有限度額、対象となる金融商品などの条件が定められています。
NISAでは、積立投資専用の「つみたて投資枠」と、積立投資だけでなく一括投資もできる「成長投資枠」の2つの投資枠を使って、生涯にわたって非課税の投資ができます。このうち、つみたて投資枠で購入できる投資信託は、いずれも金融庁の基準を満たした、長期の資産形成に向いているとされる商品です。
イオン銀行ではマネックス証券の金融商品仲介をしているため、マネックス証券が取扱う投資信託の一部をつみたて投資枠で購入できます。NISAの成長投資枠では、さらにさまざまな種類の投資信託を購入したり、個別株の取引をしたりすることもできます。これから投資をするのであれば、まずはNISAの非課税の恩恵を生かして、お金を増やしていくのがいいでしょう。
FIREするために必要な資産をなるべく短期間で貯めようとすると、生活を切り詰めて毎月の投資額を大きく増やしたり、利回りの高い投資をしたりする必要があります。ただし、高い利回りが期待できる投資ほどリスクも高くなります。資産が大きく増える可能性がある一方で、大きく減る可能性もあるためです。
筆者は、今の生活や時間を無理に捨ててまでFIREをすべきだとは思いません。自分の価値を高めるという観点で考えると、20代・30代・40代といった、若いうちにしかできないことをおろそかにしてはいけないという考え方からです。たとえば、自己投資・健康増進・人脈形成といったことは、若いうちから長期間にわたって取り組むことで複利効果を発揮し、成長につながっていきます。
将来、お金で困らないようにするために、FIREの「FI」(経済的自立)をめざしてお金を増やすことは大切です。しかし、「RE」(早期リタイア)は急ぐことはないというのが筆者の考えです。FIを目指して投資をしつつ、FIRE前から生活や時間を大切にして、やりたいことや挑戦したいことに「今から」取り組んでいくのがいいのではと考えます。
お申込みに際しては、以下のご留意点を必ずご確認ください。
\まずはNISAの活用から/
頼藤 太希
経済評論家・マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に創業し現職。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」(※現在は放送終了)、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。主な著書に『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など、書籍110冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。X(@yorifujitaiki)
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