外貨建て保険とは?メリット・デメリットを解説
執筆者:西山美紀

「外貨建て保険」という言葉を聞いたことはありますか?
「保険」は知っていても、「外貨建て」という言葉がつくと、よくわからない方もいるかもしれません。
そこで今回は、「外貨建て保険」についてわかりやすく解説しながら、メリット・デメリットもお伝えします。
外貨建て保険とは?
外貨建て保険とは、払い込んだ保険料が外貨で運用される保険です。
保険料は、原則として米ドルやユーロ、豪ドル(オーストラリアドル)などの外貨で払込み、死亡保険金や満期保険金、解約返戻金などを受取る際にも外貨になります。ただし、後述のとおり、特約を付加することで日本円で払い込み、保険会社が外貨に換算して保険料として払込む場合が多くみられます。
一方で円建ての保険は、日本円で保険料を払い込み、保険金の受取りも日本円です。
外貨建て保険と円建て保険とでは、保険料を払い込む時と、運用する時、保険金を受取る時の3つのタイミングで、違いが生まれます。
その3つのタイミングと、外貨建て保険について押さえておきたいポイントを解説します。
「為替」の影響を受ける
外貨建て保険は、為替相場(円と外貨を交換する際のレート)の影響を受けます。保険料を払い込む時と、受取る時、それぞれ為替によって、日本円から外貨に換算した場合の金額、反対に外貨から日本円に換算した金額が変わるのです。
例えば、払い込む保険料が月100ドルだったとします。払込時の為替が1ドル100円なら1万円、1ドル90円なら9000円、1ドル130円なら1万3000円の支払いになります。
また、受取る保険金が1万ドルとすると、1ドル100円なら100万円、1ドル90円なら90万円、1ドル130円なら130万円の受取りになります(税金等を考慮しない場合)。
つまり、保険料を払い込む時と保険金を受取る時の為替によって、金額が変わります。円安であれば日本円での支払いや受取りの金額が高くなり、円高であれば日本円での支払いや受取りの金額が低くなるのです。
「利率」が異なる
保険料を払い込む時と、運用する時、保険金を受取る時の3つのタイミングのうち、保険を支払う際と保険金などを受取る際には、「為替」の影響を受けることをお伝えしましたが、途中の「運用する時」も、外貨建て保険と円建て保険は異なります。
一般的に、外貨建て保険は、円建て保険に比べて利率が高い傾向です。同じ保障内容で利率が高めなら、利率が高い商品の方がおトクといえます。高めの利率で運用することができれば、元本を増やせる可能性があります。
保険料の支払いや保険金の受取りを「円」でできる場合もある
外貨建て保険では、特約をつけることで、保険料の支払いや保険金の受取りの際に、外貨ではなく日本円を選べる場合もあります。保険金受取時には保険会社が設定した為替レートを用いて円に換算して支払うため、契約者が外貨口座を準備したり、為替取引を行ったりする手間が省けます。
ただし、為替相場によっては、円での金額が変動するため、為替リスクがあることを理解しておきましょう。
外貨建ての「税金」をチェック
一般的に、保険金や解約返戻金を受取った際には税金がかかります。それは、円建て保険でも外貨建て保険でも同様です。その際に、払い込み時と受取り時が外貨の場合は、すべて円に換算した金額で計算される点に注意が必要です。
さらに、外貨建て保険も、円建て保険と同じように、保険の種類によっては「生命保険料控除」の対象となります。生命保険料控除とは、1年間に支払った生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料に応じて、一定の金額が所得から差し引かれる制度です。
申告をすることで、支払うべき所得税や住民税の金額が軽減されます。
外貨で保険料を払い込んでいる場合でも、円に換算して計算されます。保険会社からは、円に換算して計算された「控除証明書」が届くのが一般的です。それをもとに勤務先での年末調整または確定申告を行いましょう。
外貨建て保険は「保障」と「資産運用」の2つの機能
以上をまとめると、外貨建て保険は、「保障」と「資産運用」の2つの機能がある保険商品といえるでしょう。
保険に加入することで、資産として保有している通貨を日本円以外にも分散することになるため、資産分散をしながら資産形成にも役立てることができます。
一方で、利率が変わったり、為替が変動するリスクもあります。保険料の払い込み時の為替と保険金受取時の為替によっては、為替差益が出て大きく資産を増やせる可能性もあれば、為替差損が生じて支払った保険料よりも受取額が下回ってしまう可能性もあります。
外貨建て保険のメリット・デメリット
改めて、外貨建て保険のメリット・デメリットをしっかり理解しておきましょう。
外貨建て保険のメリット
- 円建て保険より利率が高め
外貨建て保険では、米国債や豪国債などで運用することになり、現在においては日本国債に比べると利回りが高めです。そのため、予定利率が高めになり、資産を増やすことが期待できます。 - 為替差益が期待できる
外貨建て保険では、保険料を支払う際と保険金を受取る際のタイミングがあり、保険料を支払った時と比べて、保険金を受取るときが円安になっていれば、為替差益を得られる可能性があります。 - 資産の通貨を分散できる
さらに、外貨建て保険を通じて外貨の資産を保有することになり、リスクの分散に繋がります。保険としての保障を得ながら、通貨分散の効果も期待できるのです。
外貨建て保険のデメリット
- 為替差損が生じる場合がある
為替差益が期待できるというメリットをお伝えした一方で、為替の動きにより、保険料を支支払ったときから、保険金を受取るときに円高になっていれば、為替差損が生じる可能性があります。為替の動きは予想できないため、契約時には為替差損が生じるリスクを念頭におくことが大切です。 - 金利変動リスクがある
日本円に比べると、外貨は利率が高めというメリットをお伝えした一方で、金利は固定されていないため、変動するリスクがあります。運用中に金利が下がった場合は、日本円よりも利回りが低めになる可能性もあります。金利の動きも確実に予想できないため、金利変動リスクがあることを理解しておく必要があります。 - 為替手数料がかかる
外貨建て保険は、保険料を払い込む際に、日本円から米ドルやユーロ、豪ドルなどの外貨に交換する必要があります。その際に、為替手数料がかかります。
為替手数料は、払い込む保険料と、別途必要になるわけではなく、事前に為替レートにあわせて払い込み保険料に含まれています。手数料は保険会社によって異なりますが、保険料を払い込む際に、為替手数料が差し引かれていることは留意しておきましょう。 - その他の手数料もかかる
外貨建て保険に限らずですが、一般的に保険はその他の手数料もかかります。保険としての契約維持にかかる費用に保険料の一部があてられるほか、契約してから短期間で解約する場合は「解約控除」という手数料が差し引かれます。契約年齢や保険料払い込み期間などによって金額は変わるため、中途解約をする場合は事前に保険会社に確認することをおすすめします。
- ※上記の他、保険での資産形成は、解約控除や市場環境の変化などの影響を受ける場合があります。
外貨建て保険の種類
外貨建て保険の主な種類を3つ紹介します。
外貨建て終身保険
外貨で保険料を払い込み、運用する終身保険です。万一、死亡または高度障害状態になった場合に保険金が支払われ、保障は一生涯続きます。
米ドルや豪ドルなどの外貨で保険料を支払い、積み立てることで、日本円の保険よりも利回りが期待できる場合があります。
一定期間を経過すると、中途解約時に受取れる解約返戻金が、払い込んだ保険料総額を上回る場合もあります。また、円安が進んだ場合は為替差益が出る可能性があるため死亡保障と資産形成の両方の機能を持つ商品といえます。
ただし、為替リスクが常にあり、円高が進むと受取額が減る可能性があります。また、解約するタイミングによっては、元本割れ(払い込み保険料を下回る)リスクがある点には注意が必要です。
外貨建て個人年金保険
外貨で保険料を払い込み、運用する個人年金保険です。老後の生活資金を準備する手段として利用されることが多く、日本円の個人年金保険に比べると利回りが期待できる場合があります。また、要件を満たすことで、個人年金控除の対象となり、所得税や住民税の軽減を受けられる場合があるのもメリットです。
受取る際には、外貨のまま受取るか、日本円に換えて受取るかを選択できる場合があります。為替相場を見ながら、受取り時期を調整することもできます。
ただし、為替リスクがあるため、契約時よりも円高が進むと受取額が減る可能性があります。
老後資金の準備に向けて、資産の通貨分散という面でも効果的ですが、為替リスクがある点には注意が必要です。
外貨建て養老保険
外貨で保険料を払い込み、運用する養老保険です。養老保険とは、死亡保障と貯蓄の機能を兼ね備えた保険です。
一定の保険期間中に被保険者が死亡した場合は死亡保険金が支払われ、満期を迎えた場合は満期保険が支払われます。そのため、養老保険は「生死混合保険」と呼ばれることもあります。
保険商品によっては、契約期間中に解約して解約返戻金を受取れる場合もありますが、払込保険料総額を下回るのが一般的です。そのため、満期まで解約せずに継続できるかを、契約時に確認しておくことが必要です。
生存して満期を迎えた場合に、死亡保険金と同額の満期保険を受取れるのが一般的なため、外貨建て終身保険と比べると、保険料は高めです。
外貨建て保険は商品の特性をきちんと理解したうえで活用しよう
今回は外貨建て保険について、特徴からメリット・デメリット、種類についてお伝えしました。
外貨建て保険は、死亡保障や老後資金の準備といった機能に加えて、資産運用の側面も持つ商品です。円建て保険に比べて利回りが高い可能性があり、為替差益も得られる可能性がある一方で、金利や為替の変動により、元本割れや受取額の目減りといったリスクもあります。
商品の仕組みを理解したうえで、ご自分の資産状況やライフプランにあわせて、上手に活用できるとよいでしょう。
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- ※本ページは2025年9月時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。また、今後予告なしに変更されることがあります。
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